オンミツ地区忍術競技会
その日、ヒロはとても気持ちよく目を覚ました。
今日は、オンミツ地区忍術競技会の決勝トーナメントが行われる。
昨日の予選で、ヒロとマリーは順調に勝ち残っていた。
大会参加者はオンミツ地区在住者、学校機関に通う学生、大会委員会の推薦者、あとは一般からの参加者に別れていた。
昨日行われた予選では、総勢200名以上の腕自慢の忍者達が集まった。
ヒロとマリーは幸い予選で戦うことはなく、どちらも無敗で勝ち上がってきた。
そして最終的に、6名の選手が予選を勝ち上がった。
今日の決勝トーナメントは、予選を勝ち残った6名と、シード選手2名を合わせて、次の8名の選手で行われることになった。
オンミツ地区 忍術競技会
決勝トーナメント参加者
・ヒロ オンミツ高校3年
・マリー オンミツ高校3年
・プロセシオン オンミツ体育大学教員 昨年大会優勝者
・アンジェラ オンミツ体育大学教員
・ケイト オンミツ体育大学2年
・フランキー 一般参加
・ジャスティン 一般参加
・シャドウ コウガ忍術大学4年 招聘選手
プロセシオンとアンジェラはオンミツ体育大学、忍法研究科の若き指導教員だ。
普段は大学の実技クラスの指導を行っており、実力は折り紙付きだった。
特にプロセシオンは去年の大会優勝者で免許皆伝の腕前を持ち、体力、剣術、忍法とも高みの境地に達している。
去年、優勝しているため、今回はシード選手として、決勝トーナメントに参加する。
アンジェラはオンミツ体育大学では主に剣術指導をしている。
WANTEDハンターになる前の、マリーの指導教官だ。
マリーと似た戦闘スタイルを持ち、俊敏な動作で敵を翻弄して、剣で攻撃する事を得意とする。
ケイトはオンミツ体育大学に在籍する学生だ。
レプティアンの女性でがっちりした体格をしている。がっちりした体の割に動きが素早く、敵の懐に潜り込み強力な打撃で攻撃する。
大学内の試合では常に上位に入る強豪だった。
フランキーとジャスティンは一般参加の決勝進出者だ。
この大会は毎年行われているが一般参加者で決勝まで残るのは珍しい。
それも今回は並み居るオンミツ地区の強者を押さえて、二名の決勝進出者がいる。彼らはどちらも初参加だった。
一般参加のひとりめ、フランキーは華奢なレプティアンの男性だ。
一見弱そうに見えるが、大会予選の試合内容では、敵の攻撃をひらりひらりと柳のようにかわし、柔術で相手にダメージを与えていた。
一般参加のもうひとり、ジャスティンは小柄なヒューマンの男性だった。
選手登録の記録ではたったの11歳。男性というよりは男の子という感じだ。
小学校高学年の年齢だが、予選で見せた試合内容は老練な忍者マイスターのようだった。
目つきは優しげだが、動きは俊敏。剣術も忍術も質が高く、常に相手を圧倒していた。
予選の間は、相手から一度もダメージを受けなかった。
予選の中でダメージを受けなかったのは、ヒロ、マリーそしてジャスティンだけだった。
最後はシードで決勝トーナメントに参加するシャドウ選手だ。
この選手はコウガ忍術大学の4年生で招聘選手として参加している。
コウガ忍術大学は惑星タイタンにあり、銀河全体でも有数の忍者学校でオンミツ体育大学と双璧をなす。共に天の川銀河忍術選手権で入賞する常連校だ。
シャドウはコウガ忍術大学でトップクラスの学生で、常に大学代表チームに選抜されるほどの実力者であり、その名前はオンミツ地区の人々にも響き渡っていた。
もの静かな性格で、攻撃、防御とも正確無比。忍法はその名を意識してか、影に関係するものが多い選手だ。
