とある日の夜に
第1章 《とある夜の願い》
空を飛ぶ用の翼があればなぁ。こういう時に空飛んで帰れたらなぁ。そんな子どもくさいことを考えながら 駅から家あたりまで続く細い道を一人で歩いていた。自分の他に道を歩いている人はいないようだ。そこで俺は叫んだ。
「純白の綺麗なー、空を飛べる翼が欲しいよ〜!」
当然ながら叫んだところで何かが起こるわけでもない。そう思いため息を吐くと、頭の中に急に知らない声がまるでテレパシーのように入ってきた。
「−−たわ、−の願いを叶えてあげよう。ネバーホープカナワンダー!」
「誰だ誰だ?ドラえもんか?ーにしては声が高いから妹のドラミちゃんか、いや、自称ドラえもん検定2級を持する俺でも分かる。これはドラミちゃんの声でもない。てことは、かの有名なドラゴンボールのマスコット的キャラクターの神龍さまか?」
「何をボソボソ言ってるのかわからないけど、青ダヌキでもその妹でもシェンロンでもないわよ。私の名前はシェンドラ。今とっさに思いついた名前よ。」
「(絶対知ってるやん。)で、シェンドラさん。いったいどこにいるんだ?
俺の心の中とか言わないでくれよ?」
「よくお分かりで。不正解でーす!じつはこの星だと実態化できないのよ、契約の問題で。」
「じゃあどこなら姿を現してくれるんだ?」
「この星じゃ無理ね。私は今、魂だけ地球にいるのよ。本体は遠く離れた空球スーアというところにいるの。」
「クウキュウスウア?に俺も行くことは可能なの?」
「来れないところじゃないわ。でも一つ条件があるの。それは、今から言うことを聞いて。明日朝まで誰とも目を合わさないこと。いい?」
「う、うん。でもなんで?」
「今、君に魔法をかけてるから。こっちの世界に来るとこの星の人間の目は即潰れるのよ。要は、バルス状態ね。」
「つまり今、魔法がかかった状態で地球人を見ると相手がバルスるのか。」
「まぁ、そういうことね。んじゃまた明日の朝迎えに来るからね」
「迎えに来るって??どうやって!?」
「君の体から魂をこっちに連れてくの。んで、その肉体は一旦私がアイテム化して持っておくわ。スーアに到着したら返すから。」
「親は心配しないのか?俺の親は超絶心配症だから俺がいなくなったら市内が騒がしくなるぜ?」
「その心配は必要ないわ。一旦あなたの地球での存在を抹消しといてあげるから。」
「怖いこと言い出すなぁ。でさ、俺の願いは叶ったのか?翼が欲しいって言う願いは。」
「スーアに来てからのお楽しみね。じゃあちゃんと条件を守ることね。バイバーイ」
「おっ、おい!あともうひとつ聞きたいことが!」
しかしシェンドラから答えはない。
「まぁ家帰って携帯いじりながら朝を待つとするか」
そういい、俺は家までの道を歩き出した。