表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
孤高にして影の王  作者: mikaina
1章
3/72

熟練ぼっちの日常2



 一夜明け、今日は金曜日。学生にとって一週間の中で三番目くらいに好きな曜日だ。


 ちなみに一番好きなのが日曜で、一番嫌いなのは水曜日。週の真ん中、折り目ということもそうだし、水曜はアニメも少ない、面白いバラエティも少ない。水属性はクールを気取りすぎだ、もっと俗に染まれ。


  いつも通りに机につき、耳にイヤホンをはめ音楽を流す。


 聴くのはクラシック――ではなく、アニソン・ゲーソンだ。


 クラシックなんて、そんな高尚なもの俺には似合わない。知ってるのショパンとかモーツァルトぐらいだし、あとバッハ。ふむ、ぼっちとして、そういうのも聴いた方がいいのかな?


 ぼっちは意外と意識が高い。


 人の迷惑になることなんてしないし、自分を磨く努力を怠らない。自分磨きの代わりに人とのコミュニケーションを怠るのがぼっちという生き物。音楽もその一環になるやもしれない。


 今度聴いてみようかな。


 なんかの拍子に俺の聴いてる音楽が聴かれることがあった時、クラシック聴いてたらカッコいいし。「え、黒瀬くん、クラシックなんて聴いてるの? すっごい大人! カッコいいね抱いて!」こんな感じに三連コンボを決める可能性も捨てきれないしな。


 鞄から次の時限の教科書を取り出し、引き出しに入れる。そうしてから視線だけで軽くあたりを見渡した。


 前のほうで楽しそうに談笑しあっている奴らに、後ろのほうで変な動きをしているクソ野郎共。キャピキャピと鏡と睨めっこしてる女子。端でスマホをカチャカチャしとる男子。あぁ、やかましい。音楽を聴いていても隙間を縫うように聞こえてくる喧騒。


 俺はこれが嫌いだ。


 どの学校、クラスでも基本的にそうなのだが、クラスや学年にはグループというものが呪いのように付き纏う。


 このクラスで言うならば、教室の手前のほうで集まっているイケメンと美少女とコミュ強が集うパリピ臭がすごいグループ。


 そして休み時間はずっとスマホをカチャカチャしてるオタクっぽい男子のグループ。


 派手派手しいギャル臭漂う女子が集まる喧しいグループ。


 後は部活動ごとで固まっているいくつかのグループ。


 最後に、どんな関係なの君たち? ってくらい関連性が分からない不思議なグループ。とさまざまなグループがこのクラスには存在している。


 ……俺? いや俺は理から外れた選ばれし者だから。


 そんなグループなんていう小さな纏まりなんかに収まる器じゃないから。決して所属出来ていないわけではない。出来ないんじゃなくてしないだけだから。そこんところよろしく。


 実は俺以外にもう一人、この場合にはもう独り、このクラスには俺の同類、選ばれし者が存在しているのだが今はそれはいいだろう。


 このグループ達の中でぼっちに敵と認識されるのは、まず始めにパリピグループ。


 ぶっちゃけると、ぼっちにとってグループで固まっているものは大抵敵ではあるのだが、その中でも序列というものが存在する。当然、パリピグループは序列最上位だ。


 そして勘違いしないで欲しいのだが、別にパリピが嫌いというわけではない。ただ敵なだけ。そのグループで生まれる騒がしい、やかましいのを嫌っているだけなのだ。敵と嫌いは決してイコールでは結べない事を覚えておいてほしい。


 アイツらはただ単に男女でイチャイチャしてるだけ。それでみんなで仲良く楽しく過ごし青春を謳歌して……………………やっぱ嫌いだわ。大嫌いだわ。嫌いじゃないわけがない。嫉妬ではないが許せない。断じて嫉妬ではない。これだけははっきりしているがくたばってほしい。


 騒がしくなければいいのに、休み時間のたびに集まって俺の安寧と静寂の邪魔をする。そのせいで少し高めの音量調節機能のあるイヤホン買っちゃったよ。ぼっちが休み時間の喧騒を耐えるにはイヤホンが必需品だ。だから出し惜しみはしない。たとえ、そのせいで俺のお小遣いの半分が消し飛んでしまったとしても……グスンッ。


 だが残念ながら、俺にとって恐ろしいのは休み時間だけではない。


 あいつらは授業中にも喋りだす。先生の目なんてなんのその。休み時間よりは幾分かおとなしいがそれでも静かな空間に響くヒソヒソ話は、想像以上に煩いものだ。アイツらはそれに気づいていないのかも知れないが、自覚がないのが尚更タチが悪い。


 席替えを行う前、つまり今の一個前の席の時、隣の奴が席一つ分あけた奴と喋り始めたときには思わず手が出そうになってしまった。俺を挟んで会話すんじゃねーよ。なにがアイロンあとで貸してーだ。主婦か。いや主婦もアイロンの貸し借りはしねーよ。


 ヘアアイロンのことなんだろうけど、ヘアアイロンをアイロンって略すのやめろや。何でも略すのは昨今の日本人の悪い所だと思います。


 スマホとかリモコンとかね。あと独りぼっちの事をぼっちって略したりね! いやーたまには略すのもありかもしれないな。


 そんなことはどうでもいい! 授業中休ませてくれれば言葉を略してくれてもいい。家では家族が騒いでて休めないんだ。お願いします、休ませてください!


 お願いします! おなしゃす!


 おなしゃすってなんかエロい言葉みたいですねっ!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