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プロローグ

気まぐれに更新しますので気長にお付き合いください

ビュ〜 ビュ〜

ガサッガサッガサッ

ザッザッザッ


轟々と音を立てる吹雪の中を歩く

寒さでガチガチガチガチと音を立てつつもどこか寒さを防げる場所を探して歩くしかない。


「んっしょ!はぁ、はぁ、どうしてこなった?」


つい数日前までは平和に大学生活を過ごしてゲームしたり小説読んだりしてたのに。






山本賢治どこにでもいる普通の大学四回生、趣味はゲームに小説と無駄な雑学的な知識をつけること。

要は自分の好きなことしかしたくない人だ。

高校の指定校推薦があるからという理由だけで大学に行ったため特に学びたいものもなく最終学歴大学の方が有利じゃね?という安易な考えで大学に進んだ。

やる気がなかった俺は成績も中間よりもちょっと上という頭が良いのか悪いのかよくわからない中途半端な位置で好きなゼミを選べなかった。こんなことならもっと真面目に勉強しとけばよかったと思ったのはゼミの先行が始まってからだった。とはいえ好きに選べないまでも選択肢ぐらいはある。俺が選んだのは古典の研究で今は日本の古書を調べるお手伝いをしている。なぜか本の修復をしたり調べる分野も歴史書から始まり今は医心方なんていう昔の医学書を調べている訳だが医学の知識を今から勉強するとかどんな無理ゲーなのだろうか?



そろそろ夏休みという時期だが論文の締め切りが近いので学校から遠い実家に帰る時間ももったいない。学校に泊まり込んで書き上げようと思い何泊かするつもりで論文の資料をスーツケースに詰め込み、登山用リュックに着替えに充電器、歯ブラシなどを詰め込むと食料調達と他に足りないものを買い揃えるためコンビニへと向かう。コンビニの裏にはスーパーもあればちょっと足を伸ばして複合商業施設もあるのだがうちから駅に向かう途中にあるのでコンビニをよく利用する。

そのコンビニはちょっと特殊で普通のコンビニよりも大きく変わったものも売っている。一体何を目指しているのかわからないほどで近所のおじさんなんか『よろず屋』なんて言ってるぐらいだ。大方スーパーに対抗してるんだろうが対抗する意味はわからない。


二階建てのコンビニ(二階は無人のトランクルーム)の前にある信号までやってくると下校中らしい近くにある女子校の高校生3人組が横に並んでくる。

右から黒髪ポニーテールで膝下スカートの真面目そうな子、赤髪短髪のアーチェリー部と書かれたジャージ姿の子、制服のスカートを巻き上げ膝上10センチのチャラそうな茶髪の子の3人だ。

赤髪の子が黒いケースを持って大荷物だがあれがアーチェリーなんだろうな。

黒髪ポニーテールが手で顔をパタパタと風を送りながら口を開く。


「授業で水泳あるのはいいけど髪の毛がなぁ〜」

「確かに、パサつくもんね。てかアイスたべたくない?」

「コンビニいく?」

「行く行く。そういえばあそこのコンビニって美咲の彼氏バイトしてるんだよね?」

「マジ!美咲彼氏おったん!」

「北高の剣道部主将。同じ大学受けるんだ」

「マジか〜。な、な、もうやった?」

「え、あ、えへへ」

「そっか〜。一足先に大人になりよったかぁ。そうか!だから髪染めておしゃれも!ハァ〜あっついわぁ〜」

「えへへ。でも真奈美の髪も綺麗じゃん。地毛が赤ってちょっと羨ましい」


改造スカートの茶髪がニヤニヤと照れた様子で髪の毛をいじり始める。

うん。こいつはビッチでいいだろう。女子高生特有のなんの脈絡のないガールズトークが年齢イコールの俺には少々きつい。

てかビッチ!お前は彼氏できて調子乗ってんだろ!と突っ込んでやりたい。ちょっと羨ましいのは全然羨ましくない時の言葉だろ!

彼氏の剣道部もどうせチャラいんじゃねぇの?と言ってやりたいのは俺だけではないはずだ。

などと考えてるうちに信号が変わる。


「先行っといて。ウチ上にこれ置いてくるから」

「は〜い」


女子高生達もコンビニに行くことが決定しているらしく俺の後ろを喋りながらついてくる。

コンビニに入るとまずカップ麺売り場を見てお気に入りの商品をいくつかと目覚まし用の栄養ドリンクを手に取る。

飲み物は学内の方が安いが炎天下で学校までの距離を考えると何か欲しい。

冷蔵庫から一番安いお茶を手に取るとトイレから「はぁ、今日からだよ〜。でもコンビニに試供品なんてあるんだね。知らなかった」とよくわからないことを言いながら出てくる黒髪ポニーテールと鉢合わせてちょっと気まずい空気が流れる。


カタタタタ

ガタガタガタガタ


コンビニ全体が大きく揺れるとウワーンウワーンと携帯が地震速報を知らせる。


ピシリ


コンビニのスタッフオンリーと書かれたドアの中から何かが割れたような甲高い音が聞こえる。


「ん?」


不穏な音にコンビニ内にいる全員がドアに視線を向ける。先程の地震でどこかにひびが入ったのかもしれない。


ベキ!!


ドアの蝶番が壊れてバタンと倒れたかと思うと向こう側にひび割れた空間が現れる。


「何あれ?」


誰かがそう呟くとピシリピシリとひびが大きく広がりボロボロと崩れる。

中からは漆黒の渦が現れコンビニ内の何もかもを吸い込んでゆく。

突然のことで何が何だかわからないが吸い込まれまいと踏ん張り咄嗟に近くの棚に捕まる。


ガタン!ガタガタガタ

バギ!

ウワーンウワーン

ガシャン!ガラガラ

ウワーンウワーン


コンビニ全体が激しく揺れ始めると天井や壁が軋み出す。携帯がけたたましくなりひびきもう何が何だかわからない。


ゴウ!


渦の吸引が強まるとスタッフオンリーと書かれたドアが渦に吸い込まれるのを皮切りに360度すべてのものが勢いよく渦の中に吸い込まれていきバックスペースにいた店員らしき男性が吸い込まれていく。


「オアァァァァ」

「武!キャ!」


女性(多分ビッチ)の声が聞こえたかと思うとガシャンとつかんでいた棚が倒れ黒い渦の力に逆らうこともできずに吸い込まれる。

最後に目に飛び込んだものは赤いレースの布地と肌色のなんとも美しい景色であった。


この日、日本を大規模地震が襲った。南海トラフが弾けて日本全土が地震により混乱をきたす。

太平洋に面する南では地震と津波による被害が甚大で多くの建物や人が津波にさらわれ海へと流されたとされている。

死者行方不明者、推定1万人以上と言われる大地震。

この中には彼らの名前が入ることになる。

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