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世紀末を旅しよう  作者: 隼理史幸
未来は灰と深緑に彩られる
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落ちるは幕か、終わりか

──2018年夏。ワシの見落としにより、今まさに致命的な事態が目の前にあることを身をもって思い知らされた。


終わりだ。終わりが落ちてくる。辛うじて問題を先送りにできるが、結末を変えることは困難を極めるだろう。


全能の鉱石は意思を持ち、願望を叶える神に等しいなにかに変貌した。ソレは自分の母たる島を再び浮上させ、人を修正せんと行動を開始した。


全能の神である彼は、なぜ自分の兄が愛されないか疑問に思った。自分のように親の期待に答えようとする兄への両親が取る態度に違和感を覚えていた。


愛されている。彼はその自覚はあれど、皆の『愛』がどういうものか理解していなかった。本当の意味での『愛』を知らなかった。


愛されない兄へ憐れに思ったのかどうかは定かでない。しかしあの晩、彼が『アハンカーラ』を通して兄を護り、出迎えた感情を前にしてなにかが生まれた。


兄を、兄さんを愛しているのは僕だけだ。血を分けた親にすら愛してもらえないのなら僕が愛そう。愛するのは僕だけでいい。人の皮を被ったケモノなど必要ない。消えろ。愛を知らない肉塊などすべて灰になればいい。


そうであってほしくなかった。あの場にたまたまあった『アハンカーラ』を使い『極小の流星が指定したポイントに落ちる』偶然を導きだしたことで、自分の全能性に気がついたらしい。


ワシらが研究を重ねるうちは強い願望を実現するには複数人が同じイメージを強く思わなくては達成できなかった。やはり仮説は正しかったようだ。


同時に、自分が傲っていたコトを思い知らされる。以呂波のコトを一番知っているのはワシだけだと。そうではなかった。子供を一番見ているのはいつだって同じ子供なのだ。


アイツは、嘉留太は悪くない。俺がすごくないからだ。だから誉められないだけなんだ。そう口にしているのを覚えている。


以呂波は一度だって嘉留太を恨むことなどなかった。誰かに認められなかったが、誰かを憎むことのなかった兄への愛が、最悪の筋書きが綴られる切っ掛けとなったのだ。


ワシは彼と相対して始めてすべてを知った。そう遠くないうち、大体10年以内に例の隕石の島を中心地にして地球を超強力な新種のウィルスが襲う。


彼の願望通りならば、必要な動植物だけを裁定する特殊なウィルスで、適応できなければ高速で腐り死ぬ。


もし仮に生還できれば、その個体は種としての機能が大きく拡張されるだろう。爆発的な頭脳の成長、肉体の耐久性をはじめとするスペックの著しい底上げなど挙げればキリがない。


夢物語ではない。理想を実現する鉱石で作られた子が基を同じとするモノに願う。そうすることで本当に拡散するのだ。


生存確率は彼の思惑通りなら3%を下回る。これを防ぐ手だてはない。だが先送りにはできる。願望を持つ嘉留太を殺害すれば、或いは。


だが、その手段だけは取れんかった。不可能ということもあるが、子殺しなどワシの手にはできなかった。


そんな時であった。ワシは夢を見た。まさに天啓だった。タイムマシンに乗って時間という壁を越えて行く。そんな内容だった。


荒唐無稽には荒唐無稽。厳重な警備が敷かれた島に赴いた。しかし強く願った結果、ワシの思惑とは大きく外れた道を進んでしまった。


気がつけば、空は恐ろしく広く、そして空気からは淀みを一切感じない清らかな潮風が吹き抜けていった。


どういうことかはわからない。過去に飛べと願った筈が、ワシはどうやら文明の火を感じ得ない世界に飛んでいってしまったようで、当初の目論見は見事に妨げられる結果となった。

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