皇帝撃沈計画!
もうじき、十字軍が七回目の遠征を終えようという時代だった。
騎士の遠征はようやく、終結を迎えつつあったのだが、十字軍の粗雑な態度は、改まることがなかった。
この当時、騎士どもは神の名を語りはしたが、古代のゲルマン人のごとく、乱暴を働き、追いはぎはするわ、食料が足りないからといっては、玄宗皇帝時代の安録山率いる石臼部隊のごとく、人肉を食べたりしていた。
ヘルマンはそんな騎士にだけはなりたくなかった。
どうせなら、ハインリヒ四世のような、強い皇帝に近づきたいと。
「ヘルマンなら、きっとなれるわよ。できればそうね。あんたみたいな皇帝のいたほうが、いいかもしれないわ」
リリスが励ますつもりか、うわべだけか、そんなことをつぶやいた。
「あ、ありがとう・・・・・・」
ヘルマンは言われて、頬を赤らめた。
「・・・・・・なりたい?」
ヘルマンは、怪訝そうにリリスを見やった。
「皇帝の地位に、就きたいかって聞いたの」
ヘルマンはうなずいていた。それもごく自然に。
なぜかはわからないが、なんとなく皇帝になれるという核心があったのだ。
「いいわ」
リリスが微笑んだ。
「それにはまず、今の皇帝コンラードをなんとかしたいわね」
リリスはなぜか、コンラードの名前を出したとたん、うれしそうに邪悪そうに、ニヤニヤとしていた。
「ぶえっくしょい!」
コンラード皇帝はリリスによってくしゃみを立て続けにする。
「陛下、お風邪を召されたか。ささ、お休みくだされ」
「あー、ちくしょう。別にだるくは、ないんだが」
「いけません。さあ」
宰相に導かれ、コンラードはしぶしぶ寝室に入り、扉を閉めた。
「宰相ゲオルギウス。いるぅ?」
なまめかしい声に反応し、大きな鏡の前で宰相は土下座をした。
「へへえ、ここに。リリスさま」
鏡には姿がなく、声だけが聞こえてくる。
「ゲオちゃん、お願いがあるのぉ。聞いてくれる?」
「は、はあ、もちろんでございますですよ。かわいいリリスちゃんのためなら」
「ありがと。コンラードを追い詰める準備はできてるようね。・・・・・・用意はいい?」
「御意に」
なんか、いやな予感が・・・・・・。
コンちゃんが大変だ!
でもあいつ、自業自得キャラだもんなぁ。
リリスってば宰相をいいように利用!?
いいな、こいつ・・・・・・。