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坂東の式鬼  作者: 天狗 神


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第十七話

「皆様方、ようやく見えてきましたぞー!」


 圧倒的な水量で滔々と流れる最上川を前に、守棟さんが興奮気味に目的地はもうすぐだと告げた。


 眼前に広がる小高く連なった丘陵が、後方に聳える月山と重なり荘厳な雰囲気を醸し出す。静かで力強い最上川の存在も相まって、その風景美に感嘆の溜息が漏れる。


「うっわー、ヤバくねー!? 流石の俺ちゃんでもこれは……」

「ああ、言葉にならないな」

「壮観っスね。現代でも見れたはずなんスけど、レベルが違うっスよ」

「確かに。この時代だからこそだろ。ほら、あそこに見えないか?」


 ひときわ見晴らしが良さそうな丘の上に、立派な物見櫓が二つ。それに塀らしきものも見える。オレはそこを指差した。きっと、現代にはもう無いだろう建造物が、背景の山々に映える。


「はっはーっ! いやはや流石流石」


 馬の引綱を片手に、もう片方の手を腰に据えた義さん。

 オレ達と同じ様に全景を眺めながら、オレの言葉に返事を返すように独り言を呟いた気がした。


「いやー感服です。坂東から来たというのに、まさか城の場所を知っておられるとは!」


 守棟さんは今のやり取りのどこに感服したんだ? 城の場所? いや、知らないが?


「本当にね。どうやって情報を知り得るのか、是非教えて欲しいくらいだよ」


 輝宗さんまで? オレはただ見た目の話をしただけなんだが。


「ああ、そうだな。俺達には分かるんだ」


「マジっすか! それってやっぱりアレっすか、神通力ってやつっすか!」


 ナツが、反射的にしただろういつもの返事に、真剣に驚く志村さん。


「そーそー! ジンツーリキよ、ジンツーリキー。でもねー実はコレ内緒なんだー」

「アキ。あんまり適当なこと言っちゃダメっスよー。忍術使ってくれとか言われたらどうするつもりっスかー? 志村さんも鵜呑みにしないようにっス!」


「えっ、満茂は神通力も忍術も見たいです! 嘘じゃないですよね!?」

「えー、ウソなんすかー!? アキさんヒドーっ! ガッカリですってー」


「志村ちゃんも満茂ちゃんもー。俺ちゃんさっき言ったじゃーん? 内緒って」


「はっ! 確かに! やっぱり使えるんすね神通力!」

「満茂! 感激! ウソじゃないんですよねハルさん!」


「えっ!? 僕っ!? あー、えーっと……使えるっス」


 ハルまでっ!? はしゃぎまくる二人にアキが人差し指を立て「内緒だよ」ってポーズをする。まるでワクワクが止まらなくて、じっとしていられない少年のような鎧姿の二人。


「オレは知らねーぞ、全く」


 アキとハルは何をどうやって穴埋めするつもりなのやら。


「つまり坂東の式鬼っていうのはさ、のぶおじさんが抱えている乱破(らっぱ)、もしくは饗談(きょうだん)ってことになるのか?」


 輝宗さんが分からない単語を出してきた。

 ラッパ? 教団? どう答えるのが正解だ?


「ああ、そうだな。だが俺達は『SHIKI』以外の何者でもない」


 輝宗さんは「確かに」とまさかの納得した様子。

 アキ、お前別の意味で凄いな。






 かなりの時間を掛け、渡し舟で全員川を渡り終えた。

 丘の上の城はもう目と鼻の先だ。


 だが、オレの脳内にある新庄。

 この時代だから新庄城、いや戸沢城だったか?

 それとは程遠い地形と景観。


 新庄まで行くという言葉に乗り、勢い任せについて来てしまったがここは何処だ? 月山と鳥海山は見える。それと最上川があるということは位置的に……。


「ユキ。多分ここって大蔵村にあった清水城っス。政宗くんの年齢的に考えると、僕らの知ってる最上公園にあったお城、戸沢城はまだ存在してないはずっス。確か戸沢城が出来たのが寛永二年、西暦一六二五年っスから。もしかしたら沼田城ならギリ存在してるかもって感じっスね」


「ハル、お前凄いな。歴史もだけど、なんでオレの心が読めた?」


 まさかマジもんの神通力。もしくはチート能力……なんてことはないか。


「何年一緒につるんでると思ってんスか。考えてることなんてバレバレっスよ。それに、知ってたのもたまたまっス。覚えてないっスか? 新庄開府四〇〇年とかってイベント。なんか大々的にやってたっスよね? それでそこら辺の歴史覚えたっていうか、ホント偶然なんス。自分でも驚いてるんスよ?」


 いや、本当に驚きだよ。本当に心強い。感謝すら覚える。


「ハル……。お前だけが頼りだ。ナツとアキはあんなんだから。何とかして元の時代に帰る為に協力してくれ」

「ハナからそのつもりっスよ。僕ら、やり残してる事まだまだあるっスもんね」


 二人で頷き、拳を打ち付け合い気合を入れ直す。

 よし。さあ、ここからだ!


 城に近づくにつれ、遠くから見えていた物見櫓は城を囲う塀の中に立てられているのが分かった。


 城と聞いて思い浮かぶのは、豪華な意匠の天守閣。多重構造のてっぺんで存在感を放つアレだ。だが近くまで来たのにそれが見えない。


「清水城は平屋か? 天守が見えないな」


 呟いたのが耳に入ったのか、守棟さんが教えてくれた。


「ユキ殿。この清水城は西側、庄内地方は大宝寺氏との攻防の要。よって高台に位置している為見晴らしこそ良いですが、流石に殿の居館よりも豪華ではありませんって」


「そうなのか? 信長の城には立派な天守があったはずだが」


「はっ? いやー、まさか信長様の安土城と比べられるとは。こりゃ敵いませんなー」


 そんな話を交わしながら更に近づくと、見事な外堀と長い塀に囲まれた広い土地であることが伺えた。


 現代感覚で言えばそれこそ大地主の豪邸。見事な建築美に感動を覚える。


 大手口まで辿り着くと、多くの人が出迎えに出ており、前に進み出てきた中肉中背の男性が頭を下げた。服装と対応から判断するにこの人が清水氏なのだろう。


「お久しぶりでございます大殿様。全くお変わりない様子で何よりです」


 守棟さんがどう対応するのか少し興味があり顔を向ける。だが、動く気配がない所か微動だにしていない。


 見た目白髪だらけだし、五十歳は超えているのだろうか。もしかしたら少し耳が遠いのかもしれない。


 ……ん? 大殿様ってなんだ?


「はっはーっ! 久しいな清水ー! お主も元気にやってたかー? いやー急に立ち寄る事になってスマンなー。詳しい話は後でゆっくりするとしてだ。まずは腹が減ったなー」


 ここまでずっと、何故か偉そうにしてたボロを纏った馬引き、義さんがそう言った。


 思考が固まり「……は?」と漏れたのはオレ達だけじゃないはずだ。






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