Scene3:裏切りの輪舞(ロンド)
Scene3:裏切りの輪舞
王都の中心――灰の結界が脈打つたび、世界の輪郭が歪んでいった。
空はひび割れ、大地は灰の血管のように光を放ち、
人々の祈りの声さえ、灰の風に呑み込まれて消えていく。
それでも儀式は止まらない。
七つの死神印が王都を囲み、死の循環を無理やり一つに繋ぎ合わせていた。
だが、その循環に――狂いが生じる。
〈色欲〉が最初に叫んだ。
「……誰かが流れを操作している……!
私の線を横取りしてるわね!?」
〈嫉妬〉が鋭く睨む。
「〈暴食〉! お前だろう! また核を喰ったな!?」
〈暴食〉が鼻で笑う。
「知らんな。……だが〈憤怒〉、お前の魔力が濁っているぞ。」
〈憤怒〉:「貴様ァッ、誰にものを――!」
紅い雷が走る。
灰の空に火花が散り、儀式陣の紋様がひび割れる。
〈怠惰〉は宙に浮かびながら、半分寝た声で呟いた。
「……私のせいじゃない……たぶん……」
〈強欲〉:「寝言で免罪符をもらえると思うなッ!!」
怒号が飛び交い、七つの印の光が互いを食い合う。
協会の最高儀式《紅薔薇再誕》は、もはや制御不能だった。
灰の嵐の中心で――クラリッサは静かに立っていた。
紅茶のポットを片手に、灰を避けるように一歩進む。
周囲の魔力が暴走し、城の残骸が宙を舞っているにもかかわらず、
彼女の周囲だけがまるで静謐なサロンのように穏やかだった。
「晩餐会の飾りつけとしては上出来ね。
……少し騒がしいけれど。」
微笑みながら、彼女は灰の中にカップを浮かべてみせた。
「これが“騒がしい”で済むなら――」
ルシアンは叫びながら、崩れ落ちる塔を避ける。
「――世界の終わりもティータイムですね!?!?」
リリアは灰に覆われながら絶叫する。
「お嬢様ぁぁ! 笑ってる場合じゃ――紅茶こぼれましたぁぁ!」
クラリッサはその一滴さえ惜しむように、手をかざして灰を止めた。
「落ち着いて。ティータイムを荒らすのは、死神の礼儀に反するわ。」
七幹部たちの魔力が激突し、灰の渦が巨大な輪となって天空に浮かび上がる。
それはまるで――裏切りの輪舞。
秩序のために生まれた者たちが、互いを喰い合う舞踏。
その中心で、クラリッサの紅薔薇の紋章が光を放つ。
“混乱の中で、彼女だけが静かに微笑んでいた。
灰の夜は、死神たちの舞台として――ますます美しく燃え上がる。”




