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世紀末を旅しよう  作者: 隼理史幸
未来は灰と深緑に彩られる
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断片的な世界の現状

五月蠅い腹の虫をなだめつつ、部屋を出た俺とマイオさん。俺はその辺りを見回すと、少し驚きを感じた。


「…ここって、ホテルか?」


かなり寂れて内装が所々傷がついているが、どこかのホテルの廊下らしき空間が広がっている。以前見た深緑の樹海と違い、文明の残り香を感じさせる。


「やっぱ、ここは未来なんかな?」


ぼそっと、廊下を歩きながらそう呟く。少なくともこんな施設を紀元前の日本には作れないだろうから、間違って過去にやって来てしまったという線は消え去ったとみていい。


しかし、そうだとするとよくわからないこともある。


例えば、今俺の隣を歩いている少女──マイオさんや、さっき会ったスケベな少年のキョウギさん。あれはどう見ても普通の人間じゃない。言葉が通じるようだから日本人に違いはないんだろうけど、数百年の内に人類は突然変異でも起こしたのか?


それに、このホテルや時折ボロボロの窓ガラスから覗ける外の景色にも疑問点がある。


そこから見える世界は、灰色の廃墟が地平線の向こうへと広がっている。まるで文明が進化をやめてしまったようだ。


そして、その灰色のそこかしこに緑の斑点が見える。多分、俺が最初に目にしたあの重ね塗りした緑の樹木が侵食しているのだろうか?


──今いる世界の考察を続けていると、ふいに、ぐううぅぅぅぅぅぅう、と腹の虫が騒ぎ出す。


「…腹減った」


本心からの言葉が漏れ出す。隣のマイオさんは、口を抑えて笑っている。


「んっはははっ。そうだね。ボクもお腹空いてるよ。もう少しで食堂に着くから辛抱だよ」


子供をあやすみたく、ぐーぐーと五月蠅い俺の腹を優しく撫でる。…なんだか恥ずかしく思う自分がいて、少しだけ目を反らした。

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