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その4

「この土地は国のものである。

 税を納めろ」

 要約すればそんな事を言ってきた。

 その税率が馬鹿馬鹿しいほど高いので、

「ふざけんな!」

と天成は一喝した。

 戦争になる事も覚悟である。

 当然ながら役人は激怒した。

 だが、その場で天成を手討ちにする事はさすがに控えた。

 警護として連れてきた兵は数人。

 対して天成の方には数百人の民がついている。

 そのうち十数人は武装している。

 腕前は分からないが、数の上では不利だった。

 やむなくその場は退散。

 後日、あらためて兵を連れてくるつもりでいた。



「だろうから、こっちから攻め込む」

 天成の決断は早かった。

「ああいう連中は、何一つ容赦しない。

 俺たちへの恩情なんてこれっぽっちもない」

 それはかつて受けた仕打ちからの経験則だった。

「だから徹底的に潰す」

 やられる前にやる。

 基本中の基本だった。



 かくて天成は、武士団頭領として警護武士を率いて出陣。

 役所を襲撃し、代官以下全ての役人・兵士・その他を根絶やしにした。

 一人でも生かしておけば、そこから情報が漏れる。

 また、相手に戦力を返す事にもなる。

 それは絶対に避けねばならなかった。



 そのついでに、周辺の町や村に出向き宣伝もしていく。

 天成の領地では農地も場所も余ってる。

 その気があるならこっちに来いと。

 重税に苦しんでる者達は即座に応じた。

 おかげでその周辺では数千人の人間が一挙に消える事となる。



 そんなこんなで更なる人口増加を果たした天成。

 もりもりと増える農耕地が更なる経験値を呼び集めていった。

 それが更に上位の技能系統に至る事になる。

『農神』

『土地神』

『守護武神』

『工芸神』

 人を越えてる事に驚くばかりである。



 更なる農地拡大。

 そして、農業技術の改善。

 これらにより、天成の農場の収穫はうなぎ登りにあがった。

 更に土地神の能力により、土地の豊かさも上昇している。

 おかげで通常の数倍以上の収穫を見込めるようになっていた。



 それ以外にも農機具を始めとした様々な工具を開発。

 そのおかげで作業効率も上昇。

 なにせ、田畑を耕してるのはトラクターである。

 他にも様々な機械が動いている。

 それらによって天成の領域は、この世界の者の想像を越える発展をしていった。



 そんな土地なので、国も魔王も狙ってくる。

 侵攻してくる軍勢はどちらも多い。

 しかし、それらを撃退するだけの力を天成は手に入れていた。

 まず、近づいても守護武神の力と、それに従う武士団が蹴散らす。

 また、土地神による守護能力で、国も怪物も容易に土地に侵入できなくなっている。

 害獣などは言うに及ばず、天成とその領域に害意を持つ者全てが排除される。

 無理をすれば内部に突入する事も出来るが、その際には大きな代償を支払う事になる。

 そこまで無理をする者はまずいなかった。



 様々な理由で天成の領地は欲しい。

 しかし、無理をするのもためらわれる。

 両者の思いはこの部分だけ一致をしていた。

 そこまでする余裕が国にも魔王にも無かったのだ。

 どちらも本来の敵を倒す事が大事で、天成を相手にしてる場合では無い。

 どれほど豊かであろうと、天成の領域は世界から見れば小さい。

 確かに収穫力などは魅力的だが、無理して制圧する程でも無い。



 特に国の方には、転移で手に入った者達がいる。

 その才能によってもたらされた繁栄は大きい。

 天成の作り出したものも手に入れられれば良いが、それが出来なくても問題がないほどに。

 なので、襲いかかる魔王を退ける事を基本としていた。

 天成のことなど、その後で十分というのが国の認識だった。



 だが、ここで認識の違いが出てくる。

 国にしろ魔王にしろ、天成の事など後回しで良いと考えていた。

 しかしそれは彼らの考えである。

 もう一方の当事者である天成の考えではない。

