Scene4:死神印、共鳴
――王都の中心、紅薔薇を模した巨大な魔法陣が輝いていた。
灰の雨は止み、夜空はひび割れ、
そこから流れ込む白い光が、まるで“死そのもの”を可視化したように大地を包み込む。
その光の中へ、クラリッサはゆっくりと歩みを進めた。
紅薔薇のドレスの裾が、灰の波に沈みながらも、
彼女の一歩ごとに花弁のような火が散っていく。
空を裂くように七つの影――七幹部の印が現れる。
暴食、色欲、憤怒、怠惰、嫉妬、強欲、傲慢。
それぞれの魔力が独立した意志を持つかのように渦を巻き、
クラリッサの周囲を取り囲む。
〈暴食〉:「クラリッサ、それ以上進むな! 契約が崩壊する!」
空気が震え、灰が重力を忘れたように浮かぶ。
それでも、クラリッサは一歩も止まらなかった。
クラリッサ:「いいえ。崩壊じゃないわ。……統合よ。」
紅薔薇の紋章が、胸元で眩く輝く。
同時に、七つの死神印が共鳴――
赤、青、金、黒、紫、銀、そして灰。
七色の死が螺旋を描き、彼女の身体へと流れ込んでいく。
空間が悲鳴を上げ、時間がねじれた。
遠くの鐘楼から、“終わりの鐘”が響く。
だがそれは一度ではなく、
――二度、三度、永遠に繰り返される“終わりの音”だった。
クラリッサの髪が灰の光を帯び、瞳が薔薇の紅に染まっていく。
肌の上を、七つの紋章が脈打つように浮かび、やがて一つに溶け合った。
「この身を、灰の中心に戻す。
――死神たちの夜は、私で閉じるわ。」
その声は、神の宣告のように静かで、美しかった。
リリアの悲鳴が、灰の風に掻き消される。
「お嬢様ぁぁぁぁ!? 戻ってきてくださいーっ!!」
ルシアンは崩壊する魔法陣の縁で、書きかけの観察記録を握り締める。
「そんな優雅な覚悟やめてください!? 死神的にオシャレすぎます!!」
クラリッサは、光の中心で一瞬だけ微笑んだ。
紅茶の香りが、灰と光の境界に漂う。
「心配しないで。――死んでからが、本番よ。」
轟音とともに世界が反転する。
灰の空が紅に染まり、王都の輪郭が崩壊していく中で、
ただ一輪、紅薔薇の花弁が舞い上がった。
“七つの印が一つに重なった瞬間、
死の法則は崩れ、世界は再び“生き返る”夢を見始めた。”




