獅子は怒りのまま吠える
「やりやがりましたわね!この〈タタリ憑き〉風情が調子に乗ってぇええっ!」
怒号が背後から轟く。おもむろにミラーで後ろの様子を見ると、シシオウが四足歩行で怒り狂った表情をしながら追撃を仕掛けてくるではないか。
「野郎!逃がしませんことよぉおおおおおお‼」
今度は口から炎の玉を連射してきやがった。咄嗟にコンドルくんを蛇行させる。狙いは甘かったのか、掠める程度で当たりはしなかった。
とはいえギリギリなのは変わらないため、炎の玉が飛んでくる度ケツの毛が縮み上がる感覚に見舞われる。
マシンのパワー差故か、シシオウとの距離が次第に離れていく。このままなら振り切れる筈だ。
「小童め!調子に乗るなぁあああああ‼」
シシオウのヤツ、今度は俺の方ではなく別の方向へと炎の玉を連射し始めた。
「?なんだ、どこを狙って…」
そこまで言いかけて、前方を見たときにその真意に気がついた。それは──
「なっ、野郎生えてる樹木や廃ビルを狙ってやがった!?」
気づくのが少し遅かった。既に火を帯びた古いコンクリや樹木の破片が火山の噴火した際に舞い散る土石流のように大量に降り注ぐ。
「マジかよっ…あっぶな!」
飛来する火を帯びた大小様々な物が俺を追い詰めようとする。ビビるあまり、それらを避けようと少しスピードを緩める。──が、
「もらいましたわァアアアアアア!」
…スピードを緩める瞬間を狙っていたのか、シシオウの口からさっきより特大の火球が撃ち出される。まずい、反応が遅れた。これは、
「まずっ…!」
特大の火球はコンドルくんに直撃し、その衝撃で俺の体は投げ出され、宙を舞う。
体が宙を舞うの間、時間の流れがゆっくりになった気がした。──が、直後に激しい痛みが襲いかかる。何か、硬い壁に体を打ち付けたようだったことに気がつくのに少し時間がかかった。
「がっ…!あぐ…っ!」
頭も打った様で、ズキズキと痛む。流れ出た血が眼に垂れ、片側の視界が赤く染まっていく。
くそ…身体全部、特に頭が痛い。おかげで身体が言うことを効かない。ただ視界に映る映像をただただ見続けているだけだ。
コンドルくんは炎上し、両の手から炎をたぎらせる獅子の令嬢が一歩ずつこちらへ詰め寄って来るのが見える。
頭のズキズキが増してくるにつれ、視界がぼやけてくる。ああ、なんか前も似寄ったことがあった気がする。とはいえ今回は意識が無い方が幸せなのかもしれないのかもな…。
「死に、だぐ、ねぇ、な」
本心が漏れる。正直、今の俺には心残りがある。厭だ。まだ、やらなきゃいけないことがあるのに。
「んなきゃ…あやま…きゃ…」
うわごとのように繰り返しながら、意識があやふやになっていく。
ふと、耳に何か、チャリン、という音が入ってきた。なんだっけな、この音?考えがまとまらない内に身体の感覚がよくわからなくなっていった。




