3.
麻弓は、路上での騒ぎっぷりを見ての通り、元気一杯で笑い上戸。快活な性格のおかげで、クラスの人気者でもある。いや、身長と特徴的な声のおかげでほとんどマスコット的存在だ。
今は彼女が会話の中心に移ったらしく、前後に左右に斜めにと忙しく顔を向けて周囲の一人一人に話題を振り、返しにツッコミをして笑い、また足をばたつかせる。
そんなクラスのアイドルにも、人には絶対に言えない秘密がある。
――それは、自分が魔法使いであること。
このことは、親類はおろか、同居している父親、母親、姉にも言えない極秘事項。
なぜ彼女が魔法使いになったのかは、後々話そう。
しばらくして、七人が笑い疲れて小休止に入ると、ちょうど学校の校門が見えてきた。
すると、先頭を歩く背の高いメガネっ娘が「ところで」と言いながら体ごと振り返り、紅縁の眼鏡の位置を右手の中指で修正した。
「みんな、知ってる?」
続く彼女の言葉の前に「「なになに!?」」と合いの手のように言葉がかかる。
「――うちらの図書室の怪談話」
ここで誰かが冗談を言ったり面白い話をしてはドッと笑うパターンが崩れ、先頭の彼女を見つめる六人は言葉を返さずにキョトンとした顔をする。
誰も知らない様子なので優越感に口端を上げた彼女は、後ろ歩きしながら切り出した。
「出るんだって、幽霊が」