第二話 FBI
しばらく更新出来ずにごめんなさい! 5回に渡って構成のやり直しをしていた為だいぶ遅れてしまいました!次は頑張ります!
エインは見知らぬ場所を彷徨っていた。水もなく、食料もなく、とこまでも続いて行く砂の道を歩き続ける。
喉は完璧に乾き切り、空腹で腹が軋むように痛んだ。
意識が朦朧とする中、目の前に白いローブを着た女の人が立っていた。
女は林檎を差し出し、無言で微笑む。
エインはその林檎を女の手から奪い取り、喰らい付いた。
その時だった。
急に足に力が入らなり、そのその場で地面に倒れ込んでしまった。
女はそんなエインを見下ろし歩み寄って何かを言ったようだが、エインはそれを聞き取る前に気を失ってしまった。
◆◆
エインは物音と、何かが動く気配で目覚めた。
目の前が霞むが、周りはどこかの宿のようだ。
「あ、目覚めましたか?」
声の方を見ると、何処かで見たことのあるような男がこちらを見ていた。
「えっと……。誰だっけ……?」
少し頭が痛く、記憶があやふやな状態だった。何故か夢の林檎の残像がぼんやりと頭の中で漂っている。
「まったく、依頼人の顔を忘れないで下さいよ。フレデリックです。まぁ、しばらくの間寝込んでたら仕方ないと思いますけど……。あ、依頼の方はこちらの警備会社で処理してありますので大丈夫です。まぁ、ほとんど片付けてくれたらしいので良かったですけど……」
そんなことを長々と語りながらフレデリックは水のような物をグラスにいれて持ってくる。
「気付け薬です。少しスッキリすると思いますよ……。」
エインはそれを受け取り飲んだ。少し、喉の奥に苦味を感じたが、少しスッキリしたようだった。
「んで、俺は何日寝てた?」
エインは頭を掻きながら言った。
「3日です。まったく、いい歳して3日も寝込むなんてみっともないですよ!」
3日……。その言葉を聞いてはたと気がついた。気絶する前に居たあの|化け物(少年)が3日間野放しにされていた事になる……。
「今の被害状況は?」
エインは体を起こして聞いた。
「被害?それはどういうこと?」
「俺が気絶する前は、ちょっとした化け物がうろついていた筈だが……」
そう言ったものの、フレデリックな何のことか分からないようだった。
「……何があったんですか?」
フレデリックは少し心配そうに聞いた。
その後エインは水を貰ってからあの時の出来事を一通り話した。
最初のうちは、まだ喉の痛みもあったので話はなかなか進まなかったが、少し薬が効いてきたせいか説明が終わる頃にはハッキリと言葉を発せられるようになっていた。
カーテンの隙間からは太陽の光がさしこむ。
「なるほど……。その少年はいささか気になりますねぇ……」
少し目を細めながらフレデリックは考えている。
「あ!信じてないだろ?」
「そんなことありませんよ。今の世の中で魔術は使えなくても、生まれながら持つ能力だけで相当な力を持つ……なんて人もいますし……。幼少期に能力の覚醒が起こって発動するケースもあるらしいですよ。たしか……最新のギネスブックでは3歳7ヶ月だったと思います……」
「でも、そいつは次の年にその能力が原因で死んじまったんだろ?俺が見たのは、大体小学生ぐらいだったが安全圏は20過ぎだ……。それに、俺が反射的に展開したシールドを突き破る程の威力だった……。生きてられるとは思えない……」
「まぁ、科学でも解明できないほどですし……。何か例外的な物もあるのでは……」
ここで、論争に邪魔が入った。ドアからノックが聞こえたのだ。
そのノックに気がついてフレデリックは立ち上がり、ドアを開けた。
すると、そこにはスーツを着た男が立っていた。
「ここに、怪我人がいると聞いて来たのだが……」
そういいながらその男はフレデリックを押し退けて部屋に入ってきた。
「ちょ、ちょっと!何なんですかイキナリ!」
フレデリックが隣で騒ぐが、その男は聞きもしていなかった。
「……誰だよ……。」
「突然すまない。私はキメロ第4区画FBIのライアン・ホレストだ」
ライアンは胸ポケットから警察手帳を出して見せた。
「警官が俺に何の用だ?」
エインは頭を掻きながら、面倒臭そうに言った。
「少し聞きたいことがある。一旦、署まで来てもらえないか?」
「俺には呼ばれる様な事をした覚えはないが?」
「あぁ、言葉が悪かったな……。少し捜査に協力してもらいたい」
「捜査と言うと、エリア9の爆発テロの件ですか?」
フレデリックはそう言ってライアンに麦茶の入ったコップを渡す。
ライアンは麦茶を受け取り、そうだと頷いて一気に飲み干す。
「フレデリック。俺のベルトはどこだ?」
「あぁ、それなら机の上に置いてあるよ」
そう言ってフレデリックはリビングルームのテーブルを指差す。
