少年は知らない閑話 7
「はぁ~、エエのう。さすがのたわわやで。これで1週間はイケるでぇ」
「うう、もうお嫁に行けない…。貞操は無事なのに…心が…」
ツヤツヤテカテカの変態…じゃなかった、ジュウくんとは対照的に死んだ魚のような目ですすり泣くモンジュ。心なしか自慢のドリルヘアーもふにゃふにゃに萎れたようになってる気がする。
「で、なんの話やったっけ?」
「ううう…わかったわよ。吐けばよろしいのでしょ…」
流石に可哀想な気もするけど、まあ、よしとしよう。モンジュはズタボロのメンタルで語り始める。
「ええと、あの鉱石のコト、ですわね…。本来は秘密にしておかなくてはいけないのですが…」
口を濁すモンジュに対し、まだ理性が蒸発したままの変質者が手をわきわきと気持ち悪い動きをすることで「ヒッ!」と彼女を脅かして続きを話させる。
「…ざっくりと言いますと、貴殿方が話題に上げていたアハンカーラ鉱石とは、『概念』を与えることでその性質を変える万能の鉱物なのです」
「『概念』、だと? 獅子王、どういう意味だ?」
「例えるなら、鉱石に『お前は爆弾だ』という概念を与えると、本当に爆弾にその性質を獲得してしまうのですわ」
はぁあ⁉ 思わず声が出てしまった。そんなコト有り得てしまうの?
「無論、手に収まる石ころ程の体積では大した概念を与えたとしても極めて小規模、ささやかな偶然を起こす程度ですわ。先程の例で考えれば即席のビックリ箱が精々、といったところかしら」
「ちょう待ちい。石ころ程度やショボいゆうんなら、そこそこの体積、例えば、そう、でかいバイク一台分ならどないなる?」
「…奇跡のひとつやふたつ、起こすコトなど造作もないでしょう。先の爆弾の例えならば、旧人類が造り出した忌むべき兵器、核爆弾ほどの規模なら容易く叶えてくれるでしょう」
まゆつば物、というのが正直な感想だった。にわかには信じがたい。けどモンジュはウソは言っていないようだし。
「理屈はようわかった。せやけど、別の疑問が出てきてもうたな」
「別の疑問?」
「せや。ワシの見立てでは、あのバイクは例の鉱石100%で作られとったハンドメイド品や。ならどっかでその鉱石を用いて作ったヤツがおるはずや。モンジュの一族がひた隠しにしとる存在でな」
…言われてみれば確かにそうかも。ジュウくんの指摘どおり、秘匿しているような危険なモノをバイク一台分まるまる使うなんて。
「どこで採掘できるか、までは私どもにも伝えられておりませんが。『ファミリア』ならばあるいは、といったところでしょう」
──『ファミリア』。またその名前。旧人類のあらゆる技術を集積、管理する存在。確かに知っているかもしれない。知っていてライブラリーから鉱石の存在を消しておいたと考えれば自然かもしれない。
この世界のコトをなにも知らない、旧人類の男の子。秘匿されていた鉱石、それを用いた文明の利器。『ファミリア』。なんだろう。ボクの中で何か一本の線が繋がるような感覚がある。
しかしそれがなんなのかはボクにはとんと見当がつかない。そのつながりの名前は、なんなのだろうか?




