城内
視点が変わります。
彼氏を助けに向かった彼女は??
美咲は薄暗い地下道の中ボロボロのローブに包まり後悔していた。
「なんで…私……」
どうしてこんなところにいるのか、なんであの時1人で行動したのか。
後悔と反省、自分の浅慮にイライラが募るが薄暗い地下と孤独感に涙が止まらない。
カツカツと響く足音、ガチャガチャと金属の擦れる音が響き渡り誰かが自分のことを探していることに恐怖を覚える。
怖い!なんで?怖い!私どうなるの?嫌だ!嫌だ!
キュルキュルと空腹を知らせるお腹に発熱するからだがさらに苛立ちを加速させる。
なんで?どうして?私がいけないの?あの時?なんで?何が?あいつが!なんなんだ!どうして私が!?
ぐるぐると負の感情が駆け巡る。
「誰か……助けてよ………」
遡ること10時間前美咲は彼氏である武1人を残して逃げてる自分がどうしても納得できなかった。
武と出会ったのは一ヶ月ほど前の休日に1人で買い物している時だった。
高校も三年になって受験シーズンになり勉強の時間が増えてきた。一応自分が通う学校は文武両道の進学校ということでこれからどんどん勉強で遊ぶ暇がなくなるだろうことがわかっていた。
だから夏休みに一日ぐらいプールでも行って息抜きをしようと真奈美と彩香と三人で遊ぶ約束をしていたために各々新しい水着を買いに行くことにしていたのだ。
何着も試着を重ねてこれ!というものを選び店を出たところで首や腕に刺青をした男たちにナンパされた。
強引に手を掴まれ「ちょっと遊ぶだけだって」「ご飯行こうよ。めちゃうまい店あるから」なんて誘ってくる男に恐怖で何も言えなかった。
そんな時にやってきたのだ。私の王子様が。
「いい大人が何してんの?」
私と男の間に割って入り助けてくれた。それで惚れるなという方が難しい。
すぐに好きになった。かっこよかったもん!!
連絡先を聞いてお礼にご飯をご馳走すると言ったのに自分が出すからっていうの。かっこいいよね?
さすがにその時は割り勘にしたんだけど千円未満の端数は彼が払ってくれたのが嬉しかったな。
何度か学校帰りに待ち合わせして武がバイトまでの1時間ぐらい一緒にいて。
それがたまらなく幸せで出会って二週間で彼の家に遊びに言った。正直高校卒業までに処女卒業したいなぁなんて思ってたし緊張したけど…ね。
でも痛くて痛くてあんまり気持ちいいとかはなかった。武は私が痛がるたびに謝るから途中から我慢してたんだけどどんどん激しく痛くなるしで……でも好きな人と初めてを迎えたと思うとなんだか嬉しくて家に帰ってから舞い上がっちゃったのは仕方ないよね。
慣れれば痛くないって聞くからあと何回かしたら私も……
そんなことを思いながら一週間過ごしてまた次の休みのデートこそ!なんて思いつつ真奈美と彩香との帰り道。
2人に茶化されつつ武のバイトするコンビニに行くことになった。
時間的には働いてるはずだけど見当たらない。多分バックスペースとかで何かしてるんだろうと思いつつレジのおじさんの前を通り過ぎると横目で武の姿を探す。
もしかして冷蔵庫の裏かな?と冷蔵庫のそばに近づくと地震が起こった。そこからはあんまりよく覚えていない。
気がつくと彩香に起こされ見たこともない場所にいた。近くには槍を持った人が気絶してしかも頭がすごく痛い。変な情報の羅列がガンガンと頭を打ち付けてくる。
ここにいちゃダメだと訴える体とは裏腹に武の無事を確かめたいと思う自分。
あぁ武のことこんなに愛してるんだなぁ私
と思いながら辺りを見回すと髪の毛ボサボサの変な男が口をパクパクさせていた。彩香に急かされ言われるがまま地面の隙間から部屋を出るとすぐにボサボサの男が降りてきて武も隙間から顔をのぞかせた。
武を助けてくれたんだと思うと変な男なんて思った自分に罪悪感を覚える。
そう思ったのもつかの間武が穴に詰まって降りてこない。
そうこうしてるうちに男の叫び声が聞こえたかと思うと真奈美に手を引かれて地下道を走っていた。
「ぐずっ、たけし…」
「みさ…」
埃とカビ臭い地下道の中を走りながら前を走る男を睨みつける。
私に希望をもたせといて……武を囮に逃げる??
