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地平線が続く世界で ~俺TUEEE、にはなりませんでした!~  作者: 夜桜月霞
1……『本日は晴天なり。しかし我が航路には暗雲立ち込めております』
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16

 胸糞悪いが、私の依頼主はドルテだ。そして彼の船と積み荷を守る事が今回の仕事だ。その為に乗組員も守る。故に敵は倒す。


 遠慮は必要ない。


 それにまだ僚船がいる。完全に全員が死ぬ事はないだろう。


 私は進むべき方向へ視線を戻した。


「炎を見て集まるのは獣だけじゃない。教会の船が増えるかもしれない。警戒を厳にして!」


 これから二日間は眠れない夜が続くだろう。


 ローテーションや武装も考えないといけない。私は一人しかいない。かといって三日三晩をひとりで守り通すなんてできない。


 頭を悩ませることばかりだ。


 そんな事を考えていたら、艦橋から私を呼ぶ声が聞こえた。


「なにか?」


 大声で聞き返すと、蒼い顔をした観測手が叫んだ。


「やつら! 味方を見殺しにして、追いかけてくる!」


 私は思わず甲板から身を乗り出して、望遠鏡で後ろを確認した。


 我々を追跡する船団は、轟沈した僚船の救出活動をせずにこちらへ迫って来る。まるでそこには何もないと云わんばかりの全速力。


「外道め……」


「人じゃない」


 船夫たちは口々に吐き捨てる。


 船乗りというのは、基本的に結束力が強い。


 味方は見捨てないし、敵でも可能なら助けもする。


 まして船が沈んだ時は、任務を放棄してでも助けるという。


「どうにも、船の上で生きる者として、習わしを教えてやる必要があるようだ……」


 私は誰に言うでもなくつぶやいていた。


 気にくわない。目的のための犠牲? 殉教者? いや、助ける者を助けない。見捨てているならそれは怠惰だ。


「そうだ!」


「なにが教会だ!」


「船の掟を知らない野郎どもにビビることはねぇ!」


 船夫たちはなぜか異様なほどやる気が満ちていた。


「お、お前たち、本気なのか?」


 怯えるのはこの船のオーナーであるドルテ。彼からすればこの隙にさっさと逃げたいところだろう。だが逃げるのは得策じゃない。いくら船体が大きく丈夫なカーゴシップと言えど、軍船相手に追いかけっこをして勝てるはずがない。荷を下ろすときには止まるのだから、その時に負けてしまう。


 ゆえに、ここでどうにかしないといけない。


 こちらの手の内はある程度読まれているだろう。見られてもいるはずだ。


 だが、対策はされていないだろう。いや、できない。なぜなら魔法の対策は魔法しかないからだ。教会はどうあっても魔術の類を認めない。認めないからこそしらみつぶしにしている。


 それに、なにか対策をされた所で、私は負けない。


「この先に島があるらしい。そこで待ち伏せる」


 私の言葉に船夫たちはアイアイと景気よく返事を返してくれた。


 それに不安しかないという顔のドルテに私は小声で耳打ちした。


「ここで討たねば、荷を下ろす時に一網打尽にされます。それに士気が高い今が機会です」


「……分かった。しかし、何か秘策でも?」


「私、魔女なんですよ?」


 知ってましたか? というと、言葉に詰まるドルテ。


 原因のひとつでもあり、打開する方法でもある。


「君に任せる。だが、絶対に荷を守り切ってくれ」


「お任せください」


 私がそういうと、彼は不安をこらえきれないという顔で艦橋へ登って行った。


 とはいうものの、どうしたものか。


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