決勝トーナメントではくじ引きで対戦相手が決められる。
ヒロはマリーといきなり当たらないよう祈ってくじを引いた。そして1回戦の対戦相手が決まった。
幸運にもヒロはマリーに当たらなかった。
仮にヒロとマリーが順調に勝ち上がれば、二人は決勝で対戦することになる。
決勝トーナメント対戦表 一回戦
第一試合 マリー VS プロセシオン
第二試合 アンジェラ VS フランキー
第三試合 ヒロ VS ケイト
第四試合 ジャスティン VS シャドウ
くじ引きが終わり、トーナメント表にそれぞれの名前が書き込まれた。
大会はオンミツ体育大学の広大な運動場を使って行われている。
客席は観客や関係者で満員だった。ハットリ老も特別審査員として競技を見ている。
制服姿のビューティはヒロのセコンドとして競技場に入り、常にヒロの側にいた。
いつアトロスの攻撃があるかわからないからだ。
ドラゴンブレードとアマリリス正宗も準備してきている。
大会主催者による進行説明のあと、第一試合のマリーとプロセシオンの対戦が始まった。
マリーとプロセシオンは、深々と礼をして競技場に入った。
プロセシオンは去年の優勝者であり、マリーは過去に2度この大会で優勝している。二人とも優勝経験者の好カードだ。
使用する武器と防具は規定があり、試合前に審判員によって確認される。
武器は殺傷力を制限したもののみ使用可能で、防具は駆動力があるものは使えない。
よってヒロがミス・アリスから貰ったNJプロテクターは使えない。
純粋に自分の筋力を使い戦うことが前提になっている。
マリーは高校の実技クラスで着ている忍者スーツを着ていた。
プロセシオンも大学の実技指導で使っているスーツだ。
「はじめ!」
審判のかけ声とともに対戦が始まった。
マリー、プロセシオンとも忍び足で、相手の間合いを計りながら攻撃のチャンスを伺っている。
二人の距離が徐々に近くなり緊張感が高まる。
マリーがまず動いた。相手の懐に飛び込み、背中の刀を抜き袈裟懸けに斬りつける。
プロセシオンはバク転でかわし後方にジャンプ。連続して懐のクナイを2本、マリーに向かって投げつけた。
マリーは飛んできたクナイを刀で弾き飛ばす。そのクナイの後ろからプロセシオンが刀でマリーに斬り掛かる。目も止まらぬ連続攻撃だ。
マリーはその攻撃を刀で受け止め、二人は鍔迫り合いに入った。
力で勝るプロセシオンが、じりじりとマリーを押す。
マリーがたまらず後ろにジャンプし再び間合いを計る。
「やるようになったわね。プロセシオン・・」
プロセシオンはマリーの十歳近くも年上の兄弟子だが、過去の戦いでは、マリーに一度も勝ったことはなかった。
それほどマリーの実力は中等部のときから圧倒的だったのだ。唯一、マリーの力に拮抗していたのがヒロだ。
しかし、プロセシオンはヒロ、マリーが不在だったとはいえ、去年の大会では並み居る強豪を見事に倒して優勝した。
数々の実績と真摯な修行姿勢、高潔な人格、優れた剣術、忍術、高い指導力が総合的に評価されオンミツ地区の忍術評議会で免許皆伝の称号を与えられていた。
「マリー、君との戦いを楽しみにしていた。私の成長を見てほしい」
プロセシオンは、そう言うと次の行動に移った。
十も年下の少女にはなかなか言えない彼らしい言葉だ。
プロセシオンは刀を背中にしまい、人差し指を立て上下に印を結んだ。
「忍法、幻身!」
そう唱えると、プロセシオンは一人が二人になり、二人が三人になって、最後は四人に分身した。そして四人が一斉に刀を抜きマリーに斬り掛かる。
「くっ!」
