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再会


「惑星グリーゼが消滅?」

 マリーは砂の惑星サンダリで、空港のパーキングにあるスクリーン・テレビを眺めている。

 テレビは繰り返しグリーゼの消滅を伝えているが、詳細は不明のままだった。

 マリーは、急いで自分のスペースシップがとめてある倉庫に入り、薄汚れたシップの近くでバイクを止めた。


 マリーは通信機でパートナーロボットを呼び出した。

「FR550、FR550応答せよ。こちらマリー。 プー」

「ハイ、マリーさん。コチラFR550です。 プー」

「今、スコルピオのすぐ後ろにいる。ハッチを開けてくれ。 プー」

「ラジャ。 プー」

 すぐに、スペースシップの後部ハッチが開いた。

 マリーはエア・バイクにまたがり、後部ハッチからシップに入っていった。デッキにバイクを止め金具で固定したあと、マリーは運転デッキに上がった。

 デッキには1台のロボットが立っていた。

 人形ロボットではあるが、金属むき出しのその体つきは、あまりヒューマノイドという感じではない。所々でケーブルが飛び出ていて、ボディの汚れも目立つ。まるで高級感は感じられず、パッとしないロボットだった。


「よし、FR550、出発の準備はどう?」

「ハイ、マリーさん、準備万端です。燃料、食料、武器、全て補給完了です」

 ロボットはマリーの方を向き、機械的に答えた。頭のLEDが言葉を発するたびに、ピカピカ光っていた。

「あと、惑星グリーゼ消滅のニュースが知りたい。何か情報を持っているか?」

「ハイ。今、組織からの速報ベースのニュースが入っています」

「ニュースソースの伝えるところによれば、消滅の直接原因は、惑星中心部へのポジトロンウェーブ照射によるコア膨張が有力です」

「不確定情報ながら、惑星の消滅にはサー・アトロスが関与している模様です」

「消滅時、近くの空域にアトロス軍のバトル・ベッセルの痕跡が確認されています」

「マタ、惑星グリーゼに常駐していた、コミュッティのメンバーは連絡がつかない状態が続いています」

 FR550と呼ばれたロボットは淡々と答える。言葉を発するたびに相変わらず頭のLEDがピカピカ光っている。

 被害は甚大のようだ。マリーは直接、惑星タウの本部に連絡をとることにした。

「コミッティのハットリ老につないで。暗号コード、シグマ955で」

 FR550はイガ・コミュッティ本部を呼び出した。

 スコルピオのブリッジの正面のスクリーンに、皺だらけの老人の顔が映った。


「老師、ご無沙汰しております」

 マリーは深々と頭を下げた。

「おお、マリーか」

 ハンズオー・ハットリ。その昔、銀河随一のニンジャ・マイスターと言われた人物だ。

 仙人を思わせる老人は、皺だらけの顔をゆるませ、にこやかにマリーに話しかける。

「はい。老師もお変わりなく」

「ところで、老師、先ほどニュースで惑星グリーゼ消滅の話をききました」

「その消滅により、常駐していた組織のメンバーも消息を断っているとか」

「また、この事件はアトロスが関係しているとのこと。お里は何かご承知でしょうか?」

 マリーは一気にしゃべった。


「うむ」

「300名近くの仲間の消息が知れん。あそこには、まずまずの拠点があったからの」

「残念じゃ」

「消滅直前に、大地震やら火山の噴火など惑星規模の天変地異があったと報告を受けておるが、その原因については、現在調査中じゃ」

「何隻かのアトロス軍艦が空域にいたという情報があるが、何分、組織の拠点がなくなってしもうたからの・・」

「それ以上の情報は、今のところ確認できておらん。こんな非道な真似、アトロス以外考えられんがの」


「あとな、マリー・・」

「ヒロが目覚めたぞ」


「え? ヒロがですか?」

 マリーは耳を疑った。


「惑星グリーゼの消滅が引き金となった」

「今朝、膨大な魂を吸い込み、強力な能力者となって覚醒した」

「ワシのごとき人間でも、その能力のすごさを感じた・・」

「老師、ご謙遜を」

 マリーはハットリ老の言葉に耳を傾ける。

「マリー、組織の諜報機関の報告では、ヒロはFEのマチュアンカにいるようじゃ」

「ビューティというロボットも一緒じゃ」

「里の調べでは、どうもリチャード卿が動いているらしい。ビューティはリチャード卿の身辺をガードする特別なロボットということじゃ」

「しかし、現在そのロボットはリチャード卿を離れ、ヒロと共に行動している」

 ハットリ老は真っ白な長いあご髭を、いじり、いじりしながら話をしている。

「リチャード卿ですか?」

 マリーもリチャード卿の名前は知っている。リチャード卿はRコンツェルト・グループの会長だ。

 有数の大富豪で、その名前は全世界に知れ渡っている。しかし、そのお付きのロボットが、なぜヒロと一緒にいるのか?

