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世紀末を旅しよう  作者: 隼理史幸
未来は灰と深緑に彩られる
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少年は知らない閑話 3

「あ、貴女も何か言いなさい! お、おかしいと思いませんの⁉ 『タタリ憑き』を匿うなど正気の沙汰とは思えませんことよ⁉」


へっぴり腰のモンジュが言ったことに、ボクは少し首をかしげる。『タタリ憑き』? いったいなんのことを…?


「センセ、モンジュは何を?」


ボクが問うと、センセは小さく溜め息を吐きツルツルの頭をさすりながら口を開く。


「はぁ、モンジュ。貴様やはりこの少年から発する『臭い』だけで判断したな?」

「そうですわ。わたくし達、獅子王の系譜は代々今この星に生きる『新人類』に対する害獣『タタリ憑き』を抹消することを至上の目的とする。故にわたくし達には『タタリ憑き』かそうでないかを嗅ぎ分ける鼻とそれを滅却する炎を与えられているのですわ」

「や、それはボクらに限らずみんな知ってることだけど…え、ちょっと待って。それってつまり…」


ボクはベッドに横たわる彼の方に目をやる。…モンジュは正直言って腹芸できるほどは器用じゃない。ボクらに向けて言ったことホントだろう。センセはより一層深い溜め息を吐く。


「はぁ…、やはりか。獅子王一族の中で特に力が強く即断即決の君と遭遇してしまうことは薄々案じてはいたが…」

「どういうことセンセ? 『タタリ憑き』ってあの、全身が異様に膨張していたり鼻がネジ曲がりそうなキツい臭いに覆われてたりして、あと肉とか骨が身体のそこかしこが腐敗して剥き出しのあの気持ち悪いあれだよね?」

「そうだ。ノゾミの言う通り、それが今日までに言い伝えられている『タタリ憑き』姿だ。数百年もの月日を経て拙僧らの産みの親たる『神』が抗体を作り出し、我等に授けてくださったおかげで、基本的にそのような姿へと変貌はしない。しかし…」


そこまでのところでセンセが言い淀む。モンジュはそれを見て若干威勢を取り戻しつつ言う。


「そうですわ。ごく稀にあの姿になってしまう者が存在する。放っておけばわたくし達に大きな災厄をもたらす。まさに祟りですわね」

「だから獅子王のような一族が必要になる。で、その『タタリ憑き』を祓える存在だからボクらにそんなデカイ顔してるんだよね?」

「デカイ顔ですって鳥女! 高貴な顔に何てことを言いますの⁉」


急に突っかかってきた簀巻きのモンジュに顔をしかめるボク。そこへ、めちゃめちゃ呼吸の荒い緋色のおかっぱ頭が姿を現す。


「はあっ、はあっ。ちょうノゾミちゃん! ワシ置いてきぼりとかなくない?」

「あーごめんジュウくん。急いでって言われたから余計な荷物持ちたくなかったんだ」

「…え? ワシ余計な荷物扱い? 酷ない?」


肩を落としつつも、ジュウくんは部屋の辺りを見回して何があったかの情報収集と整理していた。しばらくして、彼はセンセのもとへ近づき訊く。


「ちょうセンセー、何であないな肉食系おっぱいが簀巻きにされておるねん? ちょっくらあの双丘堪能してもええんか?」

「…やめておけ。今日のディナーにされてしまうぞ?」


やれやれと頭を抱えるセンセの言葉に、両手を変態みたいにわきわきさせながらもそれを聞いて「ちぇーっ」と心底残念そうに言うジュウくん。──いやいや、ジュウくん来て早々なに発情してるの?


「ドクター! いったい何の話合いをしているんですの⁉ 新しい拷問でして⁉」

「貴様、勘違いするな。拙僧は確かに必要とあらばメスで患者の身体を切ることもあり、よからぬことをする輩にお灸を据えることはあれど拷問など趣味ではない」

「せやせや。センセーは超がつくほどの善人やで。そないなことするわけあらへんやろ。アホやな~モンジュはんは。オツムへの栄養が全部おっぱいに行っとるんと違う?」


そうジュウくんはフォローと煽りを同時に行いつつも、モンジュの肢体を舐め回すようにようにじっくり観察するのも忘れない。


「まあワシはこんなチャンス滅多にあらへんからその双丘について研究しとうだけや。じっとしとけい。すぐ終わるから」

「ジュウくん。ホント相変わらず最低最悪の婬獣だよね。無駄にインテリなのが尚最低さに拍車掛けてるし」

「ちゃうでノゾミちゃん。ワシは飽くまでエロの探求をしとるだけや。ケモノとしては当然の行動やで?」

「うん、ケモノとしては当然かもしれないけど、理性のある生き物としては屑にも劣る限りなく最低な行動だよね」


そう言いながら、ボクは片手間に髪の翼でジュウくんをしばき倒し鎮圧する。「あふう」と気持ち悪い悲鳴が聞こえた気がするが、無視した。

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