俺が受けたいやがらせ
本当に申し訳ないのですが、皆さまに伝えそこなったことがあります。
実は生徒会長にはいくつか特権がありまして、その中でも最も大きいのはその後の人生が大きく左右されるというものなのです。比喩じゃないです。友達が出沢山出来るとかそういう話ではなく、大学や就職の話です。
実はこれを書いている私は、大学の入試というもので名前と履歴書以外何も書いていないのです。名前を言えば多くの人が分かるような学校でありながら、筆記試験を受ける必要などありませんでした。試験で行った面接も形だけで、本来45分の予定が自分はたった5分だけ。それだけではありません。大学卒業後の入社の面接でも、学校名と請け負った役職名を話せば必ず選考を突破してしまう。生徒会長という名前にはそれだけの力がありますので、自分以外にもその席を狙う人がいたのです。仮にC娘と呼称しましょう。俺は結果としてC娘を選挙で打ち負かすことになります。彼女は一年生から生徒会に所属し、いわゆるこの特権を手に入れたいがために、ボランティアに参加し、自分の時間を割いてまで努力して先生に媚びを売り、努力されていたのでした。
それを叩き潰したのですから、悪いですがすかっとしました。ええ。彼女も相当に気の強い悪でして、一人五枚までと決められた選挙ポスターを十倍の五十枚すり、お菓子と一緒に自分の名前の書かれた紙を生徒に配る始末。まったく腹が立ったのは、それらの紙を彼女は職員室で印刷していたのです!!!
大半の先生からしたら、自分のような残念なヲタクが学校で生徒が勝ちいる地位のトップに座ることを何としても阻止したかったのでしょう。先生方の9割9分は彼女についていました。
当たり前です。自分のうちにいきなりエイリアンがやってきて『リーダーやるからよろしく』と言われても困ります。またそれは、生徒会を受け持つ先生も同じことで、こんな嫌がらせを受けました。
「悪いんだけどさ、君は選挙から降りてくれないかな」
俺は顔が引きつるのを感じた。もう自分でポスターも書いている。残念なことに自宅にはコピー機がございませんでしたから、下手な字で一生懸命手書きで書いたそれを職員室に提出しようとした時のことです。
「もう一人の候補者(C娘)は、一年生から準備を進めて選挙を行います。君は二年生。いきなりやってきて生徒会の仕事をやれると思いますか?」
むかつきました。ええもちろんです。この腕に力があったならその婆の鼻っ面を強かに張り倒してやろうかと思いましたとも。もちろん選挙を受ける資格の中に『生徒会に所属のこと』という文面はありません。同調圧力というものでしょう。周りにいる先生方も冷たい目で俺を見てきます。
その時です。助け舟を出してくれる人がいました。そう、あの物理の先生です。まだ私は学生でしたから、かわいそうだとすぐに飛んできてくれました。
「選挙を受けさせるべきだ。こいつはまじめでその素質がある」
はい。この通り。まさかですよ。この瞬間に私は分かったのです。先生になる大人というのが実は、我々若者と変わらないほどのくずで、自らが気に入らないものを何とかして排除しようとすることに。そして、あの自分の進学のために生徒会長を目指す女がいかにずる賢く、先生に媚び、俺を落とそうとしているのかを知ったのです。
一切の手加減をするつもりはなくなりました。できれば、泣き顔を見てやりたいと思いました。そしてそれは叶います。うれしいです。