「ロボットはどうやら敵ではないらしい。ヒロは、そのロボットに命を救われている・・」


「ヒロは能力は本物じゃ。ある意味我らの作戦は成功したといえよう。しかし組織に連絡が無い所を見ると、ヒロの身になにか起こっているかもしれん」

「マリー、FEのマチュアンカに行って、ヒロを探すのじゃ」

「そして、ビューティとやらに会い、リチャード卿の真意も探ってほしい」

「了解しました」

 マリーは静かに答える。そして通信は終わった。


「ヒロが目覚めた。強力な能力者となって・・」


「FR550、発進する。目的地はFEのマチュアンカ」

「了解、マリーさん」

 FR550は、ガタガタと自分の席につき、ガチャガチャとシートベルトを装着した。

 そして古びたキーを回し、船のエンジンを始動した。

 スコルピオは静かに浮上、そして急上昇していき、空の彼方に消えた。

 ここから、ヒロのいる太陽系まで急いで10時間か・・・。

「FR550、到着まで頼む」

 マリーはマチュアンカに着くまでの間、しばらくカプセルに入り休むことにした。

 マリーは操縦席から睡眠カプセルのある部屋に移動し、そこで着ている鎖帷子を脱いだ。

 部屋にはシャワー室があり、マリーはすらりとした体を湛然に洗った。

 シャワーのあと服を着替えてカプセルに戻る。着替えは寝間着ではなく薄手の戦闘服だ。

 愛刀、アマリリス正宗も常に傍らにおいている。賞金首達に常に狙われているマリーは、いつ何が起こるかわからないからだ。

 マリーは、正宗をカプセルの中におき自分も横になった。そしてヒロや他の仲間と厳しい修行をした日々を思い出していた。

 セピア色の記憶がマリーの脳裏に蘇る。


「ヒロ・・・」



 マリーはカプセルの中で、ウトウトしながら、ヒロとの組み手試合を思い出していた。

 幼い二人が競技場で向かい合っている。ヒロは青の忍者スーツをまとい、マリーは赤の忍者スーツをきている。

 試合開始直後から二人は見つめあったまま、まったく動かない。そのまま数分がすぎた。


 一筋の風が吹き木の葉が舞う。一瞬ヒロの視界が木の葉で隠れた。

 その瞬間を見計らいマリーが攻撃をしかける。

 ヒロは体をスウェーし、寸での所で刀をかわした。

 間髪入れず、ヒロは懐に忍ばせていた手裏剣をマリーに向けて投げる。

 マリーは刀で手裏剣を弾き飛ばす。


 キンッ、キンッ、キンッ。

 弾き飛ばされた手裏剣のうしろからヒロが斬り掛かる。それをマリーが剣で受ける。

 競技場では目にとまらぬ早さで、ヒロとマリーの一進一退の攻防が繰りひろげられた。

 しばらくたって二人は間合いをとり、再び向かい合った。


「・・・忍法、雷撃」

 マリーが手を添えて刀を構え、術文を唱えた。

