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世紀末を旅しよう  作者: 隼理史幸
未来は灰と深緑に彩られる
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少年は知らない閑話 6

そういえば、とでも言いたげにジュウくんが手をポンと叩き口を開く。


「ん? そーいやあの頃不思議なこと、起こらなかったか? アノ、バイクの一件や」


バイク。そういえば、そんなことを話していたっけ。眉唾物だったから半ば聞き流していたけれど。それとは対称的にセンセはそれを聞いてどこかピンときた、って顔になる。センセはしきりに手元のデータを見返し始めたと思ったら「やはりか」と一言呟く。


「獣之助、この快方に向かった頃のこと、答えてくれるか?」

「? エエけど。…えっと、丁度アイツの跨っとったバイクのコトを調べようとしてたときや。アレ急にバーッと輝いたかと思ったら変な光が出てきて一目散にすっ飛んでいったんや。」


うん。だいたいそんなことがあったのは確かだった。あらためて聞くと本当に意味不明だよ。


「その、バイク…だっけ? それが輝きだしたのがなんか関係があると見ていいの?」

「せや、不自然に欠落した部分や詳細不明の材質で作られとったり、らしいとこは散見されるんやけど、確証がないんよ」

「…そういえば、アレの構成パーツが普通の鉄ではないと申していたな。なんという名だったか?」

「? 確か、アハンカーラ鉱石や。〈ファミリア〉のライブラリーを閲覧しとったが『希少な鉱石』というコトしかわからんかった」


その話を聞いていた簀巻きのモンジュが急にだらだらと汗をかき出していた。…なんか、アヤシイ。モンジュは良く言えば素直、悪く言えばアホの子だから何かやましいコトがあると決まって滝のように流れ出た汗で鬣がムンムンとするのだ。


「モンジュ。なんか知ってるんじゃないの?」

「ふぁい⁉ えー? ナンノコトデスノ? ところで暑いですワねオホホ…」


超絶片言なうえにわかりやすすぎ。これは何か知ってるのは火を見るより明らかな模様。よし、仕方ないけど禁じ手だ。


「ジュウくん。やっておしまい。」

「え? エエの?」

「構わん。やれ」


ボクは力強く指を立てる。さあ、婬獣よ。普段はセーブさせている野生を解放してしまいなさい。


「え? ホンマエエの?」


センセにも一応確認を取るジュウくん。当のセンセはコンピューターの操作に夢中で聞こえていない─素振りだった。黙認する、という意図のようで。


「─ガッテン承知。ほな、いくで?」


タガが外れ、それはもう常軌を逸した変態の顔になるジュウくんに、戦慄の表情になるモンジュ。蛇に睨まれた蛙というのはこういう顔なのかな?


「おおおお、お止まりなさい! あなた方も何をしているのです! 早くその野生解放した変態を止めなさい!」

「安心してモンジュ。食われそうになったら止めるから」

「それはセクハラならオーケーというコトやな! よっしゃやったるでぇ!」

「来るな婬獣! ドクターァァァ!あの阿呆を即刻去勢なさいッ!」

「すまない。なんと申した。拙僧は最近耳が遠くてな。…赦せ」

「この生臭坊主うううゥゥゥ‼」


簀巻きの状態で炎を吐いて変態の迎撃を試みるモンジュ。ボクはそれを彼女の口を強引に塞ぐことで封じる。


モゾモゾと無駄な抵抗をするモンジュに、欠片程しかなかった理性が一時的に完全蒸発したジュウくん、いや、質の悪い変態が、水泳とかいう昔あった競技の飛び込みのポーズをとりながら一気呵成に迫り来る。


「いただきまァァァすッ‼」

「ふぼぉぉおぉぉぉぉ‼」


コンピューターが羅列する部屋に、獅子の悲鳴(?)が木霊した。

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