表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/50

10.

 根拠に乏しいスズを横目に、麻弓は辺りを見渡す。


 一人きりではないのに、この静けさはゾッとするほど怖い。隣のスズの呼吸音まで聞こえてきそうで、つい、耳をそばだててしまう。



 結局、二人だけで幽霊探しの延長戦が始まった。麻弓も、仕方なく、面白そうな本を棚から取り出した。


 しばらくしてから、本に夢中になっていた麻弓の後方で、コトッと音がした。


「ねぇ、なんか、音しなかった?」


 恐ろしくて後ろを振り向けない麻弓がスズの袖を引っ張ると、横目遣いのスズが「気のせいよ」と冷たく言葉を返す。


 幽霊を期待しているなら、むしろスズの方が気配に敏感になるはずだが、気づかなかったらしい。


 空耳と思いたい麻弓は、まだ怖いので、油の切れたロボットのようにジリジリと後ろを振り向いた。


 と、その時、


(――!)


 後方に微弱な魔力が漂っているのを感じ取り、思わず声を上げそうになった。


 魔力がある以上、そこには何らかの魔法を行使した者がいたはずである。


(ここで魔法使いが現れるとまずい! 私の正体がバレないようにしないと!)


 人影がないか、キョロキョロと見回す彼女の横で、スズが舌打ちをした。


「来たよ、教頭が。足音でわかる」


 そう言ってスッと立ち上がった彼女は、「行こう」と麻弓に声をかけた。


 後ろに集中していた麻弓は、ようやく耳に飛び込んできた足音に気づき、この場から逃れることが出来てホッとした。


 もし、魔法使いと対峙したら、スズを守るために自分の正体を明かすことになりかねないからだ。


 ドアが勢いよくガラッと開いて、スポーツ刈りの教頭が飛び込んで来た。


「コラッ! 早く帰れ!」


「すみません。本に夢中になって、つい」


 腹の底から声を出して怒る教頭の扱いに慣れているのか、即座に心にもない謝罪と弁解をするスズは、彼に背を向けて、麻弓を見ながらニッと笑った。


 さらにスズはウインクをしつつ、小声で謎の言葉を漏らす。


「いたかもね」


「えっ? (もの)()が?」


「ううん。魔法使いとか」


 その言葉の真意を一度聞いてみる必要がある。


 そう思う麻弓を試すかのように、スズは「魔法少女とか」と言ってペロッと舌を出した。


 ギョッとした麻弓は、直ぐさま笑顔で表情を上書きした。


「さすがに魔法少女はないか。でも、誰かはいた。勘だけどね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