 刀が白く光りセンスが充填される。光が大きくなりマリーは刀を振り下ろした。

 刀に溜まっていたエネルギーが、すごい勢いでヒロに飛んでいく。

 マリーは何度も刀を振り下ろす。動かす度にエネルギー弾がヒロを襲った。

 ヒロは寸での所でそれらの弾をかわす。エネルギー弾は地面につきささり、別の弾は壁にめり込んだ。

 マリーの連続攻撃に圧倒されるヒロ。

 ヒロは何とかエネルギー弾をかわした後、動きを止め持っていた刀を捨てた。

 そしてヒロが勝負を諦めたかと、誰もが思ったその時、


「・・・忍法、朧げ」

 ヒロが両手で印を結び唱えた。

 ヒロはその場からフッと消えた。そして一瞬後にマリーのすぐ後ろにフッと現れた。

 マリーはすぐ後ろにヒロの気配を感じ、その場を離れようとしたが、一瞬ヒロの手刀が早かった。ヒロの手刀は、トンッとマリーのうなじを叩いていた。


「勝負あり!」

 立ち会っていたハットリ老が立ち上がり、ヒロに対して腕を上げた。

 くやしそうな表情でひざまずくマリー。



 マリーはカプセルの中で目を覚ました。いつの間にか寝てしまったらしい。


 リスト・ウォッチが振動し、エリーゼのために、を優しく奏でている。

 そろそろマチュアンカに着く時間だ。マリーは身支度を整えデッキに上がった。

「マリーさん、おはようございます、ピー」

 FR550がキーの高い声で言った。

「おはよう。現在位置は?」

 マリーが、スクリーンを確認しながらきいた。

「太陽系に入りました。目的地のマチュアンカ到着はもうすぐです」

「よし、何か更新情報はあるか?」

 FR550は、即座にスクリーンを表示して答える。

「ハイ、マチュアンカに駐在のコミッティのメンバーから報告です」

「マチュアンカ、スペース・ポート付近のホテルにて、武装エアカーを使ったテロ攻撃がありました」

「そこでヒロの父を演じていたジェームス・ミツオカの死亡が確認されました」


「えっ! ジェームスが死んだ?」

 マリーは驚いて、気が遠くなった。

 ジェームスはマリーの恩師で、里での修業時代は父親のような存在だったからだ。

「それは確定情報か?」いつもは冷静なマリーが声を荒げる。

「ハイ」

「コミッティのメンバーが遺体を確認しました。DNA照合も完了してイマス」

 FR550は高いキーで答える。マリーはFR550の喋り方がいちいち気に障った。FR550は更に話を続ける。

「目撃情報では、その場にヒロとビューティと思われるヒューマノイドがいた模様です」

「二人はそのままエアカーで飛び去りました」

 FR550の報告を聴き、マリーは天を見上げどこに行ったのか考えた。


 老師は、ヒロが覚醒したことは間違いないと言っていた・・。ならば近距離なら、自分のリンクにも答えられるのではないか?