冗談じゃない!でも真奈美と彩香は巻き込みたくないし……そう考えるとこの男も間違ってないのかな?
いやいや!そうじゃない!私が武を助けないと!
そう決意すると隙を見てここから離れないといけない。
しばらく最後尾を走りながらどうしようかと考える。チラチラとこちらを心配するように彩香が様子を見ているようで時折声もかけてくれる。大丈夫と答えつつ彩香の優しさが少し苦しい。
しばらく走り続けているが最近勉強ばかりで運動不足なのにもかかわらずあまり疲れたように思えないことを不思議に思う。すると頭の中にジョブというものが浮かび上がってくる。
魔術師
私はジョブという特殊能力を持っているらしい。しかも魔術師なんていうジョブ。
どうやらこのジョブが無意識のうちに魔力で身体能力を少し上げてくれていたみたいだ。
この世界ではスキルとして即時発動できるものを魔術、それ以外の詠唱などのプロセスが必要なものを魔法というらしいがそんなものどっちでも構わない。魔法の使い方もなんとなくわかるし『魔素感知』『魔力感知』のスキルで周りにある魔素も魔力も感じ取れる。
なんとかなるかもしれない
ぎゅっと拳を握り締めると頭に浮かぶ魔法発動の手順をなぞる。今できるのは呪文詠唱による魔法。
みんなには聞こえないよう口の中でぼそぼそと詠唱を開始する。
回復魔法リフレッシュ
疲労を始めなんらかの状態異常を緩和させる魔法だ。今は緩和しかできないが熟練度が上がると解消になるみたい。
そこまで疲れていないと言っても走ってる以上少し体は重くなっていたのだが『リフレッシュ』を使った瞬間にそんなもの吹っ飛んでしまった。
いける!
確信に変わるとあとはどうやってここから離れるかだ。
2人のことも心配だしこのボサボサはあまり信用ならないけど私たちを起こして逃げようとしたぐらいだから今は2人を逃がすために信用してみるしかないか。こっそり携帯を胸ポケットから取り出すとロックを解除する。さすがに書置きをしておかないと2人とも心配するもんね。
走りながらメモ機能に文字を打ち込むとその画面のまま一度ポケットにしまう。下水道に出て外に出れそうな場所を見つけると計画を実行に移す。
「アヤちょっとトイレ行ってくる」
「ん、わかった」
「そこの角だから」
「うん」
彩香にこっそりと託けると角を曲がり携帯を地面にそっと置く。
「サイレント。あ〜あ〜。よし!」
魔法で音が出にくいように空気の振動を抑える。
「ダークイリュージョン」
闇に溶け込むように光を服に吸収させて認識しづらくさせると元来た道を走り出す。
何度か捜索に当たってる兵士をやり過ごす。兵士には私の魔法がかなり有効なようで全く気付く気配はない。でも時々いるローブ姿の人たちは10メートルより近づくとこっちを振り向き首をかしげるので近づきすぎるとバレるかもしれない。幸い今は地下の暗闇に紛れている上に広範囲に捜索を広げてるみたいで同じ場所に止まらずにどこかに走り去ってくれる。
先ほどの穴に近づけば近づくほど人の数は多くなる。
「どうだ?いたか?」
「いや、そっちはどうだ?」
「足跡っぽいのはあるんだが途中で途切れて…」
「地下道の地図は?」
「いや、100年以上前に一度紛失して以来完全なものはないそうだ」
「くそ!」
兵士が言い合いしてる横を忍び足で通り過ぎる。
