骨抜き
「俺はやっぱり、ハインリヒ四世が好きだから、ハインリヒと名乗ることにするよ」
皇帝ハインリヒと名乗ったヘルマン。
権力を手にした彼は、コンラードのように壊れたりもせずに、よく治世した。
あいつは壊れすぎだったのよ・・・・・・。
ヘルマンはソラを正妻にして、幸せに暮らした・・・・・・。
はずであった。
「ちょっと、あなた! お湯くらい沸かしてっていつもいってるでしょ!」
ソラの最強の蹴りが、今日も飛ぶ。
いや、とんだらあきまへんがな・・・・・・。
相手は皇帝なんだから。
「でもゲオルギウスが・・・・・・」
(ゲオルギウスがやっちゃだめっていってたんだよぉ)
「人のせいにしないの! 皇帝になってからのあなたは、何もできないだめ人間じゃん!」
「皇帝の后になったあなたは、いつも怒ってばかりじゃん!」
毎日こんな言いあいばかり。
まあ、仲の言い証拠だな・・・・・・。
「どこがやねん!?」
コンラードはコンラードで、ロビンソン・クルーソー漂流記じゃないが、リリスとふたりで惨めに貧しく、いかだに乗って大海をさまよっておった。
「おれたち、幸せっていえるんだろうか・・・・・・!?」
あんた、どうせなら海賊に戻ればええねん・・・・・・。
そして、新たな敵、魔王出現!?
魔王って何だ、魔王って・・・・・・エス○ークか・・・・・・?
「うーん、台本としてはこれかな」
老人作家が、中世を舞台に描いた史実の大作、『ヘルマンとコンラード』の内容に、うなりながら見直す。
「先生、今回も大作ですね」
演出家が誉めそやした。
「うむ、だろうね。おっと、自分の作品にそれはいっちゃ、だめだったな」
わははは、と作家は笑い出した。
老人の背後に、ハイヒールの音がし、立ち止まったので振り返ると、妖艶な娘が立っていた。
「ねえ、契約しない? お・じ・さ・ま」
いつか、ヘルマンにしたようなウインクを投げかけ、相手の心を射止めようとするが、
「あ、いま、いそがしいんで」
むげに断られてしまった・・・・・・。
「なんなのよっ。ちょっとは動揺してよ!」
「あのね、きみ」
作家は呆れ顔で言った。
「ここがどこだかわかってる? 舞台だよ、ブロードウェーの」
「しってるわよっ」
「じゃあそういうことで」
彼女はリリスで、リリスは思った。
時代が違えば、悪魔を必要とするものがいないのだな、と。
「あのぉ」
証明係の青年が、リリスに赤い顔をして声をかけた。
「ぼ、ぼくならお茶くらい付き合ってもいいかなあと」
リリスはヘルマンに似た青年に、
「いいわよ」
と答え、奥に引っ込んでいった。
みんなも悪魔には気をつけましょう。
なぜなら、骨抜きにされて、皇帝の座や財産や地位を奪われてしまうかもしれないのだから・・・・・・。
こんな終わり方でいいのか・・・・・・。
ひねりがなかったかなー。
プロット決めないで書いたから、こうなっちゃった。
次回は魔王編って、やるのか、魔王編!?