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プルーストの泪  作者: 月川 望
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端まり。

「大学にはいろんな人がいる」



と高校の担任には言われた。

が、実際はどうだ。目の前に広がる光景を見る限りだと、同じような服装の女。同じような髪型の男。個性なんてものがあったものじゃない。

そんな僕には個性があるかって?

愚問だな。

もちろん、ない。コセイ?カセイ?モクセイ?


僕は履修説明会というものを大学の教室に受けに来ていた。とても大きな教室で3人座れる長机が100はある。しかし、必ず出席ではないのか人が埋まる様子は微塵もなかった。


僕は教室の一番後の右端に座ることにした。変に机の真ん中に座ると知らない人に挟まれるかもしれないし、個人的に後ろに人がいると見られてるような気がして気持ちが悪い。この教室の様子だとまずそんなに人は入らないだろうけれど。







迂闊だった。


まだ開始まで時間があったからトイレを済ましておこうと荷物を置いて席を立ち、戻ってくると自分の席の隣に女のらしき人が座っていたのだ。

俄然、教室はガラガラだ。知らない人の隣に座らなければならないほど埋まってなどいない。


「ふざけるな」


僕は口に出さなくてもいいのに口に出した。そうしないとこの怒りが収まらないからだ。せっかくいい場所に陣取ったのにこれでは台無しだ。

まずなぜそこに座る?他にも席は空いているだろうに。

このまま立っていようかと考えたがそれではガラガラの教室では目立つし、なんだかあの女にしてやられたようでならないから座ることにした。

そう僕は意地っ張りなのだ。


席に座るとできるだけ何も気にしてないかのような雰囲気を演じた。

僕は空気になるのが得意だ。






「君は、寂しがり屋なのかい?」




声をかけられた。

まるで海辺の朝のような匂いの声だった。



立っていればよかった。



僕はいつも間違える。



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