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その6

「まさかこうなるとはねえ」

 当初、農夫という戦闘に何の役にもたたない能力を得て落胆した。

 しかし、それに専念する事で思いもがけない力を手に入れた。

「分からないもんだ」

 何が幸いなるかなんて、人の知恵ではかれるものではない。

 本人である天成にすら自分の力は分かってなかった。

 他の者もおそらくしっかりと把握は出来てなかっただろう。



(もし、あの時残っていたらどうなってたんだろ)

 時折そんな事を考える。

 勇者として召喚された。

 必要な能力を持つ者を求めて集められた。

 だとすれば、天成の能力も求められていたものだろうか?

(だとすれば)

 圧倒的な生産力。

 それによって国庫を潤す事が出来ていただろう。

 少なくとも人口を養う為の食料を提供していたかもしれない。

 そうなれば、戦況も今よりかなり好転していたのではないだろうか。

 また、そのまま成長して運命をあやつる程になっていたら、どれほど寄与したか分からない。

 だが、

「まあ、無いな……」

 すぐに否定する。

 自分が国に協力する可能性は無いだろうと。

 この国に恨みがあるわけではない。

 ただ、天成が協力したくないのだ、一緒に来た連中に。

 嫌な思い出しかない連中である。

 そんな奴らに協力するなんて想像が出来ない。

 また、そいつらが天成に協力的な態度をとるとも思えない。

 おそらく、いや、確実に馬鹿にしてくるだろう、農夫という能力を。

 そういう状況を確信的に想像出来る。



「今の状態が一番だな」

 そういう結論になるのも当然だろう。

 邪魔者はいない。

 能力は最高潮に高まっている。

 自分を慕ってくる人たちがいる。

 虐げられ、馬鹿にされてきた今までの人生より今が一番良いと断言出来る。

「あとは、あいつらを始末するだけだな」

 一緒に召喚されてきた奴ら。

 天成の人生の汚点。

 それを始末出来れば最高だった。

 それで人生最悪だった時期が少しは報われる。

 出来るかどうかは分からないが、出来ればそうしたいところだった。

 その為にも、出来るだけの手は打っている。



「おーい、神様」

 呼びかける声。

「どうした?」

「使いが帰ってきたぞ」

「おう、分かった」

 そう言って立ち上がる。

 そのまま使者がいる所に出向く。

 そこでは、かしこまってる使者と、見慣れぬ者が立っている。

 それを見て天成は、事態が自分の望む方向に動いてるのを感じ取った。

「ご苦労だったな」

 まずは使者をねぎらう。

 次に、

「あなたがそうなのかな?」

 見慣れない者に声をかける。

 そのものは頷くと口上を述べる。

「その通りです。

 魔王陛下の使いとしてまかりこしました」

 その言葉に天成は心からの安堵をおぼえた。

「ありがたい事です」

 これでやりたい事が出来る。

 目的達成に一歩近づける。

「では、詳しい話は中で」

 そう促して使者を応接間に通す。



 その後。

 国と魔王との戦いが沈静化してる頃。

 天成の領地から急速に食料などが魔王側に流れ込み始めた。

 それにより魔王領域は安定。

 国力の回復に弾みがつく事になる。

 それが後の情勢に大きく影響を与えるのは言うまでもない。

 結果として、勇者を召喚した国は大きな苦戦を強いられていく事になる。

 苦戦は劣勢となり、劣勢は敗走と衰退に続く。

 それはやがて滅亡に至る事になる。

 だが、それはまだしばらく先の事。

 今はまだその気配がうっすらと発生し始めただけ。

 まだまだ明確な形にもなっていない。

 それでも運命の流れは一つの方向に向かおうとしていた。

日常的な職業で世界最強というよくあるネタでした。

頭に浮かんできたので、とりあえず書いてみた。

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