 早速マリーはヒロに呼びかけた。


「ヒロ・・・」

「返事をしてヒロ」

 マリーはヒロを思い強く念じる。

「ヒロ、今どこにいるの? 聞こえるなら返事をして・・」

「私はマリー」

 マリーは何度か繰り返したが、ヒロからの返事はない。

「だめか」

 ヒロからの返事はなかったが、マリーは繰り返し呼びかけを続けた。


 マリー達の乗るスペースシップは、大気圏からマチュアンカ上空に降下した。

 宇宙最大の機械都市、マチュアンカ。

 その街の中心では、巨大な空中都市が光り輝き幻想的な夜景をマリーに見せていた。



 そのころヒロは、ビューティと共にエアカーに乗り、スペースポートからミス・アリスの研究所に戻っていた。

 ヒロは、ジェームスが最後に言った言葉を思い返していた。

「ダドは僕の本当の父親ではないと言っていた・・」

「僕自身がジェームスに父親役をするようお願いした?」

「もちろんそんな記憶はない。しかし記憶自体も操作していると言った・・」

 これらの事実のひとつひとつが、ヒロは受け入れられないでいた。


「一体、ダドは何を言おうとしていたのだ? イガ・コミッティ・・?」

「ビューティ、イガ・コミッティについて何かわかった?」

「私がアクセスできるDBには限定的な情報しかないわ」

 エアカーを運転しながらビューティが答える。


「イガ・コミッティ、ME発祥の秘密忍者結社よ」

「起源はA.D.1400年頃のジャパン。今から1000年くらい昔になるわ」

「忍者というのは、当時、隠密行動で領主の政治活動を助けた集団よ。現代で言うと特殊部隊っていう感じかしら」

「当時は伊賀、甲賀、戸隠といった地域が忍者の里として知られていた」

「イガ・コミッティという名もこのあたりから付いたと思われるわ」

「その後、組織は宇宙開発が進むにつれ、ユニバース全域に活動拠点を広げている・・」

「でもその実態は不明。 どの惑星のどこに拠点があるかとか、組織はどのようになっているかなど、一切の情報がないわ」

「ただ、今も世界の有力者に雇われ隠密行動をしているようよ。歴史が変革する時、いつの時代もイガ・コミッティの影があるわ」

「MEが発祥の秘密忍者結社?」

 ヒロには、いまいちピンと来ない。



 そんな時、どこからか声が聞こえてきた。


「・・・ヒロ」


「ヒロ、マリーがお前を捜しているよ・・」

 なんと、それは死んだはずのダド、ジェームスの声だった。

「ダッド!?」

 ジェームスの声はもう聞こえなかった。

「ダッド! 行かないで!」

 そして、別の声がヒロに聞こえてきた。若い女性の声。


「ヒロ・・、私はマリー」

「あなたの永遠のライバル。そして愛する妹」

「マリー?」

 マリーの声を聞いた瞬間、ヒロの記憶がフラッシュバックした。


「そうだ・・・」


「僕の本当の名前は、ヒロ・オライオン」

「サー・アトロスを倒すため自分の記憶を封印した」

 ヒロの頭に過去の記憶が蘇る。

 幼い頃から続いた里での修行。マリーや他の弟子達と戯れながら研鑽した技。

 厳しくも暖かい兄弟子や師範のもと、何度も倒れては立ち上がり日々修行に明け暮れた。


 そして、最悪の敵アトロスとの戦い。倒れゆく里の戦士達。

 愛する父の死。そう、ヒロの父親はヒロが小さい時に亡くなっていた。

 アトロス軍との戦いの中で壮絶な最後をとげたのだ。

 当時のイガ・コミッティ本部は、徹底的にアトロス軍に攻撃されて壊滅してしまった。

 ヒロは、凄惨な戦いの全てを思い出した。アトロスへの憎しみがふつふつと蘇る。


「マリー、マリーかい?」

 マリーの声にヒロが答えた。

「ヒロ? ヒロなの? マリーよ。わかる?」

 マリーもヒロの声に答える。


「マリー、僕は全てを思い出したよ」

「里のこと、父のこと、アトロスとの戦いのこと。もちろん君のことも」


「マリー、僕は今マチュアンカにいる。また一緒に戦ってくれ」

「もちろんよ。ヒロ」

 ヒロはマリーとミス・アリスの研究所で落ち合うことにした。


 ヒロがマリーと出会ったのはヒロがまだ幼いときだ。マリーはまだ4つだったと思う。

 幼いながらかわいい子だなと思っていた。その日から二人は兄妹のように育てられた。


「マリー、生きていたのか・・」

 ヒロは心底喜んだ。苦楽を共にした妹のような存在と再び巡り会うことができる。 

 ヒロは自分の記憶が戻ったことや、マリーと会うことをビューティに伝えた。

 ヒロのエアカーは、マリーより先に、ミス・アリスの研究所のある建物についた。

 建物の屋上に、ヒロ達の乗ってきたスペースシップはなく、補給と修理のため地下の格納庫に移動していた。

