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お宅訪問

五日後、アルシーはシルベリータの城、マーレ城を訪れていた


「アルシー! ようこそ私の家へ!」


「シル! 会いたかったよ!」


「こ、これはジャンヴァルディ候、このたびはまことに……」


「何を畏まっておる、前々から、そのような態度は止せと言っておるだろうに」


「で、ですが」


「お父様、アルシーを私の部屋に案内してくるね」


「あ、ああ」


「父上、行ってきます!」


「楽しんでおいで」


「はい!」


「アルシー、行こ!」


「うん」


アルシーとシルベリータは二人で手を繋ぎながら駆けて行った


「さてと、ヴァレンス、お前いつまで俺に気を使うつもりだ」


「先輩に失礼な事言えませんよ……」


ヴァレンス・イル・フォンダー


彼はシルの父親で、アルシーの父、ドルイ・ラ・ジャンヴァルディとは同じ学園を卒業した者である


二人の関係は先輩、後輩の関係で年の差はわずか2歳である


彼がここまで下手にでる理由は、この地位まで引き上げてくれたのがドルイであるということである


ドルイにとってはかわいい後輩なのだからこれぐらいは当たり前だと考えているのだが、当事者にとってはこれほど助かるものもない


それに前に述べたように支援も貰っているのだ、簡単には態度を崩せないのはこういったことによる


「娘たち同士うまくいきそうじゃないか、親の俺たちがこんな関係だとあの子たちにも良くないと思わないか?」


「し、しかし」


「ごちゃごちゃ言っていると支援を打ち切るぞ」


「な!」


「俺に引け目を感じるな、もっと強欲に己の利益を考え自領を富ませることだけを考えろ! それが領主としての役目だ。 利用できるものは利用する、それでいいではないか、俺は好きでお前に支援しているんだぞ」


「……先輩、わかったよ」


「よし! じゃあ今夜は共に飲もうではないか! 娘も泊まりたいと言っていたからな!」


「え! ちょっと待ってくれ、準備が!」


「そんなものはいらん、娘はお前の娘の部屋で寝るだろうし、俺はお前を寝かせるつもりは無い」


「本気ですか!」


「ああ」


「だれかいるか……」


「はは」


「今日の晩餐と明日の朝餉は二人分増やしておけ」


「承知いたしまいた」


アルシーのお泊りが決まった瞬間である



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シルベリータの部屋


マーレ城の二階の一番大きい部屋であった


「ここがシルの部屋なのね!」


「うん!」


(すごく、かわいらしい部屋だな)


ベッドは天蓋つきのかわいらしいものでカーテンのように薄いきれいな布が垂れ下がっている


そして小箪笥の上にはかわいらしい人形が所せましとおかれていた


「今度の私の誕生会、来てくれる?」


「もちろんよ!」


「やった!」


子供はこういう当たり前の事でも素直に喜んだり悲しんだりするものだ


(色々話したいが何はなそうかな)


「ねえ、アルシーは5歳になったから魔法のお勉強始めるの?」


「そうだよ!」


「どこで教えてもらうの?」


「父上が言うには家に偉い人を呼ぶって言ってたよ」


「そうなんだ……」


「どうしたの?」


「私は王都の学校に入れるって言われたの」


「え! じゃあ……」


「うん、離れ離れになっちゃう……」


「そんなぁ!」


(まじかよ! またボッチ逆戻りかよ!)


「でも、それまではいっぱい遊ぼうね!」


「うん! そうだよね、悲しむのはその時でいいよね」


二人の少女(?)はその後お人形遊びやら、外でお花詰みやら、いろいろと遊んだのだった



=====================================



ヴァレンスの書斎



ドルイとヴァレンスは玄関での会話ののちこの部屋に移動して、早々とワインを片手に語り合っていた


「何? では、シルベリータは王都にやるつもりなのか?」


「ドルイには、この家の財政状況は筒抜けじゃないか……」


「そういうことか」


「魔法使いを雇うだけの余裕がね……」


「ならば、俺が呼ぶ魔法使いについでで教えてもらえばいい」


「え?」


「そうだ! それがいい! ちょうど来月の末からだ、お前の娘の誕生日も過ぎている。 俺の家に学びに来ればいいのだ」


「ちょっと待ってくれ! それはいくらなんでも」


「俺の娘の悲しむ顔が見たくないだけだ」


「……」


「何、理由を聞けば実にあっけないぞ」 


「何なんだ?」


「俺の嫁だ」


「え?」


「お前も知ってるだろ? 俺の嫁は王都の王立大学の名誉教授なんだぞ」


「そういえば……」


「だから実質費用は無用なのだよ」


「そういうことなら、お願いするよ」


「ああ、任せておけ」


言い忘れていたが


ドルイは学生時代、かなりやんちゃな人間であった


現在、貴族としての彼の顔は威厳が凄く、まさしく王国の権力者として振る舞うに値するものであるが、ヴァレンスのように学園の古馴染みの前では昔の口調に戻る


そしてアルシーの知らないところで彼にとってうれしい結果が生まれていたのだった


=====================================



マーレ城大食堂



夕方になり、屋敷の者の夕飯の時間になった


アルシーとシルベリータはそれを告げに来たメイドと共に食堂にやってきた


彼女達がやって来たとき、既にアルシーの父とシルベリータの両親は席に着いていた


「あ、お母様!」


「シル、今日はどうだったかしら?」


シルベリータとアルシーは席に着きながら話を聞いていた


「すごく楽しかったよ!」


「ふふ、アルシーちゃんもありがとうね」


「あ、はい!」


「あら、自己紹介がまだだったわね、私はシルベリータの母親のマリナよ、よろしくね」


「あ、私は、ジャンヴァルディ候の長女のアルシーです、よろしくお願いします!」


マリナ・イル・フォンダー


ヴァレンスの嫁で元々は後宮を警備する王妃親衛隊の隊長を務めていた


何故、ヴァレンスと結婚したのかは謎である(そもそもどこで知り合ったのか)



夕飯が始まろうとしていた

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