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Scene5:エピローグ ――灰のあとに微笑む薔薇 “灰の雨は止まり、紅薔薇は世界に根を下ろした。 死神のいない朝は、今も続いている。”
静かな朝。
薔薇の庵の庭には、柔らかな陽光が降り注いでいた。
紅茶の香りが湯気とともに広がり、窓辺のカップを包み込む。
クララの指先が、そっとそのカップを撫でる。
中には、一枚の紅薔薇の花弁。
それは朝の光を受けて、ゆっくりと――まるで息をするように、淡く溶けていく。
“そして――
紅茶の香りとともに、ひとひらの微笑みが語り継がれている。”
湯気が揺らめき、風が通り抜ける。
薔薇の花が小さく揺れ、その影が紅茶の表面に映る。
その微かな揺らぎの中に――かつて、世界の“死”を終わらせた女の微笑みが浮かんだ気がした。
クララは静かに目を閉じ、微笑む。
紅薔薇の香りは、まだ温かく、確かにここにある。
“――紅薔薇の死神はもういない。
けれど、彼女の微笑みは、永遠に生きている。”
そして、朝日が昇る。
灰の街を包む光は、どこまでも優しく――新しい世界の息吹を照らしていた。
“紅薔薇は、今も微笑んでいる。”




