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プルーストの泪  作者: 月川 望
6/10

フォトグラフ。

僕はある部屋の前に立っていた。

ここは写真サークル「フォトグラ」の部室である。


僕の唯一の趣味は写真を撮ることだった。死んだ父がカメラが好きでその影響を受けたのだろう。そう、僕の両親は僕が小学校六年生の時に交通事故で死んでいる。そのことについてはまた詳しく話す時が来るだろう。

そんな父はよく僕をいろんな場所に連れて行って写真を撮っていた。

「大きくなったら、カメラ始めろよ」

これが父の口癖だった。

言いつけを守るように高校生になり写真を撮り始めた。カメラは父の残した古い型のものだったが、僕には十分だった。

二度と流れない時間を一枚の画に残すのはとても魅力的だった。


そう、僕は入会するのだ。

「写真は1人でとっても楽しいが他の人と撮るのもいい。人によって見てる世界は違うからな」父はこうも言っていた。

だから大学では挑戦してみようと思ったのだ。人付き合いの苦手な僕からしたらこれは大きな一歩であった。


いざ。古びたドアをノックして部屋に入る。

「失礼します。一回生の伊関です。入会しに来ました」






「やっほー!とっしー!」聞き覚えのある声だった。橘凛花だ。なぜいる!?

「知り合いなの?」部屋の隅のソファから眼鏡をかけた長身の男がそう言った。


「...らしいです」

「らしいってなによ!」橘凛花はそう言った。

「まあまあ2人とも落ち着いて。僕の名前は北嶋悟(きたじまさとる)。一応部長ね。んで。そこにいるのが....」

「相沢 玲奈(あいざわれいな)。よろしくね!」とロングヘアーの彼女は言った。

「今は三回生の2人しかいないけど本当はあと二回生の子が1人。計3人で構成されてるのがフォトグラさ」と北嶋さんは言った。

「ちなみに橘さんは昨日入会したんだよね」相沢さんは続けて言った。

「そうなんだよー。まさかとっしーも入会するとはねぇ。」

「僕は君がいることの方が疑問なんだが」率直に聞いた。

「大学では新しいこと始めようと思って!」

そう言って彼女はいかにも新しいカメラを取り出した。


「とりあえず、おふたりさんこれからよろしくね!」北嶋さんはそう言い、僕と橘凛花の肩を叩いた。

「あっそうだこれから玲奈と学生部に書類出しに行かなきゃだから部室もう締めるよ!さあ今日は解散!」


そうして僕らはサークル棟を出た。相沢さんと北嶋さんは僕らに手を振り学生部の方向に歩いっていった。



「とっしーが写真ねぇ」

「いいだろ。個人の自由だ」

「ダメなんて言ってないよ。ただ意外だなって」

一連のことを話そうと思ったが、それはやめた。変な雰囲気にするのは好きじゃない。


「とにかく....これからよろしく、橘凛花。」

「フルネーム(笑)」

「じゃあなんて呼べばいいのさ」

「好きに呼んだらいいんじゃない?」

「人の名前を呼ぶのは得意じゃないんだよ」




「ほんと君は面白いね」

彼女はポツリとそう言った。









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