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孤高にして影の王  作者: mikaina
1章
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熟練ぼっちに苦手はない(大嘘)

 

「じゃあペア組んでパス練開始―!」


  やっぱり友達はいた方がいいのかもしれない。


 体育担当の教師の発言を聞いて改めてそう思った。


  やっぱね、ぼっちの自分は大好きだけど生きづらいね。毎日が試練だからね、ぼっちは。


  俺は今、制服から体操着に着替え学園のグラウンドに立っていた。理由は勿論体育の授業を受けるためだ。


  この学園の体育は二クラス合同で行われる。俺のクラス三組は四組と合同なのだが、この四組が少し問題なのだ、俺にとって。


  端的にいうと四組にはぼっちがいない。


 少なくとも男子には。ぼっちはぼっちとペアを組むというのがこの世界の常識。余り物同士でチームを組むのが理の必定なのだ。


  だが、四組の男子にはそれがいない。進級してから今までの体育はこういったペア練習が無かったから良かったのだが今日から種目替え。


「一緒にやろうぜ!」


「えぇ、お前とかよー」


「酷くね! やろうや!」


「冗談だよ、冗談。一緒にやるか」


「おうよ、じゃあ俺ボール取ってくるわ」


「えぇ、お前が取ってくるボール使うのかよ……」


「それはなんか違うだろ!」


  各々が会話をしながら自分のペアを見つけていく。


  会話から何となくわかると思うが、今日から始まるのはサッカーだ。もう殆どがペア組みを終え、パス練習を始めている。


  まずいな、貞操以上に事態は深刻だ……ちげーよ想定だよ。なんだよ貞操って。貞操ならむしろ危機が訪れてほしいわ。積極的にピンチになりにいくわ。ピンチはチャンスって言葉は貞操以外に使い所ないと思うの。


 改めまして、想定以上に事態は深刻だ。


 このままだと教師が声をかけに来てしまう。


  体育教師は基本的にノリが体育会系だ。体育の教師なんだから当たり前ではあるのだが。そんな体育教師や体育会系にはぼっち、延いては文化系の思考が理解できない。


「おう、どうした。く、く? 黒田? さっさとペア組め。組まないんだったら俺が決めるぞ。いいな。おい、お前らぁ! 誰か黒田とペアを組んでくれるやつはいないか! 一人でパス練は無理だからな!」とか言い始めるのが目に見える。体育教師に人の心はないからな。


  アイツらは人間の心を失ってしまった憐れな人間の果てみたいなものだ。俺とは一生相容れない。まだロボットの方が相入れるわ。


「んっ?」


  ジィーと誰かに見られている気がして振り向いた。


  だが振り向いた先にあるのは校舎のみ。


 その間に木が生えていたりするがそんな場所に人がいるわけもない。大方窓から体育の授業を覗いただけだろう。もしくはイケメンな俺を見に来てしまった子猫ちゃんかも。……オーイェー!


  俺はこの場を乗り切るために、教師に腹痛を訴えトイレに行くことにした。



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