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世紀末を旅しよう  作者: 隼理史幸
未来は灰と深緑に彩られる
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とある世紀末の記録

ワシの名は亀成四十八。この記録を、心ある者への警告として遺すコトとしよう。


ワシは、とんでもないものを掘り起こしてしまったのかもしれない。そう思った時点で、すべては遅すぎた。


かつて何処かの天才は地球を割ってみせると吹聴した。ワシの発見したモノは、その荒唐無稽な理論を現実に変える事すらできてしまう。


──時は1989年。暑い夏の頃だった。海辺でワシはとある拾い物をした。見てくれはピンポン球程度の大きさの黒い石ころだがそれはいたく綺麗な石で、ちょちょいと加工してアクセサリーにしてみた。それが大変なモノだと気付かずに。


ワシがその鉱石の可能性に気が付いたのは、それから数日後のコトだった。ワシの身に事故が降りかかったからだ。


ワシはその時確かに踏切で電車に跳ねられたはずであった。しかしワシは全くの無傷で、それどころか事故が起きたことすら無かったことになっていた。


違和感を覚えたワシは、ひとつの可能性を示唆した。その未知の鉱石はワシの、人の願望を叶えるのでは、と。


ロマンチストであると自称するワシだが、正直に言って自分でも世迷言と思う。しかし、そうでなければ説明がつかぬのも事実であった。


ワシは自分をはじめとする知人の学者と共同で十年に渡る調査を繰り返し、とある島を発見した。地図にない、衛星からも見えない孤島。怪しい要素が揃い役満だ。


準備を整え仲間と共に島へ上陸すると、そこは地球の歴史から見ても『バグ』としか言えない場所であった。


どれ程昔のモノかは不明だが、その島は地球上に存在するどの物質とも違う成分でできた、外宇宙から飛来した隕石の残骸が孤島としての形になったようだ。


ワシの拾った石ころと同じ材質でできた事を確認すると、やはりあれはこの島の欠片であると結論付けられる。


調査のために積み込んできたスパコンをはじめとする機材でワシらは調査を進めるうちに、恐ろしいコトを突き止めてしまう。


それは隕石の島を構成する鉱物は、知性体─ひいては人間の意思や願いをくみ取り、概念を与えることで自らを変容させる性質を持っていたのだ。また帰ってきては与える概念の規模と鉱石側のサイズによってその実現性が変動することも判明した。


ワシは、この鉱物を『アハンカーラ』と名付けた。確かサンスクリット語であったか。兎角、これは非常に危険なシロモノだ。


体験をもとに例とするならば、ワシの拾ったピンポン球サイズなら『死にたくない』ととっさに願った為に、その要因たる『事故』を無かったことにする偶然を造り出す程度である。


だがもし、それ相応の大きさの鉱石に概念を与えたのであれば。それこそあらゆる物理法則や因果を完全に無視した無敵の願望達成機に変貌し得る。


手に余る。少なくともワシはそう判断した。人の手には過ぎた力だ。故にワシらは島に願った。「海に沈め。二度と地上に姿を現すな」と。


これですべて終わりだ。この神に匹敵する全能は、誰にも知られず葬られた。そう思っていた。だが、そうではなかったのだ。ワシの目は仲間への信頼という霧で耄碌していたのだ。

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