マリーは一人目の刀を弾き、二人目の刀を避けた。三人目の刀がマリーの忍者スーツを切り取る。そして四人目はマリーを捕らえた。四人目のプロセシオンの刀が、マリーの右肩を切り裂いていた。
マリーは切られた肩を手でおさえる。傷口から血があふれる。
すかさずマリーも反撃にでる。マリーも印を結びすばやく唱えた。
「忍法、幻身返し」
マリーの姿もプロセシオンと同じように二人になり、三人になって、最後に四人に分身した
それぞれの分身がプロセシオンの分身の相手をする。
刀と刀が4カ所でぶつかり合い火花を散らす。
プロセシオンの剣技もすごいが、マリーの方が優勢を保っている。
一組の戦いで、マリーの剣がプロセシオンの分身をしとめた。そして分身がよろよろと倒れその場から消え去った。
「く!」
プロセシオンは残った3名の分身を合体し、一人のプロセシオンに戻った。
そしてまた、プロセシオンは印を結び、次の技を繰り出す。
「忍法、炎の舞!」
プロセシオンの口から火炎放射器のように炎が飛び出て、周囲を焼き尽くす。
マリーもたまらず四人から一人に戻った。
マリーはジャンプして攻撃をかわしながら、次の攻撃に移った。
刀を縦に持ち右手を添えた。そして刀に気をため「雷撃の術」を繰り出す。
マリーが刀を振り下ろすたびに、次々に高エネルギー弾が発射された。
試合用の刀を使った術とはいえ、マリーの雷撃が当たれば大怪我をする。
プロセシオンは必死にマリーの放つ雷撃を避けた。
しかし、マリーは手を緩めない。必死に雷撃を避けるプロセシオンの動きを読み、その懐に飛び込んだ。そしてついに試合は決した。
マリーの必殺の一撃がプロセシオン頭を一刀両断、したかに見えたが、マリーは額の寸での所で刀を止めていた。
マリーの勝利を示す審判員の赤い旗が勢いよく上がる。
「まいりました・・」
膝を付き肩を落として、うなだれるプロセシオン。
二人は競技場の開始位置まで戻り、礼をしてその試合は終わった。
「すごいでガスー! マリー!」
観客席で見ていたゴンザが興奮して立ち上がり、大声で叫んでいた。
FR550が頭のLEDをピカピカさせて、必死にゴンザを座らせようとしていた。
「おめでとう。マリー」
選手席に戻ってきたマリーにヒロが声をかける。
「まあね、何とか勝ったわ」とマリー。
そして怪我の治療のためマリーは医務室へ入っていった。
休憩時間に荒れた会場が片付けられたあと、第二試合が始まった。
第二試合はアンジェラとフランキーの対戦だ。
アンジェラは決勝に合わせ、派手なピンクの忍者スーツを着て競技場に入場してきた。
手甲や脚絆には、ワンポイントのかわいいキャラクターが描かれている。
あと作戦のうちなのか、胸の谷間や、太ももがあらわで妙に艶かしい。
ウブなヒロには、ちょっと正視しにくい格好をしていた。
ハットリ老は、心なしかにやにやしている。
対戦相手である少しオタク系のフランキーは、あごを突き出し、充血した目を見開いて、アンジェラを舐め回すように眺めていた。相当、萌えている様子だ。
戦ってもいないのに鼻息が荒く肩で息をしている。
両者が開始位置につき礼をする。
フランキーはアンジェラを凝視したまま、腰だけを折って浅い礼をしていた。
アンジェラは、フランキーのその様子を訝しげに見ていた。はっきり言って気持ち悪い。
そして審判の「はじめ!」の合図で試合が始まった。
始まってすぐフランキーの目つきが変わった。血眼だった目は冷静さを取り戻していた。
アンジェラは予選の様子を思い出していた。
「そう、一見弱そうに見えるけどあなどってはダメ。防御、攻撃とも相当の手練だったわ」
アンジェラは重心を低く構えた。胸元から谷間が覗く。