そこには茶色で幅が少し広めのツールベルトが置いてあった。
銃や、ガイドブックなどは入ったままだ。
「よし、それじゃあ、行くぞ」
そう言ってライアンは部屋を出て行く。その後にエインは続いた。
宿から出ると、迎えの車があった。エインは気が付かなかったが、上空ではそれを見張るように旋回する消音ヘリコプターが飛んでいた。
◆◆◆
5の数字が点滅して、エレベーターのドアが開いた。
出ると、外部の人間は珍しいのか仕事中の職員や警官からジロジロと見られている。
しばらく歩くとライアンはドアの前で足を止め、壁に付いているモニターの様なものに親指を押し付ける。
「警察署にも指紋認証システムが付いてるのか?」
エインは宿を出る時に管理室のドアにも同じような物がついている事を思い出した。
「あぁ、これは静脈認証。部外者の立ち入りを制限する為に一昨年に導入したんだ。捜査資料などの紛失があったからね」
ライアンが言い終わるとドアが音を立てて開いた。中は、予想通り刑事ドラマでよく見る取調室だ。
お互い、椅子に座ると早速ライアンは本題に入った。
「まず、これを見てもらいたい」
そう言って一枚の写真を取り出す。そこには、人の手の甲の写真でそこには黄色い魔法陣がポツリと浮かんでいた。
「錯乱の術式。術者が意識して発動できる遠隔操作型といったところだ。消滅させるのが難しいタイプだから、だいぶ厄介だ」
エインはそこから見て取れる事を全てライアンに言う。
「それが捕まえた者全員についてて、取り調べすらままならない状況だ。多分、口止めか何かだと思うのだが……テロごときにそんな事が必要なのか……?」
ライアンは机に肘をついて考えていた。
「まぁ、術を溶くにはそれなりの術者に頼まないと無理だぞ。でも、首謀者は捕まえたんだろ?」
エインは足を組んで言った。
「あぁ、だが少し妙なんだ……」
「なんだ?」
ライアンは一枚の男の写真を取り出して腕を組む。
「こいつを知ってるか?」
「いや、知らない」
エインはその男に見覚えが無かった。
「こいつが今回のテロの首謀者だが……。」
ライアンはそこで一息おき、エインを睨みつけて言った。
「前に雇われたと言ってる」
「……はぁ?」
エインはここから話の流れが掴めなくなっていた。
「脳波の検出をした所、グループのメンバーの他にお前の顔も出てきたぞ」
何かがおかしい……。そう考えている内にライアンは続ける。
「逃げようとしても無駄だぞ。銃はフロントに預けてあるし、魔術も媒体がなければ使えまい。」
ここでエインは口を開いた。
「科学側が魔力を無効果出来るとは思えないが?」
さらに、質問をしようとするがライアンがポケットから取り出した球体に目がいった。
「これはWSD|(波動抑制装置)、通称「ウィーズ」。 恐らく外部の人間が見たのはこれが初めてだ。NASAで極秘に開発された物だからな」
「それが何だ?」
エインが質問すると、待ってましたと言わんばかりに説明を始める。
「魔術は全ての物体が保有する"波動"を媒介して発動させることができ、攻撃魔術は波動の"広がる力"を抑制し、膨大なエネルギーを作り出してから一気に破裂させる。つまり、魔術は波動が無くては使用する事が出来ない。その点を利用して波動を無力化させ、術を使用出来なくさせる装置だ。何か質問は?」
エインはただ黙るしかなかった。
ライアンはつまらなさそうにその様子を見るとWSD(ウィーズ)をポケットに突っ込む。
「よろしい。では個人的な質問だが、お前はなんの術を使った?」
エインがなんの事だと質問する前にライアンが口を開く。
「術者が発する魔力は波動を媒介して発動する。ここまでは良い。使用された波動は役目を終えたあと、作用した物体に微量の振動を残す。これは消えることは無く、半減するだけだ。まぁ、銃で言う硝煙反応だがその振動が計測できない。これはどう言うことだ?」
「どういうことだと言われても俺は知らない! こっちも今の状況がよく分からないんだが……」
エインはライアンに言ったものの、無視する様にライアンは続けた。
「まぁいい。時間はじっくりくれてやる。あとは自分でどうすれば良いのか考えるんだな!」
そう言って部屋の隅に取り付けてある監視カメラを見て立ち上がり、エインのシャツの袖口を掴んで引っ張る。
「手錠は無しか?」
エインはライアンに聞いた。
「その質問はするな! とにかく来い!」
ライアンは怒鳴り、取り調べ室のドアを開ける。
そして、エインを連れ出した時にエインのポケットに手を突っ込み耳元で呟く
「後で読んどけ……」
そのままエインは監獄の中に入れられた。
設定を更新しました。魔術の概念について少しだけ詳しく書かれています。