群馬県民の日(二百文字小説)
十月二十八日は群馬県民の日です。県民は、県立の施設は無料になったり、割引になったりします。
「もしもし、母さん」
「お前かい? どうしたんだい?」
「明日は群馬県民の日だから帰省したいんだけど、電車賃がないんだ。振り込んでくれないか?」
「電車賃がなければ車でくればいいのに」
「マリー・アントワネットもどきの事を言わないでくれよ。とにかく振り込んでくれよ」
「お前の住民票は江東区にあるだろ」
「生まれたのは群馬だから関係ないよ」
「母さんはそういう不正は嫌いだよ」
妙な正論を言われ、息子は受話器を置いた。