穴の下までやって来た。私の記憶はかなり精密みたいだ。
上を除くが誰かいる気配はない。魔法で筋力を上昇させるとしゃがみこんでジャンプする。
「えい!っんしょ」
砂が制服につき汚れるが気にしない。
穴から顔を出すとすがそこにはそこかしこ床がめくれてるだけで特に人がいるということもない。どうやらすでにどこかに連れてかれた後のようだ。
ここからはより慎重にいかなければならない。気を引き締めると何度目かの『サイレント』『ダークイリュージョン』を唱える。軽いめまいのような症状が出るがそれは魔力を使いすぎただけだ。まだ大丈夫枯渇したわけではない。
軽く頭を振ると何かキラリと光るものを見つける。
開け開かれたドアを確認すると光るものを手に取る。真っ赤なロゴのついた遮光瓶にアルミ製の蓋。コンビニによくある栄養ドリンクだろう。
「エナジーマカ?眠気覚ましじゃない、よね?栄養ドリンクかな?」
薄暗い部屋では細かい字が読めないが必死に走って来たため少し疲労がある体にはいいかもしれない。日本語だしそう悪いものではないはず。そう思うと一気に煽る。
「ぷふぅ!変な味」
空き瓶を捨て他に何か使えそうなものがないかもう一度部屋を見回すともう2本同じ栄養ドリンクが部屋の隅に落ちていた。
先ほど感じためまいはほとんど消え今はお腹の底から力が湧き始めている。
そこで彩香が読んでた小説を思い出す。日本の商品が異常性能なを発揮するので聞いてみると「異世界物の小説だと地球の商品はすごい力を発揮するのが鉄板ネタだよ!」と言ってた。確かに栄養ドリンク一本でこれなら……
巻いて短くしていた制服のスカートを下ろしてそのポケットに「エナジーマカ」を突っ込むと武を探しに駆け出す。それが精力剤ということも知らずに……
余談であるが次元を超える時、生物以外のものにも多量の魔力が流入するために所謂マジックアイテムと化す。このため地球以上の効果が発揮するのだが、今回も速効性と持続性、効能強化の方向で魔力付与が働いている。ついでに言うと制服も魔力によって皮鎧程度の防御性があり、夏服ということで耐暑性能があるのだが今はなんの役にも立っていない。
部屋から飛び出してすぐに灰色のローブを着た男性と鉢合わせ咄嗟に魔術を行使する。
「マジックブレット」
単純に無属性の魔力の塊を叩きつけるだけだが異世界人が使うとなればその威力も高い。それも精力剤で元気一杯ともなればことさらだ。
「グフゥ」
一撃で気絶した魔術師を先ほどの部屋に引きずっていくとローブを脱がせて持ってた杖を取り上げる。20代前半と思われる男を一瞥すると少しお腹の底がキュンと脈打つ。
不思議な感覚に首をかしげるが今は武だと頭を切り替えローブを羽織ってフードを深くかぶると石造りの廊下を駆け出すと外に出る。今いたのは離れなのか城から少し離れた場所に立っている。周囲を見渡すと山の斜面に建てられた城のようで城下町を見渡せるほどの高低差がある。街の大きさは雪が降っていることもあり全容を把握できはいほどだ。裏手の山は結構な急斜面であること攻められるリスクが少ないのだろう。さらにこの城は川に沿った城壁により外から攻めることもままならないだろう。
せわしなく走り回る兵士と魔術師たちに紛れて城に入ると情報を伝えにくる兵士の声を盗み聞き場内を探索する。
みんな逃げられただろうか?
