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39.
それまで笑っていたカナミが、急に眉を吊り上げた。
「どこほっつき歩いているのかしら、あの校長」
確かに校長がなかなか戻ってこない。仕方なく、カナミはこの学校に通う生徒と教師の種族について語り始めた。
ここは、吸血族と呼ばれる種族が通う学校。生徒はもちろん、カナミも佐藤校長も、この学校の教師たちは全員が吸血族。
吸血族とは、羽を持っていて空を飛び、身体能力が人間よりも遥かに高く、動物の血を儀式の中で飲むことはあるが、それ以外は普通の人間と同じ生活をしている。
この世界には、彼ら以外に、麻弓と同じ普通の人間がいるが、種族間の争いはなく、共存しているのだという。
「――ということで、あなたの話は迷信みたいなもの。吸血族のみんなが気分を害するから、絶対にその吸血鬼の話を持ち出さないことね」
「わかりました」
「結構、気が荒い人たちが多いから、それこそ――」
カナミは、麻弓の目の前に移動して睨み付け、凄みを利かせた声で告げる。
「何されるか、わからないわよ」




