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プルーストの泪  作者: 月川 望
7/10

アウト。

「橘」でもいいのだが実は高校の時の嫌な奴に橘という男がいたため、なんだか呼びずらい。

「凛花」だと馴れ馴れしい気がするが仕方がない。凛花と呼ぼう。


凛花は大学の中でも目立つくらい容姿が整っていた。髪の毛は肩にかからないくらいのショートヘア。目は大きく鼻は綺麗な形をしていた。

まさに凛とした花であった。


そんなことを1人考えながら教室に座っていた。席は一番後ろの右隅。空いていたら容赦なく座る。

今日は1限2限とありこの3限が終わったら家に帰る。今日はサークルはないらしい。さっき北嶋さんから連絡があった。どうやら毎週何曜日活動ということではないそうだ。この自由な感じが僕にはあっているなと思ったりもした。


昨日は散々だった。

まさか凛花が同じサークルとは。

運命。だとは少しも思わない。

しかし、僕は彼女の撮る写真が率直に見たくなった。心が聞こえない彼女の世界を見たかったのだ。

そう。もちろん僕はフォトグラの部室に入った時北嶋さんと相沢さんの心はもちろん聞こえた。だが気になどしなかった。聞きたくもないことが聞こえてきたがそれは無視した。もう慣れている。今こう思ったでしょ!と突っ込んだところで仕方がないのだから。でも、残念なことだが僕は彼らの心を知って普通にはいられれない。建前だ。全ては建前。僕はそういう風にして今まで生きてきた。人の心=本音を聞いてありのままの自分は出せない。




だからそんな僕にとって凛花は特別だった。彼女の元では自分が"伊関としひろ"でいられるのだ。

しかし、それと同時に僕は怖い。凛花が。

なぜだかわからない。

怖いのだ。





チャイムがなった。開始の時刻だ。高校のように起立とかはなく、流れるように授業が始まる。




とそこで滑り込むかのように後ろのドアから凛花が入ってきた。そして僕の隣に座る。僕は驚かない。




息を整えながら彼女は

「セーフ」と呟いた。








「アウトだよ」


僕はちっちゃくそう言った。




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