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努力家に惚れた天才  作者: 水道水
第1章〜人間の欲望はやがて悪魔を生む〜
8/9

破れない約束

「おや気絶しませんでしたか、無意識下に回避したといったところですか、素晴らしい才能です」

にこにこと不敵な笑みを浮かべ、力の入らない私を、拷問器具のついた手足を拘束、固定できる椅子に座らせ拘束、固定した。

力が入らないせいで抵抗もできない。

かろうじて動かせる口を開き、微かな声で放してください、と呟いた。

さぞ驚いたのか、にこにこしていた顔が少し歪む。

「声まで出せるとは...私の力加減が間違えたのか、あるいはあなたが私を超えるバケモノか」

考えながら淡々と何かの作業を続けている。

「まあどちらでもいいです、今の私の仕事は、あなたをしっかり指導する事ですから」

そう言うと、大きめのスタンガンを桜の腹部に当てる。

「じゃあこの授業の意図をわかってもらいますよ、桜お嬢様」

ビリッと音と同時に身体中に電気が走る、意識が飛びそうになり桜が顔を歪める。

するとまた、腹部に当てられたスタンガンからビリッと音を鳴らせる。

これが何度も続く、何度も何度も、もう何回目だろう...もう白との約束の時間には間に合わない、少ない一時間はとっくに終わっていた。

初めての友達の初めての約束を破ったのだ、もう会ってくれないだろう。

そう思うともう耐えられなかった、ずっと続く電撃、気絶すると水をかけられ起こされる、するとまた電撃。

何時間もたった頃には苦痛の表情も次第に薄くなっていった、もう電撃に反応する余裕もなくなった。

完全に反応しなくなると、訓練官のアドラ・バラムがスタンガンを桜の腹部から離した。

「素晴らしい、表情を悟られないとはそういう事なのです」

言っている意味がわからない、もしわかるならばそれは、この男と同じくらいの狂人だろう。

「今日の授業はこれで終わりです、お疲れ様です桜お嬢様」

そう言うと、椅子の拘束具を外し桜を解放した。

「これからもよろしくお願いします桜お嬢様」


また新たな悪夢が始まった。




あれから二週間が過ぎた、訓練官アドラ・バラムの授業を桜は完璧にこなせるようになっていた。

「ふふ、二週間で全てをマスターしましたか、流石と言いましょう、桜お嬢様は私を超えるバケモノでしたね」

訓練官の男がにこにこと不適に笑う。

「では、待ちに待った自由時間を解禁してあげましょう」

訓練官の男が桜の額を人差し指で突いた、次第に突いた額から黒い光が溢れ出した。

驚くほどの速さで黒い光が桜を呑み込んだ。

だが、呑み込まれた桜が一瞬に光を弾くようにして元に戻った。

その時、訓練官の男の不適な笑みが途絶えた。

「何をしたのです?」

「...いえ、なにもしておりません、それよりお友達に会いに行かなくてよろしいのですか?」

白のことは誰にも言っていないはずだ、何故知っているのだろうか。

まあいい、何もさせないから...。



桜は二週間前の約束場所に急いだ、居るはずのない約束相手を探して。


道場に着くと辺りを見回した。

誰もいない、当たり前だ、初めてあった人に騙されたのだから。

桜は、心に抱いていた小さな期待を外し、結果的に騙したという罪悪感と、唯一の友達を無くした虚無感を深く思い知った、初めての友達を無くした気分と裏切った気分が混ざる。

自由時間をどう過ごすか考えていた、その時だった、後ろから呼ばれたような気がした、振り向くとそこには白が立っていた。

「桜ちゃん久しぶりだね、ごめんねちょっと遅れちゃった」

「え、どうして...」

どうして来たの、何故かそう聞きたかった、会いたくて仕方なかった彼に。

「約束したから、初めての友達と」

桜はその言葉の意味を理解する為に数秒の時間を要した。

その言葉の意味を理解したとき、桜の口から自然と言葉が出た。

「ごめんなさい...約束破って」

「破ってないよ、だって来てくれたでしょ」

躊躇った、こんなにも優しい彼を結果的に騙すことになってしまったのだから、だが離れたくない、もう退屈は嫌だ。

「...そうなのかな、じゃあ何しようか?」

自らの欲望に負けてしまった。

「前と同じ、お話しよう」

「うん、そうしよっか」

二人は再会を喜び色々な話をした。




「わかったかしら、これが私の馴れ初めと貴女の誕生よ、まさかと思ったけどあなたが生まれたのはそこまで前だったのね...確かに、それがもし本当ならこのペンダントが壊れていない理由が理解できるわね」


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