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プルーストの泪  作者: 月川 望
10/10

伏見稲荷駅。

僕たちは昼間は金閣寺、下鴨神社、清水寺などをまわった。いわゆる京都の名所であるがゆえに人は多かった。特に外国人観光客があふれんばかりに居た。日本の名所にいるのにまるで海外にいるようなおかしな空間であった。

ちなみに海外の人の心は読めるかって?

もちろん読める。

しかも、丁寧に日本語だ。

彼らの多くは

[有名どころだから寄ったが特に興味はない]

という"心"であった。写真を撮り、SNSにのせることが彼らにとって日本に来た証であり自慢なのだ。

しかし、僕らは違う。

しっかりとパンフレットを読み、歴史を学び、触れる。一緒の空間にいるのにこんなにも違うのだ。


実際、凛花に金閣寺に入る時

「なんでこんなに海外の人、多いんだろうね?」

と聞かれた。

「写真を撮りたいだけなんだよ。彼らは。とって拡散して。日本に来たぞ!私が!って自慢したいんだ」

「...そんなものなのかな?」

「そんなものさ」

「ふーん」

凛花は聞いたくせに興味なさそうに返事をした。


凛花は特別だ。

僕はこんな風に話すことができるのは凛花だけなのは変わりはなかった。

耳をすませばいつだって人の心が聞こえる。

大抵、聞きたくないことだ。

なんでこんなにも腐った人間は多いのか。

なんでこんなにも適当に生きているのか。


なんでこんな死んだように生きてる人が今日を生きて、今日を死ぬほど生きたかった人が死ななければいけないのか。

僕の両親のように。

この世は不条理だ。


いつもそう思う。

だから、僕は適当に生きるヒトとは付き合えない。

僕にとってかれらは人ではない。"ヒト"なのだ。

自分のことしか考えずまるで自分がこの世界の主人公かのように世界を崩す。獰猛で肉食なヒトなのだ。


僕は彼らとは違う。

僕は....違うのだ。




それなりに写真を撮り、清水前の大通りを歩く頃には7時をまわっていた。

「もう帰ろっか」

「うん、そうしよう。あまり遅くなると君の大好きな電車がなくなってしまう」

「電車が好きなんじゃなくて、乗るのが好きなの!」彼女はそう言って笑った。

少しまだ彼女といたいな。駅に向かいながらそう思ってしまった。僕らしくない。


京阪電車に乗り10分くらいがたっただろうか。

伏見稲荷駅到着のアナウンスがなると開いたドアのすぐ横に立っていた僕を凛花は押すようにして外に出した。

「っなにするんだよ」

「伏見稲荷」彼女はポツリと言った。

「夜もやってるんだよ。付き合って」

彼女ともう少し居たいと思っていた僕からしたら断る理由もない。まるであの初めてあった日のことのようだ。

「いいよ。付き合う」


そうして僕らは伏見稲荷へと向かった。

少し凛花の顔色が変わっていることに気がついたがどうせ変なことでも考えているのだろうと気にはしなかった。


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