フランキーは間合いを取りながらアンジェラを伺っている。
そういえば予選では一度も自分から攻撃した事はなかった。常に相手の攻撃を待ち、受け流してカウンターでダメージを与える勝ち方だった。言うなれば合気道に通ずる戦い方だ。
しびれを切らしたアンジェラは、揺さぶりをかけようとフットワークを早くした。
背中の刀に手をかけ、前後にフットワークしながら間合いを詰める。
フランキーは腰の刀に手をかけた。アンジェラが更に間合いを詰める。
お互いの刀が届くかどうかの位置にきたとき、フランキーが前に出た。と同時に抜きがけに斬りつける。
「な! 居合い!」
アンジェラはとても避けきれないと瞬間的に判断し、長い足のつま先で刀の柄を押さえた。
柄先を押さえられたため、フランキーは刀が抜けない。
そのままの姿勢で両者の時間が止まった。
次の瞬間、勝負は決した。
フランキーが刀をあきらめ、懐の手裏剣に手をかけた時に、アンジェラは背中の刀をフランキーの首に振り下ろしていた。もちろん寸止めだ。
「まいった」と言ってフランキーは負けを認めた。
アンジェラは勝つには勝ったが危ないところだった。居合い切りの判断が一瞬遅れたら負けていた。
二人はもとの開始位置に戻った。
フランキーは、開始前の舐めるような目つきに戻って、アンジェラを凝視していた。
「気持ちわるぅ」
アンジェラは礼もそこそこに、そそくさと選手控え室に戻っていった。
「10分の休憩の後、一回戦、第三試合を始めます」
会場にアナウンスが流れる。
ヒロは試合に向け選手控え室で精神統一していた。
次にヒロと対戦するケイトも、選手控え室にいて深い呼吸を繰り返している。
ケイトはヒロのふたつ年上。
二人は幼い頃から一緒に忍術修行に励んできて、昔からの知り合いだった。
これまでの試合では、ケイトはヒロに勝った事がない。
今回、ケイトは念願の決勝進出で、どうしてもヒロに勝ちたかった。
進行係が二人に時間であることを告げる。
「ヒロ、今日は覚悟しなよ」
「そっちこそ」
ヒロとケイトは競技場に入り深く礼をした。
「はじめ!」
開始の合図と同時に、ケイトが印を結び忍法を唱える。
「太古の時代より、暗黒の地に住みし神聖なる鎧竜よ、いでよ我がもとへ」
「・・・召還忍術、竜呼」 ケイトは静かに唱えた。
「なに! ドラゴンが召還できるというのか?!」
ヒロはひるんだ。
これまで何度か召還忍術を見たが、ドラゴンを召還できる相手は初めてだ。
大地が揺れ、ケイトの前によどんだ気が集まる。競技場に嵐が吹き荒れ竜巻が起こった。
竜巻の中で、巨大な影がうごめき咆哮を上げた。
徐々に竜巻が消え去り、その中から黒いドラゴンが現れ大きな翼を広げて空中に飛び出した。
ドラゴンは空を旋回したあとケイトの横に降り立つ。
それはとても美しいドラゴンだった。
光沢のある鎧のような黒い鱗に覆われ、鱗の中心は赤みがかっていて神秘的だ。
巨大な翼は空中での高い運動能力を示していた。
鋭い牙を持つ口からは、ごうごうと炎が飛び出している。
手足のかぎ爪はつかんだ物を何でも引き裂いてしまうだろう。
頭から尻尾にかけて生えている隆々とした鬣。触覚のような口ひげは威厳さえ感じさせる。
鎧竜と呼ばれたドラゴンは鋭い視線をヒロに浴びせた。
ヒロはすくみ上がった。
何とか気持ちを切り替えて必死にドラゴンに斬り掛かる。
ヒロの刀がドラゴンの首を捕らえた。しかし堅い鱗の前にヒロの刀は歯が立たない。
「く、刀はだめか」
ドラゴンは咆哮とともに空に飛び立ち、火炎を吐いてヒロを襲う。
ケイトはその間も印を結びながらぶつぶつと術文を唱えている。
