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目を覚ました時には、目の前には光の祭壇があった。
「あーあ。その年で過労死かぁ。最近減ってたんだけどなぁ」
と、突然の声に驚いて顔を上げると、逆光でちゃんと見えない人影があった。
老若男女ともつかない、中性的で神聖的な声だった。
「過労死って、私が?」
声も驚くべきものだったが、それ以上に内容の方が驚きだ。
「もちろん。君、毎月500時間働いて、手取りは18万円行けばいい方。忙しいを理由に食事もスニッカーズと客先で出るお茶とコーヒーで生きてたらさ、人間死んじゃうからね?」
「いや、よくある事だって。私、燃費いいし、そんなに疲れてなかったし」
「『すこし休んだら大丈夫』『ちょっと疲れただけだから、寝れば治る』って言っておきながら休んだことないよね、君?」
「いや、そんなこと……」
ないとは言い切れないかもしれない。
「うん。君に西暦2020年代の地球は不向き! 別にしよう」
「え、別って?」
「ほら、魂って作るの大変だからさ、体死んじゃっても初期化して地上に卸してるんだよ」
「へぇ、へぇ、へぇ」
「3へぇ頂きましたぁ。そんなわけで君には再建中の世界に行ってもらおう! それに今際の際に走馬燈も見れないような人生、人として失格!」
「ふぁ!? マジか!?」
「念願の異世界転生、ってやつ? 最近流行ってるんでしょ、君たち世代」
「ラノベではね。うあ、まじか」
「ずいぶん嬉しそうだね。僕は君がちょっとかわいそうになってしまいましたので、特別に特殊能力をひとつプレゼントしたげよう」
「愛してるよ、マイゴット。で、なにくれるん?」
「何が欲しい? 世界バランス崩すレベルじゃないなら何でもいいよ」
「太っ腹! じゃあ、○○○○がいい」
「え、そんな? もっとこうほら、空を飛ぶとか、カメハメハ撃つとかあるじゃん?」
「そんな派手なのはいらない。超便利だと思うけど?」
「まあたしかにべんりだけどさー。まあ君が望むならどーぞ」
さあ、これから私のオレツエー伝説の始まりだ!