21.
廊下を歩いていると、窓の位置も教室の扉の位置も変わっていないことに気づく。どうやら建物の構造は同じようである。
ただし、消火栓がない。壁に貼られているお知らせのポスターや、廊下は走るな的な注意書きの張り紙もない。
建物全体の構造は変わらないが、何かが少しずつ変わっている。そんな感じだ。
また遠くから女生徒の声が聞こえてきたが、姿は見えず、廊下には誰の足音も響いていない。麻弓は、足音に気づかれないようにつま先立ちで歩いていく。
彼女は、校庭が見える窓に達した。その途端、体操着姿でランニングしている一団が窓の外に見えたので、大慌てでしゃがみ込む。
(危ない、危ない……)
外の足音が遠ざかったので窓の左下に移動し、ジリジリと頭を上げて、窓の左下角から顔の右上1/4を出して様子を窺った。
校庭では体育の授業らしく、同じ体操着姿の生徒がダラダラと準備体操をしている。
獣頭とか耳が尖ったエルフとかはいない。なぜかホッとする。それは、ついさっき、脳裏に「異世界に転移しちゃった説」がかすめたからだ。
またランニングする一団が右方向から近づいてきた。
(あっ、カナだ! 宏美もいる! ん? 髪型変えたのかな?)
知り合いが走っているのだが、今日見た彼女たちの髪型と少し変わっているのだ。
(マジで、パラレルワールド? ……じゃあ、ここはさっきまでいた世界と何がどう違う世界なの??)
頭を引っ込めた麻弓は、首を傾げて腕組みをする。しかし、結論は出ず、探索を続けることにした。




