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プルーストの泪  作者: 月川 望
9/10

原因。

小学校6年の卒業式の前日、僕たち家族は交通事故にあった。富士山の写真を撮りいこうと高速道路を車で走らせ、もう車内からでも富士山が見えるくらい近くのところに来た時だった。


「ズドォォンッ!!」


気付いた時にはコンクリートの地面に横たわっていった。状況が理解できない。わかるのは身体が全身、炎に焼かれたように痛く、苦しいことだ。


僕の目の前にはお母さんとお父さんが倒れていた。

「...お母さん、お父さん?」呼びかけても返事はない。2人とも頭から血が流れている。

「君!大丈夫かっ!?」救急隊員の人が声をかけてきたが僕には届かなかった。

「お母さん....お父さん..起きてよ。」身体を揺すった。コテンッと仰向けになった2人を見て、僕は泣き叫んだ。

子供ながらわかった。2人はもう助からないと。


後から聞くと玉突き事故が原因だったと言う。

2台前を走っていたトラックが居眠り運転で急ブレーキをし、その後ろを走っていた車が衝突。さらにその後ろを走っていた僕たちの車はそれを避けるためにハンドルを切ったが、その後コントロールを失いガードレールにぶつかった。


結局、この事故でトラックの運転手を除いて6人中4人が死んだ。

僕の両親。そしてトラックにぶつかった車の運転手の夫とその妻。


トラックの運転手は懲役20年の罪に問われたらしい。


僕には現実が受け止めきれなかった。

両親の命を奪われたことに。


卒業式はしっかりと出た。

叔母が出ておきなさいというものだから仕方なく出た。


噂というものは怖いものでもう学校全体に僕の両親が死んだことは伝わっていた。ニュースにもなっていたから仕方ないだろう。


[[[かわいそうに]]]


[あの子がニュースの子か][親が死んでも平気なのかよ][薄情なやつだ]

[かわいそうに] [卒業式なんて出てて大丈夫なのか]

[かわいそうに][かわいそうに][かわいそうに]

[かわいそうに]



この時、心の声を初めて聞いた。最初は何かわからなかった。気持ち悪かった。

気付いたら僕は卒業式を抜け出した。

走った。ひたすら走った。どこか遠いところに行きたかった。

どこか遠いところに...





「と....」


「とっ....」


「とっしーってば!着いたよ!」

「ん。ああ。降りよう」

そう僕たちは今、電車に乗って京都の撮影スポットに向かっているところだった。

「何か考え事?」凛花は心配そうに言った。

「なんでもないよ。ただ昔を思い出してただけさ」

いつか凛花に話す時が来るような気がしていた。

あの事故のこと。

そして僕の秘密を。



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