ヒロは炎を紙一重でかわし、同時に「浮き雲」の術で空に飛んだ。
ついにヒロとドラゴンの空中戦がはじまった。
ドラゴンは水を得た魚のように、縦横無尽に空を飛び回りヒロを襲う。
鋭い牙やかぎ爪、そして激しい炎でヒロを責め立てる。
ヒロの動きも遅くはないが、空中では明らかに天空の覇者ドラゴンが優勢だった。
「まずい!」
ヒロは必死に忍法を繰り出した。
朧げの術や、雷撃など、マリーと訓練した術を駆使して攻撃する。
しかしドラゴンはヒロの術など、ものともせず突進をしてくる。
ついにドラゴンのかぎ爪がヒロを捕らえた。ヒロは背中を切り裂かれ激しく出血する。
ヒロはセンスを乱して競技場に落下。地面に激しく叩き付けられた。
「グエェェェーーー」
そこにヒロを食い千切ろうと、ドラゴンが急降下してきた。
ヒロは避けられず胴をくわえられた。ドラゴンはヒロをくわえて空に飛び立つ。
くわえられる瞬間、ヒロは「亀甲羅」の術で、全身を硬化した。
噛み切られるのを必死にこらえている。顔も体も血まみれだ。
ヒロはドラゴンにくわえられた状態で、必死に手を合わせ印を結んだ。
精神を集中し巨大なユニバース・センスのエネルギーを印の中心に集める。
「・・・忍法、超彗星!」
印が光りだし大きくなって、ヒロ自身が巨大なエネルギー体に変わっていく。
エネルギー体となったヒロは、一気にドラゴンの口から飛び出し、大きく旋回、そしてドリル状に形を変え再びドラゴンに突進していった。
エネルギー体はドラゴンの胸に衝突、そのまま体を突き抜けた。
激しい雄叫びと共にドラゴンは頭から地上に落下し消滅した。召還が解けたのだ。
エネルギー体となったヒロは空中を旋回し、ゆっくりと会場に降り立った。
ケイトは競技場の端で息絶えだえになっていた。
それでもヒロをするどい視線で見ていて、まだ試合を諦めていない。
「ケイト、もう十分だ。君は十分戦った」
ヒロ自身も先程の戦いで血まみれだ。
「まだだ、ヒロ。まだ終わっていない」
ケイトは刀を投げ捨て、再び印を結んだ。
「創世の時より大地に宿りし精霊に命ずる。巌の巨人を復活させ我が敵を滅ぼさん!」
「・・・召還忍術、巌呼」
「な、なに? ゴーレムを召還するだと?」
ヒロは驚いた。あのケイトの体ではとても召還忍術には耐えられない。
しかもゴーレムの召還は、数ある召還忍術の中でも最高レベルだ。
「やめろ! ケイト、やめるんだ。 本当に死んでしまうぞ」
ヒロはケイトに向かって叫んだ。しかし、ケイトは召還をやめない。
みるみる空がどす黒い雲に覆われて、激しい雨が降り出した。
雷鳴がとどろき嵐が吹き荒れる。
競技場の空に煙の固まりが集まり中で影がうごめく。
そして煙の中から、巨大な人の形をした重量物が競技場に落下した。
「ズンッ!」
その物体は、頭も体も腕も足も全てが岩だった。目らしき部分だけが怪しく光っている。
「ゴ、ゴーレム・・。本当に召還したのか?」
ヒロは怯んだ。今の満身創痍の体ではゴーレムには勝てない。
しかし、勝負は次の瞬間に終わった。
召還されたゴーレムは粉々にくだけて塵になった。
競技場の端にいたケイトがガクリと膝をつき、その場に倒れ込んだ。
「ケイト!」
ヒロは急いでケイトに駆け寄った。
しかしケイトは顔面蒼白で、微かな息はあるが意識はない状態だ。
ハットリ老が試合終了を宣言し医療班を呼んだ。
ヒロは担架に乗せられたケイトと一緒に競技場を後にした。
観客が騒然とする中、試合の結果がアナウンスされる。
審判団の協議によりケイトは試合続行が不可能と判断、ヒロの勝利となった。