お友達
彼が(健全な男として)正常であるかどうかはこの際どうでもいいことなのだが
(シルには側仕えはいないのかな? 今日一緒に遊んだ時には一度も見なかったけど……)
実際のところシルベリータには側仕えはいる、だが今日はアルシーとシルベリータが楽しそうに遊んでいる空気を壊したくないと思った彼女たちはアルシーとシルベリータを二人きりにしていたのだった
ちなみに、アルシーたちがお風呂に行っている間にベッドメイキングは完了している
「アルシー起きてる?」
「起きてるよ」
「お父様から、聞いたのだけど、私、アルシーのお家で魔法を学ぶことになったの」
「え?」
「お父様と、アルシーのお父様が話をつけてくださったらしいの」
「ほんとう! やったね!」
「うん!」
その講師が自分の母親だということだというのにはアルシーはもちろん気づいていない
アルシーにとっては実は母親でない方が彼の心境としてはよかったのだがこれの理由は後でわかるだろう
「ねえ、シル」
「どうしたの?」
「ん、何でもないよ、呼んでみただけ」
「? 変なアルシー」
「いいじゃないの、じゃあ、お休み」
「うん! お休み!」
(友達になってくれてありがとうな、シルベリータ)
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翌日、例にもよって無言の朝食を食べ終えた後、アルシー達は帰宅の途に就いた
「シル! また来るよ!」
「待ってるね! 次は誕生会かな?」
「多分そうだと思う」
「じゃあ、またね!」
「うん! ばいばい!」
そしてジャンヴァルディ候家の馬車は動き出した
「アルシー、楽しかったかい?」
「うん!」
「それは良かった」
「父上も水臭いです」
「ん? どうした?」
「シルが私の家で魔法を学ぶなんて聞いていませんでした!」
「はは、そのことか、何、昨日決まったことなのだよ」
「え!」
「フォンダー候がシルベリータを王都にやると言っていたからな、それなら我が家の講師に教えてもらえと提案したのだよ」
「そうなんだ」
「不服なのかい?」
「ぜんぜん! 本当にうれしいよ!」
すごくかわいらしい笑みを浮かべているアルシー
「そ、そうか」
「?」
(父上の顔若干赤くないか? まあいいけどな)
ドルイはこの時のことを後にこう話したという
『アーシャとは違う意味で小悪魔のような笑みであった』と
なお、この詳細な話を記載していたと思われるこの日のドルイの日記は何者かの手によって焼却されたとされる