 しかし、両者ともに巨大な力を持ってると思ってる。

 だからこそ、より小さい者の事など考える必要もないと思っていた。

 相手の意思や意図など考えないようになっていた。

 そもそもとして、相手に考えがあるとは思いもしなくなっていた。

 無意識のうちに。



 両者に襲われてる天成としてはたまったものではない。

 折角一人で適当に気楽に生活してるのだ。

 それを邪魔されておもしろいわけがない。

 とりあえず撃退は出来たが、今後も続くとたまらない。

 そして、その可能性は残念ながら高いと考えるしかない。

 両者のこれまでの行動や言動からそうなるのは明らかだった。

「なら、やるしかない」

 配下の者達に向かって考えを伝えていく。

「自分に他が従うのが当たり前と思ってる連中だ。

 いずれまたやってくるだろう。

 なら、そうなる前に潰しておく。

 こっちにちょっかいを出せないように」

 そう言って天成は、進撃を宣言した。



 といっても大軍を動員するわけではない。

 それどころか、数人のお供だけを伴って外に出る。

 本当はそのお供すら必要がないのだが、どうしてもと配下の者がきかないので同行を許した。

 それも心配のあらわれだろう。

 天成の強さは彼ら自身が知ってるのだが、それでも万が一に備えてついてきてくれる。

 ありがたい事だった。



 そんなお供をつれて巡る先で、天成は上昇させた技能で発動出来る技を使っていく。

 生産系の農夫系統がもつ、戦闘系の技。

 大軍を一気に発生させる最終手段。

 農民を戦いにかりたてる集団戦特技、

『一揆』

 その上位技である、

『反乱』

 更にその上を行く、大規模展開技である、

『革命』

 これらの発動により、村が、町が、都市が行動を開始していく。

 そこにいる一般人達が、包丁や金槌のような日用品を持って戦いにおもむいていく。

 数千数万どころではない。

 数十万、更には百万を突破しようという人数が一斉に立ち上がっていく。

 その軍勢におされて、国も魔王も一時戦争を控え、国内の鎮圧に乗り出さねばならなくなった。



 この技によって、一時に大量の兵員を調達する事が出来る。

 だが、それは諸刃の剣でもある。

 確かに一時的に大量の兵員を動員できる。

 しかしそれは、武器もろくにもたない、訓練も受けてない烏合の衆である。

 数はいても戦力としては今ひとつである。

 もっとも、多少の質の差など押し流す程の数があるので、戦闘そのものは勝利に終わる可能性が高い。

 問題はなのはその後だ。



 動かすのは一般人である。

 農民であり職人であり商人である。

 いわゆる労働者である。

 それらが一斉に立ち上がり戦うのだ。

 当然ながら、様々な仕事が動きを止める。

 生産活動の全てが止まる。



 また、立ち上がった者達が死ねば、その分だけその後の生産活動が低下する。

 身動きが出来ないほどの重傷でも同じ結果が出る。

 このため、これらを用いて敵と戦うのは、自らも傷つける事になる。

 それでも国が滅亡するよりは良い。

 侵略者に全てを壊滅させられるくらいならば、衰退しても国が残る方がマシではある。



 それを天成は迷うことなく使った。

 敵地で。

 敵の民衆を使って。

 天成からすれば損害は全くない。

 どちらが勝っても天成の敵は著しく弱体化する。

 使わない手は無かった。



 これにより天成は、敵の侵攻意欲を大幅に削る事に成功する。

 やろうにも国力が低下しているので、その回復につとめねばならない。

 即座に動くだけの余裕は無い。

 皮肉な事に、このおかげで国も魔王も、対外的な戦争を停止する事になった。

 どちらも失ったものを回復させるのに数十年ほどの時間が必要になる。

 その間はかつてのように軍勢を繰り出す事は出来ない。

 嫌でも停戦・休戦するしかなかった。

 そういった条約が結ばれたわけではない、自然とそうなっただけではある。

 しかし、それはどんな取り決めよりも長く強固に守られる事になる。

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