生きてるよ?
何事もなかったかのように自らの足で立つゼロツーを私は茫然と見上げていた。
あれで生き残れるだなんて、それこそバケモノじゃないか。いったいなんてもの生み出したんだ。
内臓をぐちゃぐちゃに潰されても死なない体。強化ガラスを破るだけの力を持った翼。兵器にしたら、人間なんて……。
そこまで考えたところでハッと気づいた。ゼロツーはまだ動ける。殺そうと思えば自分だって危ない。
しかし、ゼロツーはそのような素振りを欠片も見せなかった。ただただ、悲しそうな顔でこちらを見つめている。
「ゼロツー、帰ろう」
何を思っただろう。困惑しすぎていかれたのかもしれない。私はそう言うと手を伸ばした。
ゼロツーは大人しくそれに従った。手をおぼつかなくはあるがしっかりと握ると、私についてきた。
本部に連絡し、水槽、窓、血だまりの処理をしてもらった。被験体を逃がさないためだろう、連絡したらすぐに人をよこしてくれた。
ゼロツーは部屋に戻るとすぐにまた窓に駆け出そうとした。それの性質を知っていたようで、手配されてきた人達は慌てることなくゼロツーを抑え込み、麻酔のようなものを打ち込んだ。ゼロツーはがくり、と力なく倒れ動かなくなった。
「次からは気を付けてくださいね。くれぐれもゼロツーを逃がさないでください。失敗作とはいえ、彼女は大切な技術の塊です」
そう私に言い聞かせると、彼らは帰って行った。