あたしはリリス
一口に契約、といっても・・・・・・。
ヘルマンの場合、まったく予想していなかった。
まさか悪魔が、美女だったなんて!
「何見てるの。早くお風呂入れてよ。もう、汗かいてべたべたするんだからぁ」
ヘルマンは、すべすべした彼女の太ももを見ないフリしつつ、それでもついつい・・・・・・を繰り返していた。
「あっはん。そう、そんな気になる? かわいがってあげようか、ぼーや」
ヘルマンは興奮して叫びそうになる、やった! これこそわが夢、わが青春! 俺の人生、こうでなくちゃあ!
「そんな。お、俺はただ」
「いいのよぉ、照れないで。ヘルマンさま、かわいいから特別に、見せちゃおうかなー、ふ・と・も・も」
彼女はスカートをまくって見せる。
だがすぐ元に戻す。
悪魔ちゃん、リリスは見抜いていた。
ヘルマンは否定したが、おさえ切れない欲情が体内で煮えたぎっていることを。
「ひい〜、蛇の生殺しって、きっとこういうことを言うんだろうなあ・・・・・・」
ヘルマンは立っているのがつらくなってしまい、その場にうずくまってしまった。
「なに落ち込んでるの。さっさとお風呂沸かしてよ」
・・・・・・どっちが主人か、わかりゃしなかった。
ヘルマンは騎兵隊長の子供で、隊長のひとり息子であった。
しかし隊長は何を思ったのか、ヘルマンをひとり引き離すと、ケルンの大学へ押しやり、自分はハプスブルクの神聖ローマに仕えてしまったのだった。
そのとき、ケルン大学でヘルマンが学んだことといえば、レメゲトンだの、ゲーティアだのといった古文書で、ほとんどがヘブライ語かラテン語で書かれたものだった。
しかし生真面目な傍らで、ヘルマンはどこかが抜けていたため、いつも賭けに負けて痛い目にあってしまっていた。
「どうした。賢者の石でも創ってみろ、ぐずでのろまな、ヘルマンくん」
父親が騎兵隊長であることは、かえってヘルマンの重荷でもあった。
だから連日のようにいじめられ、
「お前の親父は立派なのに」
と捨て台詞される。
この時代、学ぶのは男ばかりで、しかも貴族や富豪の商人の子が多く、彼らはここで何を学ぶかといえば、金を稼ぐすべ、生活をするすべ、貴族に媚を売るすべなどを学び、出世するための知恵を得た。
ヘルマンは数年したら、ラファエロ・サンツィオのような大画家のパトロンとなり、同級生に泡を吹かせることになるのだが、それはまた次に。
「そういえばボローニャ大学では、生徒がボイコットしたらしいよ」
そこまで大学生活は荒れていた。
しかし教師たちは生徒を失えば生活ができないため、あわてて呼び戻した。
こうしてますます、乱れていく学業世界。
ケルンも似たようなものだったが、ヘルマンには差障りなどなかった。
たったひとりになってもヘルマンには、大学を卒業する自信があったからだ。
いや、かえってひとりになるほうが助かる、とさえ思う。
ヘルマンはふさぎこんでばかりの青年だったから、友達はいなかった。
彼はとりわけ、クセノフォンを愛し、騎兵隊長の話を何度も読んで、遠い父を思うのであった。
「俺にはクセノフォンがあるからね。べつに寂しくなんてない」
というヘルマンに、あるとき、やってきてしまったのだ、そのときが!
悪魔召喚術!
ヘルマンは知識を蓄え、興味を持ち、実践がしたくて、うずうずしてしまった。
「召喚か。おもしろいね。ぜひ俺にやらせてくれよ」
クセノフォンが一番だったヘルマンは、ついに第一がゲーティアになってしまった日であった。
あらわれたのは、妖艶な美人。
「うおー、すげえ! 神様、ありがとう」
ヘルマンは彼女に対して第一印象から好意を抱き、胸をばくばくさせながら、名前は? 住所は? 電話番号は?(ぉぃ)とひっきりなしで尋ねた。
「あたし、リリスって言うの」
といって、ヘルマンにウインクする。
「リリスって、たしか、アダムの最初の妻だよね。エヴァ以前の」
「あら、よくできましたぁ。そうよそうよ。そのリリス。ヨロチクね、坊や」
「坊や!? 馬鹿にするなぁ! 俺は坊やって歳じゃないぞ! それに名前があるんだから、ヘルマンって呼べよ」
リリスはヘルマンの怒る理由がまったくわからず、
「あそ、じゃあ、ヘルマン様。よろしくね。契約の証は、あたしとのキスよ」
「ええっ」
ヘルマンは腰を抜かして床にへたり込んでしまう。
「そんな、俺、彼女いないし・・・・・・そんなことしたことないし」
リリスはおもしろそうに笑いながら、
「あはは、ヘルマン様、純情ねぇ。いまどき珍しいくらい。十字軍騎士なんか、女を犯して回ってるのに」
「えげつないこと、いうなぁ! 女の子でしょっ」
「あらー、関係ないわよ。どうして女とか気にするの。ねえ。それよりさ、契約して」
ヘルマンは、しょうがないなあ、と、慣れない手つきでリリスの唇に触れる。
しかし、ヘルマンは興奮し、血が頭に上ってしまい、鼻血を大量に出して気絶してしまった。
「あーらま。こんなんで主人として、使えるのかしらね?」
何なら契約を解除してもらおうかなんてことも、リリスは考えるが・・・・・・。
「でもヘルマンをからかうの面白そうね。もうちょっと一緒にいようっと」
・・・・・・おやおや。
ヘルマン、今回はどの程度壊れるんだろう!?
前回の終わり方じゃいやだから、革命起こされました、共和制に(汗。
ノリぜんぜん違うよね、前回と!
私の息子へルマン、いったいどうなることか。
というか、アダルトサイト読んでて思いついたネタだけに、ちょっとえろい(汗。
嫌いな人は申し訳ない・・・・・・。




