【Scene6-4】――王太子への“間接メッセージ”
午後の日差しが書斎の机を照らす。
クラリッサは椅子に腰掛け、紅茶を一口含みながら、書斎の重厚な雰囲気を楽しむ——と見せかけて、全身で計算を巡らせていた。
今日は、王太子エドワードへの“間接メッセージ”を届ける日。
直接会うわけではない。社交界の手順を通して、軽く、しかし確実に、彼に自分の計算高さを意識させる。
クラリッサは側近を控え室に呼び、微笑を浮かべながら囁く。
「昨夜のことは偶然に見えるかもしれませんが……私が気をつけているのは、すべて偶然のように見せることです」
側近は軽く頭を下げ、言われた通り王太子の耳元でそっと伝える。
王太子は眉をひそめ、ちらりとクラリッサを思い浮かべる。
> (……昨夜のことか……偶然に見える? いや、しかし……)
考えれば考えるほど、頭の中がぐるぐると迷路のようになり、混乱が増していく。
王太子は知らず知らずのうちに、クラリッサの掌握力を痛感させられることになった。
その様子を見ていたリリアは、そっと耳元で小声を落とす。
「殿下、逃げてください! お嬢様の計算の渦に巻き込まれます!」
クラリッサは紅茶の香りを楽しむ仕草で、微笑んだまま小さく頷く。
「いいのよ、リリア。あの方には、この微妙な混乱こそが、私の望む反応なのだから」
書斎の静寂に、微かな笑いが広がる。
それは音のない刃のように、王太子の心にそっと刺さった。
> “王太子、あなたは笑顔で私を見ているけれど、
私の掌握はもう始まっている。”
紅茶の湯気がゆらめくたび、クラリッサの微笑みは揺らがず、そして確実に、次の波紋を作り出していく。




