セールブランへようこそ!
つくづく不定期なのが申し訳ないと思いますが、どうかお付き合いください。
「きゃあー!」
その悲鳴で私は目を覚まし、急いで辺りを見渡した。
「きゃあーー!助けてー!お兄ちゃーん!」近くで少女の悲鳴が聞こえる。
ウォーーーーン!そして、野獣のようなうめき声までが聞こえてきた。私は立ち上がり、声のする方向へ走り出した。
ガサッ!草木を払うと私の目の前には小さなかわいい少女が野獣に襲われようとしている光景が飛び込んできた!
「大丈夫!?ハッ!」私は少女を匿いつつ、野獣を見て驚愕した。(狼!いや違う。何なの?この生き物は。見た目は狼?っぽいけど頭が2つもある!?これって、もしかして)
「ケルベロス!?」するとそのケルベロスは私に狙いを定めて牙を剥いた。ガチンッ!ケルベロスが噛んだのは私が咄嗟に構えた日本刀だった。私は今しか無いと日本刀ごとケルベロスを押し蹴って後ろに飛んで体制を立て直すが、、、そこで私は目を疑った。ボォオオ!いきなりケルベロスの口から火炎放射器のような炎が放たれたのだ、私は咄嗟に女の子を抱いて木に隠れてやり過ごしたが炎は辺りの草木を燃やしながら次第に私達の周りを取り囲んでいった。
(なにこれ、常識外れにも程があるでしょ。ケルベロスとか、間違いなくこの世のものじゃないし。しかも炎吐くとかバケモンじゃない!てか、さっきもドラゴンみたいなのいなかった?それにこの女の子も着ている服はなんか変だし、どっかの民族衣装?え、てかこの子、超カワイイんですけど!?上目遣いヤバイ!直視できない!いやいや、とにかく今はこの子を守らないと!てか、今は私すら危ないんだったー。バカか私。どうする?日本刀が通用するかどうかはわかんないけど、もうやるしかないよね。)
「ちょっと待っててね。」私は少女にそう言って立ち上がると少女は涙ぐみながら「うん。」とだけ言った。
(やばい、可愛すぎる!初対面なのに母性本能が耐え切れないよー。この子のためにも勝たなきゃ!実際の生き物相手にやったことないけど、この際目を瞑ろう。お祖父ちゃん、私は今から殺生をします。許してください。)私は木の影から出てケルベロスの前に立ち、居合の構えに入ってケルベロスとの間合いを図った。私は目を閉じて神経を耳に集中させる。少しの沈黙が流れ、聞こえるのは周りの草木の燃え盛る音と私の心臓の音、そして標的の鼓動だけ。そして、ケルベロスの鼓動が大きくなった瞬間。(来た!)ガルル!ケルベロスが牙を剥いて飛びかかってくる。勝負は一瞬、標的が間合いに入った刹那にブシュッ!!ケルベロスの体は半分にスッパリと割れ、地面に転がった。大量の血が天に飛散して辺りが血まみれになる中、私は刀についた血を払い、静かに鞘に納めてから手を合わせて頭を下げた。
「安らかにお眠りください、、、よし!もう大丈夫だよ!怪我はなかった?」私が少女にそう笑いかけると、少女は泣きながら駆け寄ってきた。私は少女を抱いて座り込む。そしてしばらく炎の燃え盛る音と少女の鳴き声がこの森の中に鳴り響いた。
少女が泣き止む頃には炎も静まり、かなり焦げ臭かった。
この日私は、生まれて初めて生き物相手に居合をして、生まれて初めて殺生をしてしまった。そして、生まれて初めて人助けというものを経験した。
(はぁ、一体あの野獣は何だったんだろう。それにこの子もどこの子かもわかんないし。まずここ何処なんだろー。)そんなこんなを考えていると、ガサッパチパチッ!何かが草木をかき分けて、燃え尽きた草木を踏みながら、近づいてくる音が聞こえた。
私は野獣の仲間だと思い立ち上がって刀を構えたが、予想に反して出てきたのは銀髪で背が高い細身の男性だった。
男性は辺りを見て驚いた様子だったが私の顔を見てその顔はもっと険しくなって、男性は持っていた剣に手をかけた。
「これは一体?何があったんだ、、、もしかして君がやったのか?」私は刀から手を離して急いで説明をしようとする。
「いえ!違います!!えっと、これには深いわけが!!」「お兄ちゃーん!!」突然、少女が男性に飛びつく。(だめ!危ない!殺されてしま、ん?あれ?さっき、お兄ちゃんって言った?どゆこと?)
男性は人が変わったように笑顔になり、少女を抱きかかえた。
「アネラー!こんなとこに居たのか!何があったんだ?怖くなかったか?無事だったか?怪我してないか?」(アネラ?)
「うん!大丈夫だったよ、お兄ちゃん!」(お兄ちゃん?)すると少女は私に指をさして、
「ケルベロスに襲われてた所をあのお姉ちゃんが助けてくれたの!!」と言った。(もしかしてこの二人、兄妹!?)私が驚いていると男性はこっちを向いて頭を深々と下げた。
「この度は姪を救っていただき、ありがとうございました。
知らぬこととはいえ、疑ったこと申し訳ありませんでした。」
「いえ!そんな!別に構いませんから!あのままでは私も危なかったですし。頭を上げてください。」男性は顔を上げて、それならと話を持ちかけてきた。
「では、お礼と言ってはなんですが、今から私達の家にいらっしゃいませんか?もてなします。少し聞いてみたいこともありますし。アネラも喜びますし。どうですか?」すると少女も
「お姉ちゃんもうちに来るの!?」と上目遣いで私を見る。
(はぁ、カワイイ!でも初対面の人の家に行くのはな〜、でもカワイイ!!)私は少し迷ったが少女の上目遣いにつられて
「はい。お言葉に甘えさせて頂きます。」と了承してしまった。可愛いモノにつられて初対面の人の家にのこのこついて行くとか我ながらバカだと嘆いく。
こうして私は見知らぬ世界で見知らぬバケモノを倒し、見知らぬ人の家に行くことになったのだ。
森から抜け山を出てしばらく歩くとちょっとした村についた。そこには洋風の古民家や商店などの建物が並び、田畑や自然に囲まれて沢山の人々と動物が暮らしていた。
「ようこそ!セールブランへ!」そう言われながら二人に連れられて、私は門柱のように構える大きな2本の木の間を通り、二人の住む家へと向かった。
書いていると、自分の文章力の無さをすごく痛感します。そんな私の物語に付き合ってくださり感謝しかございません。次回も読んでいただけると幸いです。