「男はどうした?」
「小部屋に閉じ込めてます」
城の中を怪しまれない程度に小走りで移動していると一つの部屋から話し声が漏れ聞こえる。
一度周囲を見回し人が来ないのを確認すると魔法で聴覚を強化すると中の声を盗聴する。
「勇者ではなかったのだな?」
「はい、鑑定石によれば商人と」
「はぁハズレだな。戦闘職ですらないとは…」
「ですが異世界人です。潜在魔力の高さとスキルを考えれば」
「そう、だな。もったいないが適当に女をあてがうか?」
「であれば犯罪者か娼婦を」
「なるほど、な。戦闘職でない以上その辺に落ち着くか。では病には気をつけよ!」
「は!」
「子供ができれば儲けもの…か。次の報告を」
「は!逃亡者ですが勇者曰く女が1人、男が1人。後はわからないが人がいたと」
「ほう、そうか。戦闘職であれば良いがな。して隷属の用意は?」
「……賢者様が、その…張り切っておられて…」
「そ、そうか…杖を奪われコケにされたと怒っておったからな……そ、そうだ!勇者の方はどうだ?」
「部屋の方でマリアンナ姫が丁重にもてなしております」
「勇者は楽でいい。だが第4位とはいえ王族が色ボケ猿の相手か……」
タッタッタッタッ
ガチャガチャガチャ
こちらに向かってくる足音が聞こえてきたので盗聴をやめて急ぎ場所を移動する。
「勇者に商人……異世界人………勇者は色ボケ…」
盗み聞きした情報からすると商人はどこかに閉じ込め勇者はどこかでもてなしている。
勇者は色仕掛けでこちらの情報をベラベラと喋ってるらしいし……武が商人?
「私にとっては武が勇者いや、王子様だけどね」
呟くと口角を上げて武を探して走り出す。
「今助けに行くからね」
兵士の様子を見ながら閉じ込められてそうな場所を順番に探すと何やら叫び声が聞こえてくる。
「助けてくれ!誰か!なんなんだここは!悪い夢だ!誰かいないのか!警察!警察を!」
この声聞き覚えがある。
そういえば逃げる時に…
え?でもそんなはずは……
その声が漏れ聞こえる場所の扉の前にいる2人の兵士に声をかけてみる。
「大変だね」
できるだけ太く男っぽい声を出す。
「あぁ…ま、仕事だからな。だがこちらが召喚した手前、なぁ?」
「まぁあれだけ暴れてればな。落ち着くまでは仕方ねぇんじゃないか?」
「そうだな。にしてもあのおっさん元気だな」
「あ〜異世界人だしなぁ。上の方ではこのまま暴れるなら隷属させて戦争にでもって話だ」
「流石にそれは…戦争はともかく魔王討伐に呼んだんだろ?」
「だがなぁ。戦争終結させんと魔王どころでもないしなぁ。それに召喚じゃ死ぬの確定してるやつしか呼べないんだし命救ってやったんだから恩返しは必要だと俺は思うぜ?」
「はは!そう言われては確かにな」
やはりここにいるのは武ではない?でも、え?武が私たちのことを??
バクバクと脈打つ心臓
「どうした?」
「そういえば、灰ローブなのにこんなとこで油売ってていいのかぁ?」
「確か逃げた異世界人追ってんだよな?」
「そ、そうだった」
「逃げたのは恩知らずな奴らだ。手加減なしでとっちめてしまえ!」
「あ、あぁ」
これ以上はボロが出るのでその場を離れる。
一体どうなってるの?なんで?どうして?私たちが悪いの?
なんだか体が熱くなり少しイライラとしてくる。
周りの会話を盗み聞きながら廊下を走り勇者がいるらしい部屋に近づくが部屋の前には兵士と魔術師がいるようだ。
周囲を見回し聴覚を強化すると人のいない部屋に入ると窓からちょっとした出っ張りを伝って移動する。ちらちらと降っていた雪が徐々に強くなる。
「はぁはぁ」
小さな足場に寒さで震える足が落ちそうで怖い。だがそれも武を助けるためだ。
これから武を連れて逃げるのだ今のうちに補給しておこうとポケットからエナジーマカを取り出すと景気付けに一気に飲み干す。胃の中がカッと熱くなったかと思うと腹の底から熱気が沸き立つ。
「はぁ、はぁ。よし!」
強くなる一方の雪だが逃げるにはもってこいかもしれないなどと思いつつ気合を入れると校章に付いた安全ピンを使って窓の鍵を開ける。文明度はそこそこなようで窓の隙間から簡単に鍵を外すことができた。
「ではよろしいのですか?」
目的の部屋の窓を少し開けると女性の声が聞こえてくる。
「もちろん」
武の声だ。
武の元気そうな声に喜ぶがどうも釈然としない。この女の声は何?