 しばらくして、古いスペースシップが朝焼けの空から、こちらに向かってくるのが見えた。

「来たようね」

 ビューティが言う。

 マリーの乗るスペースシップ、スコルピオがビルに近づき着陸する。

 機体後部のハッチが音を立てて開き、中から人影が現れた。


「マリー!」

 ヒロは喜びの声を上げハッチに近づく。マリーもハッチから飛び出した。

 ヒロとマリーは共に抱きしめあい再会を喜んだ。

「マリー、よく生きていた」

 ヒロはマリーの頭をなでながら言った。

「ヒロ・・」

 お互い話したいことは山ほどあるが、二人ともなかなか言葉が出てこない。


「マリー、僕は里に戻りたいと思う。アトロスと戦う準備がしたい」

 ヒロはマリーの肩をつかみ、真剣なまなざしで伝える。

「賛成よ」

「ヒロは覚醒したばかりでその能力のコントロールができていない。忍びの技にしても、鈍った体にいちから叩き込む必要があるわ」

 マリーも里に戻るというヒロの意見に賛成した。

 そしてマリーはヒロから離れ、ビューティをじっと見つめる。


「あなたがビューティね。リチャード卿付きのヒューマノイドということだけど」

「あなたの目的は何? なぜヒロに付きまとうの?」

 マリーは背中の刀に手をかけ、するどい眼差しでビューティに尋ねた。


「なるほど、あなたがマリーね」

「去年、彗星のように現れためっぽう強いWANTEDハンター。妖刀アマリリス正宗をもつ女忍者。別名ブラッディ・マリーか・・」

「私、切られちゃいそうね」

 ビューティは、少しふざけた面持ちでたった今調べた情報を答えた。マリーはキッと睨みつけている。


「でも私はあなたの敵じゃない」

「私はヒロのガーディアン」

「そう、あなたの言う通り、リチャード卿から命令を受けヒロを守っているわ」

「それは、ヒロが選ばれた人だから。強力なユニバース・センスを持ち、唯一、サー・アトロスに対抗できる力を持つ人間だからよ」

「今朝の惑星グリーゼの消滅によりヒロは覚醒した。そのときリチャード卿は、ヒロの存在をキャッチしたの。ヒロの強力なユニバース・センスをね」

「そして私は、リチャード卿からヒロを守るように指示され、彼が住む街に飛んだ・・」

「ヒロとブラッディ・マリーが知り合いとは・・。しかもイガ・コミッティの人間だとは知らなかったわ」

「リチャード卿は、アトロスを心底憎んでいる」

「彼らの行為は、この銀河の秩序を乱している。しかし、そのユニバース・センスは強力で誰も歯が立たない」


「ご存知のように、アトロスは強力な軍隊を持ち全銀河を支配しているわ」

「マリー、あなたもWANTEDハンターでアトロス軍に牙を剥く人間の一人、でもその強大な力に、手も足も出ないのが本音ではなくて?」

 ビューティの言うことは的を得ていた。

 マリーは確かに強い。強いがあくまで銀河警察が賞金首とした海賊達を追っている。

 その中でも、アトロス軍と関係が深いと思われる悪党をターゲットにしてきたが、アトロス軍に対し直接手を出したことはない。

 なぜなら単身では勝てないと分かっているからだ。

 それは、アトロス軍の組織力もそうだし、サー・アトロスの強力なユニバース・センスについてもそうだった。


「だとしたら、目的は同じ。サー・アトロスを倒すことよ。そして銀河に新たな秩序をもたらすこと。これがリチャード卿の悲願」

 ビューティはマリーに向かって言った。

 ヒロもビューティの話をきき、マリーに顔を向けなおして頷く。

 ヒロが頷いたのを見て、マリーは刀にかけた手を下ろした。


 ヒロ達はエレベータに乗り地下にある研究所に向かった。ミス・アリスが彼らを出迎える。

 ミス・アリスはスティングレイの整備、補給が完了していることを伝えた。

 ミス・アリスの助手というゴンザが船内で最後の作業をしていた。

 FR550はマリーの指示で、乗ってきた船スコルピオから必要な機材をスティングレイに移した。そしてヒロ達は船に乗り込んだ。


「よし、出発しよう。里へ」

 ヒロ、マリー、ビューティ、FR550、ゴンザの五人は、ブリッジのそれぞれ席につき、船は発進シーケンスに入る。

 もちろん、最前列にはビューティが座っている。FR550が、里の所在地を機密事項としてビューティに伝えた。

 地下の格納庫にあったスティングレイを注排水ハッチに移動し、ヒロ達は研究所のドックを出発した。

 しばらく海中を航行した後、スティングレイは海上に浮上しそのまま宇宙に飛び立った。


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