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11.

 教頭の視線を背中に受けながら図書室を飛び出したスズと麻弓は、早歩きで教室へ向かう。


 歩幅の違いでどんどん引き離される麻弓が小走りになると、「廊下を走るな!」と教頭の叱責が飛んできた。


 状況と原因を瞬時に察したスズは振り返ることなく歩みをのろくし、歩幅を目一杯広げた麻弓が追いつく。


 スズの背中を見ながら麻弓が階段を上っていると、突然スズが立ち止まって振り返った。いきなりの停止に驚いた麻弓が見上げる。


「ごめんね、教頭に睨まれちゃって」


 図書室を出る前から気になる2つのことを抱えていた麻弓は、こちらから問いかける機会を窺っていたところなので、チャンス到来に口元がほころんだ。


「ううん、大丈夫。幽霊いなかったけど、なんかいたみたいね」


「うん。次は、そいつの尻尾をつかむ」


 そう言って拳をグッと握るスズだが、どの辺りでその証拠をつかんだのかが知りたい。コトッと音がしたときは気づいていなかったからなおさらだ。


 まず一つ目の疑問をぶつける。


「ねえ。いつ気づいたの?」


「麻弓が『音がする』と言った少し後で、背中がゾゾッとしたの」


 やはり音は聞こえていなかったようだ。背後で音がするイコール後ろに何かがいるということで警戒心を持ち、それが耳を後ろに引っ張られる錯覚を引き起こし、その後で悪寒が走ったのかも知れない。


 次に2つ目の疑問。


「あと、なんで()()使()()なの?」


「ああ、それ?」


 スズはその問いには答えず、麻弓にゆっくり背を向けて階段を上り始めた。詰問するわけには行かず、麻弓は無言でスズの背中を追い、答えを待つ。


 何を考えているのか、しばらく続く無言にスズの逡巡を感じ、その理由が恐ろしい結論になりはしないかと、麻弓はドキドキした。


 踊り場に達したスズが立ち止まった。


「私、見ちゃったんだよねぇ」


 ギクリとした麻弓は、右足を上の段に乗せて立ち止まった。

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