「ありがとうございます。この世界を救ってくださるというのならわたくしのことはお好きなようにお使いください」
「好きにって、好きにしていいのか?」
「えぇ魔王を討ってくださるというのなら私の体など安いものです。それに勇、いえ、武様のその容姿に御心に触れて否という者などおりませんわ」
「そ、そうか?うへへ」
「はい。そうでございます。ところでお仲間のことなのですが…」
「仲間?あぁ……男は知らないし女は……やっぱり知らない。それよりも」
「あ、そんな、あぁ…優しく、優しくお願いいたします」
え?なに?どういうこと?
カーテン越しに見えるシルエットが重なり女性の艶かしい声が聞こえてくる。
「あ!んぁ…そこは……はん!」
「はぁはぁ。姫様」 ブチ
「ん!マリーと、んぁ!はぁぁ…マリーとお呼びくださぁん!」
「マリー。君のために俺は戦争を終わらせ魔王を倒すよ」 ブチブチ
「武様ぁぁあ!あん!」 ブチブチブチバチン!
腹の底が脈打ちふつふつと熱い何かが込み上げてくる。
イライラとする感情が全身に駆け巡り腹の奥底から熱い脈動がこれでもかと吹き荒れる。
「はぁはぁはぁ、はぁ?」
ガシャーン
イライラがピークに達すると窓を破壊して部屋に飛び込む。
ベットの上で一糸まとわぬ女とねとっとりと絡み合い、豊かな胸に上半身裸の武が嬉しそうに顔を埋めている姿にますますイライラが募る。
窓の割れる音にゆっくりと顔を上げる武と何事かと飛び込んでくる兵士と魔術師。
「ひ、姫様!も、申し訳ございません」
兵士は入ってくるや否や裸の女を見たようで顔を真っ赤にして後ろを向き、魔術師は一瞬目を向けるだけですぐに美咲に正対する。
「構いません。それより賊を」
「マリーの裸は俺だけのものだ!」
「そうですわね。わたくしは武様だけのものですわ」
女を抱きしめアホっぽい発言をする武
女の言葉に満足そうな顔をする武
「はぁ?」
自分ですら驚くほど冷たく冷えた声が出た。
もうどれだけ私をイラつかせれば気がすむのだろうか?
「ん?あぁ…何?逃げたんじゃないの?なんでもいいけど今忙しいんだよ」
武は女の尻を撫でながらそう言うとまたいちゃつき始める。
何がどうなってるのかはわからないがこのクズ男はここで仕留めないといけない。
どうしてくれるんだ!私は
「マジックブレットォォ!!」
こんな男のために!
ドオォーーン
必死になったなんて!!
ベットが砕け木片が飛び散る。
だが武すでに扉のそばまで飛びのいて女にシーツをかぶせていた。
どうやら私と同じようにジョブがあるらしい。当然勇者なんだろう。だからどうした!
自分のジョブのことなら頭の中に流れ込む情報に意識を向ければある程度理解できるのだから武だってこれぐらい出来て不思議ではない。
「危ないなぁ。マリーが怪我したらどうすんだ!邪魔だよお前」
「マジックブレーット!」
なんなんだこいつ。なんでこんなの好きになったんだ?
「マジックシールド!勇者様おさがりください」
「大丈夫だよこのくらい。俺は勇者だからな。全くこれから……この剣借りるよ、楽しむ予定だったのに」
私の攻撃が半透明な壁に防がれると武が兵士から剣を取り上げ私に向かって正対する。