救出
「ゲオルギウス。ゲオルギウスはいるか」
コンラードが朝の会議に宰相を呼びつけた。
しかし、どの部屋にも彼はいなかったので、コンは不審がっていた。
「はて・・・・・・。おかしなこともあるものだ」
コンは足元に銀色の美しい羽根ペンを見つけて拾った。
とたん、羽根ペンはきれいなおねえさんに変身!
コンは驚いて腰を抜かす。
「びっくりした〜。誰だお前」
「あたし、コンラード様のために尽くしたいんです」
コンラードは無類の女好きだったので、来るものは拒まず!
「了解! じゃあこんな時間だけど、ベッド行こうか」
リリスは転びそうになったが、そこはあえて耐える。
「お、おほほ、ご冗談がお好きですわ。今、朝じゃないですか。軍法会議も始まるんでしょ」
「おお、そうだった。ではせめて名前くらい教えてくれよ」
リリスはいやだったが、これも作戦のために我慢・・・・・・。
コンラードに抱きついて、キスをせがんだ。
「あたしはリリス。おぼえていてね、皇帝陛下・・・・・・」
「ああ、もちろんだとも。お前のような絶世の美女、忘れろっていっても忘れるもんか!」
その忘れるもんか! が、忘れたいに変わるのは、すぐあとなんですがね・・・・・・。
リリスがコンを引きとめている間、ヘルマンはゲオルギウスに導かれて地下牢へ。
「ここです」
ゲオルギウスは鍵を開いた。
じめじめした暗い部屋。
そのなかに、鎖で縛られた少女が、泣くこともせずにじっと座っており、ヘルマンは彼女がかわいそうと、胸を痛めた。
少女はヘルマンたちを見上げて、何かいいたそうにしていたが、声がかすれて何も聞こえない。
「水を」
ヘルマンがゲオルギウスに頼み、少女のそばにひざまずいた。
「擦り傷だらけだし、手が冷たいね」
言葉のわかることに驚いた少女、うれしさのためか、涙を流し始めた。
「わかるの? 私の言葉が」
「うん、ちょっとだけ。僕はヘルマン」
ヘルマンは彼女を背負って牢屋を出た。
「ゲオルギウスさん、水を飲ませてやって」
ゲオルギウスはコンに同じことを言われると腹が立つのに、なぜヘルマンだと穏やかでいられるか、不思議でならなかった。
「リリスが言うように、あなたこそ、帝位にふさわしいのかもしれません・・・・・・」
いや、なんかもう、とんとん拍子じゃないですか、これっ。