◆緑色のレーザー光線◇
震える手を抑えながら鍵をかけ、チェーンもかけた。不気味で身震いが止まらない。
ゆっくりとドアスコープを覗いた。
なぜか真っ黒で何も見えなかった。
(何かで向こうから塞いでるのか?)
身を引いて、天井を見上げて、馬鹿な推測をしてから、思わず『ふふ』と笑ってしまう。
(これって、向こうも覗いていて、目玉に驚くやつだろ?)
気を取り直してもう一度覗いた。
鍵が開く音がしてドアスコープが目から離れて扉が開いた。
「え、やっぱり鍵を拾ってる」
チェーンにかかって扉は数センチの隙間だけ開いて止まった。
谷道は慌ててドアノブを掴んで扉を閉めた。
急いで鍵をかけたが、女が鍵を持っている限り意味がないのが虚しかった。
しばしの静寂が流れた。
谷道はもう一度ドアスコープを覗いた。待ち受けていたようなタイミングで、緑色のレーザー光線がスコープを貫通して谷道の目を焼いた。
「うわっ」
一瞬で顔を動かして光線を避けたが、視界がぼんやりとして眩暈がする。
「俺が落としたレーザーペン?」
ふらつきながら、もう片方の目で、恐る恐る、一瞬だけスコープを覗くと、女の手にはガムテープでぐるぐる巻きにされた、銀色の細い棒があった。そこから緑色のレーザー光が出ている。
「ぐ……この威力……絶対、俺が買ったやつだろ」
ピンポーン、ガチャガチャ。
ドアを開けようと激しく動かしている音が聞こえる。
(え?まだくる?また入ろうとしてんの?)
コンコン。
ドアノブの辺りをノックしている。
(開けろって意味か?ふざけんな)
ガチャガチャ。
ノックの音とドアノブを回す音が一定の間隔で続いた。無音が沁みる時間だった。
(完全に頭おかしいだろ……)
長い静寂の時間が流れた。谷道の心臓はバクバクと跳ね上がり、血の気が引き、呼吸は乱れてしゃがみ込んでいた。
それでも恐怖心で扉から目が離せないでいた。
ドンドンドン!
ドアを強く連打し始めた。
(誰か近所の人、通報してくれ)
「開けないなら、勝手に入るよ?」
女の声がした。
(なに言ってんだコイツ?)
ドアスコープを覗くと、女が胸の前に鍵を持って立っていた。
(さっき落とした鍵をやっぱり拾ってんのかよ……俺、もてあそばれてるのか?)
鍵穴の周りを鍵で擦っている金属音が聞こえ、扉の前にベッドを立て掛けて簡易的なバリケードで女の侵入を防いだ。
布団を頭に被せ、床を見つめてただ震えた。
何度もドアベルを聞いていて、耳鳴りが止まない。
被っていた布団の中で通報しようとしてスマホを操作するが、上手くタップできないほどに手が震えている。
やがて、なんのきっかけもなしに、急にドアベルの音が止んだ。
背後から緑のレーザー光線が窓まで突き抜けているのが見えた。
(……え、合図?……なんの)
ガラッ。
音が止むと、続けざまに窓が開く音がして風が流れ込んだ。
谷道は手にしていたスマホを床に落とした。
ラストまであと一話です!
ここまで読んでいただきありがとうございます。
二話ずつの公開予約をしています。
これが最後の更新です。
(全8話、完結まで予約投稿済みでした)
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