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暗闇のなかで
──真っ暗闇だ。黒い渦巻きに呑まれた俺の周囲は、文字通り何も見えない、一面黒の絵の具を丹念に塗り重ねたキャンパスだ。
ここは何処だ?俺は死んでしまったのか?こんな問いに答えてくれるそれらしい者など辺りに誰もいない。仮にあの世ならば随分杜撰な扱いを受けていると思う。
というか、今俺の身体はどうなってる?それすらよくわからない。何処かへ墜ちているのか、それとも波に乗り漂っているのか?何も感じない。何も聞こえな──
「───だよ」
…何故だろう、誰かの声が聞こえた気がする。誰だ?聞き覚えのない、男の子とも女の子ともとれる声だ。
「──っちだよ。───」
まただ。なんて言っているんだ?よく聞こえないよ。俺はよく耳を澄ませる。──音の聴こえないこの空間の中に、反響するものが拾える。
「──こっちだよ。君の行きたい場所は」
その声はまるで、俺を導くように真っ黒な空間の中にほんの一筋だけの、それでも眩い光を照らす。俺は、そのか細い光に手を、目一杯伸ばす。