40.
麻弓は今までの話を頭の中で整理した。
吸血族の学校が、麻弓が通っている学校の下に存在する。
しかも、昼夜が逆で、引力まで逆。
つまり、床を挟んで互いが逆向きに立っている形なのだ。
そこに、自分と同じ顔で同じ名前の人物がいる。
何とも不思議な世界を目の当たりにした麻弓は、体が小刻みに震えた。
麻弓とカナミの会話は、さすがにネタが尽きた。
少し沈黙が続いた後、ようやく廊下を歩く複数の足音が聞こえてきた。
新見スズが佐藤校長に連れられてくるに違いない。
あちらの世界の彼女と同じ顔なのかどうなのか。麻弓の緊張が一気に高まる。
そんな中、引き戸が一気に開かれた。そこに現れたのは、佐藤校長と、もう一人の自分――麻弓だった。予想外の出来事に、麻弓は目を丸くした。
「新見スズがいない」
振り返ったカナミは、校長の言葉に舌打ちをした。
「逃げたわね」
「同級生の話では、登校したがすぐに教室からいなくなったらしい。空から麻弓君にも探してもらったが、校庭には見当たらないらしい」
麻弓君とは、もちろん校長の隣に立っている麻弓のことだが、彼女は「そうなんです」と言葉を添えた。
「今、先生方が手分けして探しているが――」
「カナミ先生。可能性として、あちらの世界へ逃げたとか?」
「そうなると、厄介ね」
カナミが口をへの字にしたとき、また廊下から複数の足音が近づいてきた。




