普通になりたい!
気分転換で書いてみました。
不定期ではありますが連載していくつもりです。
応援よろしくお願いします。
―居合―
この言葉を聞くと大勢の人が日本刀を用いた剣術を想像するだろう。実際は少し違う。剣術は剣を抜いた状態から相手を打ち負かすまでの戦闘術であることに対して居合は剣を鞘に入れた状態から抜くと同時もしくは第2撃で相手を切る技術である。
そしてここに若干15才にして、居合術を極めた少女がいた。
名を『近藤 刀鹿』という。
『丸に抱き角』の家紋が目に入る立派な昔ながらの武家屋敷、ここが私の家であり、3才からやっていた居合術の稽古場でもある。
なぜ女の子の私が居合を?って思うかもしれないけれど、父いわくこれは運命なのだとか。謎が多くなるけれどこれには訳がある。私の父はごく一般のサラリーマンで、母もごく一般の専業主婦なんだけど、母が少し違う。実は母親の家系は由緒正しき武士の家系なのである。由緒正しきって言ってもそこまでメジャーな訳でもないが私の祖先は『近藤長門守尚盛』という愛媛県に存在した武将だったのだとか、そして驚くべきことはその武将の家系図に連ねる名前のほとんどに尊・命と書いてあること、そして1番右つまり初めに『藤原鎌足』の名前があると言うこと。その家系図は最初は鹿の皮で包まれて私は信用せずにはいられなかった。何故ならこの家系では家紋に鹿の角を使うほど、鹿が象徴的な存在だったからだ。だからって、私の名前にまで鹿を入れるのは流石にどうかと思うんだけど。
そんな由緒正しい家に婿養子に入った父は運命と言わんばかりに
男女関係なく、当時3才の私に居合を習わせた。父方の爺ちゃんが居合術の師範であったこともその運命の一つなのだろう。私が上達するに連れて親バカの父と孫バカの爺ちゃんは家に稽古場まで作った。小学生までは居合一筋で中学の時はそれに加えて周りに合わせて剣道もやっていた。その甲斐あってか、15になる頃には私は神童と呼ばれ、居合術を極めてしまった。ただ、そこまで行ってしまうと当然、普通の女の子とはまったく程遠い生活で、私は今ものすごく、普通の生活を送りたいと切に願っている。
ある日の朝、今日も私はいつものように爺ちゃんと朝稽古をし、シャワーを浴び、制服に着替え、髪を縛り、朝ごはんを食べ、靴を履き、竹刀を持って家を出る。
「おはよー」通学路に登校する学生達の声が飛び交う。
その声の中から一人の声が飛び出してきた。
「刀鹿!おはよーっ!今日も相変わらず、刀が似あうねー!」
同じ剣道部の『松木 愛華羽』だ。私にとって愛華羽は学校で唯一私のことを普通の女の子として接してくれる数少ない友人だ。
「おはよー!今日も相変わらず元気だね!あと、何度も言うけどこれは日本刀じゃなくて竹刀!学校に日本刀持ってくるわけないでしょ!!」私がそう言うと愛華羽が笑い出した。
「刀鹿、本当に気づいてないの?自分で後ろ見てみなよ!」が真剣な顔で私に言うと、私は恐る恐る背中の竹刀を手にとって前に持ってくる。重さと手触りに違和感を感じながらも中を出すとそこには竹刀ではなく、紛れもない日本刀が出てきた。一瞬私は固まって、その後
「えーーーー!!!」とてつもない大声を発した。
それもその筈、竹刀だと思って持ってきていたものが日本刀だったのだ。誰がそんな馬鹿な間違いをするであろうか。私だ。自分で自分の過ちに恥ずかしさを覚える。
「な?日本刀だったろ?」そう言って笑う愛華羽。
「分かってたなら早く言ってよ!!」と吠える私。
「言ったじゃんか!むしろ感謝してよね!」とあっさり返され
「うー。ありがと。」と納得した私。
「よろしい。」愛華羽はすこし満足気だ。
そして私は俯いて、
「はぁ、こんな事じゃ普通の女の子になれるのはまだまだ先だな〜。」と呟いた。
「え?刀鹿、普通の女の子になりたいの!?なんで?」不思議そうに愛華羽は聞いてくる。
そうしている間に中学校の下駄箱につく。
「そりゃ、そうだよー。世の中こんな日本刀背負って学校に通う女子中学生なんて居ないよ。」トホホと私は言って下駄箱を開けるといきなり、ドサッ。
「おまけに、居合の達人で家柄も武士の家系だもんねー。
かっこいい!!さて、今日はラブレター何通来た!?」楽しそうに愛華羽は聞いてくる。
「もぉ、冗談じゃないんだからね!はぁ、2通も」肩を落として私は下駄箱を閉めた。
「男?女?」愛華羽は葉を見せて笑いながら言った。
私はしぶしぶ手紙の差出人の名前を見て、更に肩を落とす。
「両方」
「さっすがー!刀鹿はモテモテだねー」
「バカ言ってんじゃないわよ。相手するのも一苦労なんだから。」
「贅沢な悩みだねー」
そして昼休憩に入り、また愛華羽と話す。
「ラブレターの中身なんだって?」
「また、その話?両方1年で女の子は『応援してます!』男の子は『放課後、屋上に来てください!』だってさ。」
「片方はファンレターだったか、で?屋上には行くの?」とすこしつまらなさげになったと思いきや愛華羽はすかさず繰り出してきた。私は少し焦って、
「行くわけ無いでしょ!部活あるし!!しかも、屋上は立入禁止で鍵かかってんのよ?どうやって行くのよ!」
「まあ、新入生だから開いてると思ってるんだよ。もう9月だけど。」愛華羽はそりゃそうだと苦笑いした。
私は窓の先にある空を見上げて「はあ、いつになったら私に平穏な日々が訪れるのだろうか。」と嘆いた。
「まだ、そんなこと言ってんの?そんなの今の刀鹿じゃ無理だね、異世界かどっかにでも行かないと。」愛華羽に笑われた。
「異世界かぁ、それも良いかもね。」そう呟いた。
「でも、私にとっては今の刀鹿の方が格好良くて良いと思うけどねー。」
「そんなこと言うのは私の苦労を知らないからだよ!」
「そういうものかなー?」
「そういうものなの!」ここで話は終わり、そして部活終わりの帰り道。私は奇妙な動物に出会う。
ウサギぐらいの大きさで白くてキツネを少しモコモコさせた感じの見た目で何故か翼?が生えていた。そのキツネ?は通学路に突然現れそしてプカプカと飛んでいた。
それを見た瞬間「かわいい!!!」と、私はそのキツネに抱きついてスリスリした!
「なにこれ!?ウサギなの?キツネなの?なんなの?モコモコ可愛い!!」するとそのキツネは飛んで逃げていった、私は負けじとセーラー服にも関わらず走って追いかけていった。そして近所の神社まで追い込んだ。するとキツネは神社の境内に入っていった。「待って!キツネさぁん!!」私も追いかけて境内に入る。
そこで私の記憶は遠のいた。
「痛た〜。あれ?、いつの間に眠ってたんだろう。ここは・・・そうか、神社までキツネを追いかけて、そこで眠ってたんだ。」そこで、あたりを見回す。神社は変わらないんだけれどもなにか、違和感がある。なんだろう。その答えは空を見るとすぐに分かった。
ギュオエーーー
黒色のドラゴンと思しきモンスターが飛んでいた。そこで私の思考回路は停止してもう一度気絶した。
後になって言えるのは一つだけです。
読んでいただき光栄です。次回も読んでいただけると幸いです。