24.
その時だった。
ジッと外を見ていた女生徒が、急に窓をガラガラと左側に動かし、全開にした。
それまでモワッと暖かい空気が教室内に溜まっていたのだが、ヒュウウウッという音を立てて風が流れ込み、女生徒の髪とカーテンを大きく揺らす。
駆け抜ける風は、黒板も教壇も廊下で女生徒を見つめる麻弓の顔をも強めに撫でた。
女生徒は右手でサッと髪を掻き上げる。絵に描いたように黒髪がなびいた。
その直後、彼女は両手を斜め上に限界まで持ち上げて背伸びをする。そして、
「うーーーん! 気持ちいいーーー!」
鈴が鳴るような声が風に乗って、麻弓の耳に飛び込む。
――次の瞬間、身の毛もよだつ出来事が起こった。
ブワッ!!
女生徒の背中から、大きな音を立てて烏玉色の羽が飛び出したのだ。
その羽は、上は彼女の頭を越え、下は教壇からはみ出ている部分を見た感じではおそらく膝まである巨大な物。
まだ羽を横一杯に広げていないので幅まではわからないが、彼女の身長くらいはあるだろう。
「ヒイッ!!!」
事態に驚愕した麻弓は、口に両手を当てていても叫び声が出てしまった。
その声にギョッとした女生徒が、素速く振り向いた。
次の瞬間、女生徒が駆け出して教壇を飛び越え、眼球が飛び出るほど目を見開いた小麦色の幼顔の侵入者に立ちはだかった。




